王秋(おうしゅう)梨:来歴や特徴と産地や旬

王秋(おうしゅう) 梨

■王秋(おうしゅう)とは

 「王秋」は農研機構果樹研究所が「慈梨(ツーリー)」という中国梨と「二十世紀梨」との交配種「C2」に、「新雪」を交配させて得られた実生から選抜育成された、大果で果肉柔軟であり、肉質がち密で食味が良く、10月下旬~11月上旬に成熟する晩生の赤ナシ品種です。

◆王秋の来歴

 「王秋」は1983(昭和58)年に果樹研究所において、中国梨の「莱陽慈梨(ライヤン ツーリー)」に「二十世紀」を交配して育成された種間雑種である「C2」に、晩生で大果である「新雪」を交配し、得られた実生から選抜育成された赤梨品種です。育成の過程は下記の通り。

王秋(おうしゅう) 梨

1983(昭和58)年 「C2」に「新雪」の花粉を交配し、種子を得る。

1984(昭和59)年 播種して実生を養成。

1985(昭和60)年 個体番号「297-30」をつけ、選抜圃場に定植。

1989(昭和64)年 初結実。

1991(平成3)年 一次選抜。

1992(平成4)年 系統名を「ナシ筑波48号」としてナシ第6回系統適応性検定試験に供試。 およそ7年間にわたり全国の主要なナシ産地を構成する34都府県36カ所の関係試験研究機関の協力を得て特性を検討。

2000(平成12)年 1月、平成11年度落葉果樹系統適応性・特性検定試験成 績検討会において新品種候補への合意が得られ.2月、平成11年度果樹試験研究推進会議において新品種候補と決定。命名登録申請及び種苗法に基づく品種登録出願。

10月、農林水産省育成農作物新品種命名登録規程に基づいて「王秋(おうしゅう)」 と命名され、「なし農林22号」として登録。

2003(平成15)年 第11118号として品種登録完了。

 同時期に育成され品種登録された品種に「秋麗」(なし農林21号)、「あきあかり」(農林20号)があります。

●王秋の特徴

 「王秋」の果実は平均650gほどと「晩三吉」と同くらい大きな梨で、果形は倒三角形で、果皮色は黄褐色です。

 果肉は乳白色で肉質はち密で果汁が多く、果肉硬度は4.2lbs程度とやや柔らかく、果汁糖度は12%前後、pHは4.6前後で甘味と共に酸味もあります。果実の日持ち性は 25℃で28日以上となっています。

王秋(おうしゅう) 梨

 「王秋」は通常店頭に並べられるとき、ふっくらとした”ていあ部”(お尻)を上にして並べられることが多く、パック詰めされたものもそうなっていることが多いです。

 果梗を上にすると倒三角形の円錐形になる傾向があり、リンゴと逆の形になります。 王秋(おうしゅう) 梨

 農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『-----

 果実の大きさは極大、果皮色は黄褐、果点の大きさ及び密度は中、果面の粗滑は滑である。

 果梗の長さは長、太さは中、肉梗の有無は無である。果芯の形は円心臓、大きさは中、

 果肉の色は雪白、硬さは軟、粗密は密、切口の褐変は中、甘味は高、酸味は強、香気は中、果汁の多少は多、種子の形は卵、大きさは中である。

 開花期は中、成熟期は晩で育成地においては10月下旬~11月上旬、後期落果は多、裂果は無、果実の貯蔵性は長である。

 「新高」と比較して、花色が淡桃であること、やくの色が濃紅であること、花粉が有ること等で、「晩三吉」と比較して、新梢の色が濃茶褐であること、肉梗が無いこと、果肉が軟らかいこと、甘味が高いこと等で区別性が認められる。

-----』以上、抜粋。

●実際に食べた王秋の食味

 果形は楕円から倒卵形でやや縦長の形をしています。果肉は白く緻密でとてもみずみずしく、歯ざわりは柔らかいです。甘みにやさしい酸味が加わり、さっぱりとした上品な味が楽しめます。

王秋(おうしゅう) 梨 王秋(おうしゅう) 梨

 非常に貯蔵性が高く、暖房をいれていなければ室内でも1カ月以上もち、袋などに入れて冷蔵庫で保存すれば3ヶ月以上持つといわれています。

 撮影した「王秋」は滋賀県産で、果重600gほどでした。計った糖度は15.6度あり、とても甘くそれでいて酸味も感じられさっぱりとした甘さが楽しめました。

■王秋(おうしゅう)梨の主な産地と旬の時期

●主な産地と栽培面積

 「王秋」の主な産地は鳥取県と千葉県です。令和元年産特産果樹生産動態等調査によると、「王秋」の全国の栽培面積は48.8haとなっています。これは和梨全体で見ると0.6%にすぎません。

梨 王秋(おうしゅう)の主な産地と栽培面積

 最も広く栽培しているのは鳥取県で全国の約4割を占めています。次いで千葉県が32%となっており、その他は大分や福島県、佐賀県、京都府、山口県など各地で栽培されています。

 「王秋」梨は」落果しやすく栽培に手間がかかるため作り手が増えにくいのかもしれません。鳥取県の生産者からの情報によると、王秋梨には「果肉褐変」というコルク状の果肉障害が発生しやすいという大きな欠点があり、それが他の産地から敬遠されている理由ではないかとの事です。鳥取県ではかつてニ十世紀梨の「黒斑病」を克服し、世に送り出した経緯があり、この王秋梨の将来性を見込んで取り組まれてきたのではとの事です。

●王秋の旬の時期

 王秋梨は晩生種で、10月下旬頃から収穫が始まり11月中旬頃まで続きます。収穫した時点では酸味があり、通常数日間貯蔵し、酸味が抜けて甘みが出てから出荷されます。

旬のカレンダー 10月 11月 12月 1月
王秋                        
王秋梨(おうしゅうなし)

< 出 典 >

 ※ 「王秋(おうしゅう)」育成品種紹介 農研機構

 ※ 「ニホンナシ新品種‘王秋’」果樹研究所研究報告 農業技術研究機構果樹研究所 3号 p. 41-51 2004年3月

 ※ 「莱陽慈梨(ライヤン ツーリー)」農商務省園藝試驗塲 園藝試驗塲報告 5号 p. 1-22 1926年1月

 ※ 「登録番号11118 王秋」 農林水産省品種登録データベース

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