奥州ロマン:来歴や特徴と産地や旬
●奥州ロマンとは
◆奥州ロマンの来歴
「奥州ロマン」は岩手県奥州市の高野卓郎氏が「シナノゴールド」に「つがる」を交配し育成した果皮が赤く着色するりんご品種で、正式な品種名は育成者の名前から「高野 5号」とつけられ、2014年に登録出願、2016年に品種登録されています。
「奥州ロマン」という名称は登録商標で、このリンゴが登録されるよりも前の2008(平成20)年に高野氏によって登録されたもので、このリンゴの流通上の品種名となっています。
また、岩手県では2020年から、10月に収穫された「奥州ロマン」を貯蔵し、3月に期間限定出荷する「恋桜」というブランドができています。
◆奥州ロマンの特徴
「奥州ロマン」は果重350gほどで、果形は長楕円から長円錐で王冠はほぼありません。
果皮色は黄緑の地色に不明瞭な縞状に全体が鮮やかな赤い色に着色します。
果肉は硬く、酸味がとても少なく甘味が強いのが特徴となっています。
今回取り寄せた㈱ATfarm木村りんご園さんによると、『果肉は硬いというより張りのある硬さで、酸味はほぼ感じず、甘さのみ。蜜入りはしない。貯蔵性にとにかく優れており、普通貯蔵でも半年は硬さを維持している。もぎたてよりも貯蔵後の2月以降にとにかく甘さを強く感じるようになる。』とのことです。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の大きさは大、果実の形は長円錐形、果実の王冠の強弱は無又は弱、果実のがくの開閉は小、
果皮のろう質の多少は無又は少、果面の粗滑は滑、
果皮の地色は黄緑、果皮を被う色の面積は極大、果皮を被う色は赤、果皮を被う色の濃淡は中、果皮を被う色の型は不明瞭なしま模様を伴った全面着色、
梗あ周辺のさびの量は無又は小、果実側面のさびの量は無又は小、がくあ周辺のさびの量は無又は小、
果点の数は中、果点の大きさは小、スカーフスキンの多少は無、
果柄の長さは中、果柄の太さは中、梗あの深さは中、梗あの幅は広、がくあの深さはやや深、がくあの幅は狭、
果肉の硬さは中、果肉の色は黄白、果実の甘味は高、果実の酸味はかなり低、果実の蜜の多少は無又は極少、
果心の形は円錐形、開花始期は中、収穫期はやや晩である。
出願品種「高野 5号」は、対照品種「ジョナゴールド」と比較して、果皮を被う色の型が不明瞭なしま模様を伴った全面着色であること、果柄の長さが中であること、果実の甘味が高であること、果実の酸味がかなり低であること等で区別性が認められる。
対照品種「シナノスイート」と比較して、果皮を被う色の型が不明瞭なしま模様を伴った全面着色であること、果実の酸味がかなり低であること、果実の子室の型が閉又はわずかに開くであること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた奥州ロマンの食味
撮影試食した「奥州ロマン」は青森県の㈱ATfarm木村りんご園さんから3月6日に届いたもので、果重350g前後でした。この農園ではまだ試験栽培の段階だそうで、今回のりんごはがくあが深く広いものが多かったようです。
果皮表面にはワックスがしっかりと出ていて少しべたつくほどです。
食味はしっかりとした硬さがありながら歯切れは良く、確かに酸味がとても少なくとても甘いリンゴでした。でも、強い甘さを陰で引き立てる酸味はあり、甘いだけのリンゴにありがちなボケた感じではありません。
ちなみに、糖度を計ると15~17.6度もありました。
●奥州ロマンの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「奥州ロマン」の主な産地は岩手県だと思われます。農林水産省の特産果樹生産動態等調査には記載がなく各地の栽培状況は不明ですが、JA全農いわてのパンフレットには2020年の時点で栽培者25名栽培面積32.9a、3614本と紹介されています。
◆奥州ロマンの収穫時期と旬
「奥州ロマン」の収穫時期は10月中旬から下旬にかけて行われます。
このリンゴは果肉が硬く貯蔵性に優れているという点や、収穫してすぐよりも貯蔵してからの方が美味しくなるりんごとされ、食べ頃の時期は年明けの2~3月頃となっています。
岩手県から出荷されるブランド「恋桜」も3月の期間限定出荷となっています。
奥州ロマン | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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収穫 | ||||||||||||
食べ頃 |
< 出 典 >
※ 江刺りんご「恋桜」デビュー LA江刺広報誌「すてむ」No.456 2020年3月号 p4~6
※ 品種登録データベース 農林水産省ホームページ