旭(McIntosh red):来歴や特徴と産地や旬
●りんご 旭とは
「旭」は明治時代に欧米から導入された「McIntosh red」という品種で、現在国内では極わずかしか栽培されていない希少なリンゴとなっています。カナダから北米では現在も主要品種の一つで、アップルコンピューターの「マッキントッシュ(Macintosh)」の由来として有名です。
◆旭の来歴
日本のリンゴ栽培は1871(明治4)年に黒田清隆氏によってアメリカから75品種が導入されたのが始まりとされていますが、「旭(McIntosh red)」も「紅玉(Jonathan)」や「国光(Roll’s Janett)」などと共にその時に導入されています。
また、1890(明治23) 年にはカナダからギップ氏によって札幌農学校に寄贈され、そこからも栽培が広がったようです。
そして1892(明治25) 年、「McIntosh red」は国内向けの名称として「旭」と命名されました。
「旭」はかつて盛んに栽培されていましたが、栽培上の問題や貯蔵性が低いこと、時代の流れと共に食味の嗜好が変化してきたことなどから現在はほとんど見かけない品種となっています。
カナダをはじめ北米では今なお主要な品種として広く栽培され親しまれていますが、あちらでも嗜好の変化によって、果肉が硬めで甘く酸味が少ない新しい品種が増えてきているようです。
◆McIntosh redの来歴
「McIntosh red」は1811年にカナダ・オンタリオ州の農民ジョンマッキントッシュ(John McIntosh)氏によって発見された偶発実生とされ、その親となった品種などは未だ不明です。マッキントッシュ氏はその木を大切に育て、彼の息子アラン(Allan)によって販売が始められました。リンゴの名前は1870年にその発見者であり育成した彼の名前から付けられています。
1900年頃には北米で最も人気のあるリンゴとして広く栽培されるようになり、発見から既に200年以上も経つ現在もカナダでは主要な品種となっています。
◆Apple社のMacintosh(Mac)とMcIntosh red
スティーブ・ジョブズが創業したAppleが作っているパソコン”Mac”は正式には”Macintosh”といいますが、この名称はパソコン部門の立ち上げを担当したェフ・ラスキンが自身のお気に入りのリンゴにちなんでプロジェクト名を「McIntosh」と名付けました。ところが、その名称は既に他のメーカーに類似名があったため、Mの後ろに”a”を加えた「Macintosh」としたそうです。
そしてAppleのロゴマークになっているかじられたりんご、このリンゴも「McIntosh red」がもとになっているのだそうです。ちなみに、『かじる』=”bite(バイト)”と情報量を示す単位”byte(バイト)”をかけているという話もあります。
◆旭の特徴
「旭」の果実は、果重240~300g程で果形は円形です。果皮色は紅色で縞状に色づき、葉の影になっていた部分に黄緑色が残りやすいです。
果肉は黄白色で肉質はやや柔らかめで果汁が多く、甘味と共に酸味もあり香りが強いのが特徴です。
◆実際に食べてみた旭の食味
撮影試食した「旭」は10月15日に届いた北海道増毛町産です。5kg18玉入り税・送料込みで5,600円でした。
まず箱を開けると少しむせるほどのリンゴの香りが広がりました。
リンゴはどれも赤く色付き、果面に白い果粉が沢山ついて状態でした。
皮ごとかじってみると果肉は比較的柔らかく甘味酸味のバランスがちょうどいい感じです。香りが独特で、さわやかなリンゴの香り・・・というか、強いです。糖度を計ってみると13.9度ありました。
このリンゴは皮ごと丸かじりするのにちょうどいい硬さだと思います。
●旭の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「旭」は寒冷地に適した品種で非常に耐寒性があり、-34℃という厳しい寒さの中でも耐えることができ、逆に温暖なところではいい状態のリンゴにならないようで、国内では青森県より北海道で作られたものの方が美味しい物が多いと言われています。
平成30年産特産果樹生産動態等調査によると、全国での栽培面積は9.6haしかなく、北海道のみとなっています。おそらく青森県など他の産地でも個々の農園で少量栽培はされていると思われますが、いずれにしても一般の市場にはほとんど出回らない品種となっています。
◆旭の収穫時期と旬
「旭」の収穫時期は9月下旬頃から10月中旬にかけてで、貯蔵性が高くないため、収穫後は全てすぐに出荷されていると思います。
品種 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | ||||||||
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旭 |
< 出 典 >
※ 「McINTOSH, JOHN (b. 1777, d. 1845 or 1846)」Dictionary of Canadian Biography, vol. 7
※ 「The Mystery of Mr. McIntosh's Apple」 Written by Shane Peacock — Posted May 6, 2016 Canada's History Society
※ 「Canada's apple: The legendary McIntosh is set to disappear gradually」CTVnews 2020年9月11日金曜日
※ リンゴの歴史 リンゴ大学 弘前中央青果株式会社