いちご「とっておき」:来歴や特徴と産地や旬
●いちご「とっておき」とは
◆いちご「とっておき」の来歴
「とっておき」は鳥取県が冬場の低温で日照時間が少ない山陰という立地においても多収・高品質なイチゴをと「章姫」をもとに独自で開発したオリジナル品種です。
「とっておき」は鳥取県園芸試験場 野菜研究室が「章姫」を交配親として交配育成した外観が優れるE0836-12」を得、同じく「章姫」を交配親として交配育成した高糖度で食味が良く早期収量が高い「F0851-24」を得た。この2系統を2006(平成18)年に交配し、得られた実生から選抜育成したもので、分かりやすく言えば、「章姫」の子供どうしを交配して出来た「章姫」の孫品種という事です。
2016(28)年に種苗法に基づく品種登録出願、2018(平成30)年に品種登録されています。
名称には、『 “とっ”とり県産をアピール、 特別な美味しさを日常生活の中で!』という思いが込められているそうです。
◆いちご「とっておき」の特徴
「とっておき」の特徴は
〇 果実が大きく、底部が豊艶な円錐形。
〇 果皮色は橙赤~濃赤色で艶があり、そう果の落ち込みは中くらい。
〇 果肉の色は果芯も含めほぼ真っ白(冬場は果肉に赤みがやや入る)で硬く、春先の果実軟化も少ない。
〇 糖度は「章姫」並であり、やや酸味がある
〇 総収量では「章姫」よりやや少ないが、早期収量が多い。
となっています。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の大きさはかなり大、果実の縦横比は同等、果実の形は円錐形、
果皮の色は濃赤、果実の光沢の強弱は強、そう果の落ち込みは落ち込み中、
果実のがく片の付き方は水平、果径に対するがく片の大きさは同等、
果実の硬さは硬、果肉の色は橙赤、果心の色は淡赤、果実の空洞は無又は小、季性は一季成りである。
出願品種「とっておき」は、対照品種「かおり野」と比較して、葉の表面の色が濃緑であること、果皮の色が濃赤であること等で区別性が認められる。
対照品種「さがほのか」と比較して、果柄の長さがやや長であること、果肉の色が橙赤であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみたいちご「とっておき」の食味
今回撮影・試食した「とっておき」は鳥取県の「とみハウス」さんから送られてきたものです。届いてすぐに開封したのですが、果皮表面は全て傷みはじめ、おそらく摘みたてを発送されたのではないと思われる悪い状態でした。
いちごはどれも大粒で、1果40~50gあり、形もふっくらと丸みのある円錐形です。
切ってみると果肉は見事に白く、赤い色は果皮の部分だけです。香りは弱く、あまりいちごらしい印象ではなかったですが、食べてみるととても甘く、酸味はかなり控えめで柿を思わせるような味わいでした。
試しに糖度を計ってみると14.2度ありました。糖度を計る際に果汁を絞ったのですが、絞った果汁はほぼ無色透明でした。
このイチゴは、このまま食べるのが一番お勧めと思われます。ジャムやピューレにしてしまうとイチゴらしい赤い色が出ず綺麗な仕上がりにならないでしょう。逆に、白っぽく仕上げたいスイーツには良いかもしれません。
ただ今回届いた代物に関しては、イチゴ自体は粒の大きさや外見の良さから丹精込めて作られたのだろうと思われます。それゆえに、良い状態で発送されていない事が惜しまれてなりません。
●いちご「とっておき」の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「とっておき」は鳥取県オリジナル品種のイチゴで、鳥取県内でのみ栽培出荷されています。
鳥取県では「章姫」が主要品種で、この「とっておき」は新品種として登場したばかりなのでまだ生産量は少ないですが、今後転作が進み栽培面積が増えていくと思います。
◆「とっておき」の収穫時期と旬
「とっておき」は促成栽培に向いた品種で、早いものは11月下旬ごろから収穫が始まります。その後5月一杯くらいまで続きますが、「とっておき」の特性として、早い時期の収量が多くなる傾向があり、美味しい旬の時期は12月下旬から3月中旬頃までとなります。
品種 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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「とっておき」 |
< 出 典 >
※ 「イチゴ新品種‘とっておき’」新しい技術第54号(平成28年度)/とりネット/鳥取県公式サイト
※ 「鳥取県オリジナルのイチゴ新品種‘とっておき’ 」鳥取県園芸試験場 野菜研究室
※ 品種登録データベース 農林水産省ホームページ