◆「おとめ心」の来歴
1998年3月 山形県立砂丘地農業試験場において「砂丘S2号」に「北の輝」の花粉を交配し、94の実生を得る。
1998年9月 うどんこ病罹病程度の軽い58個体を選抜。
1999年5月 食味・果実の大きさを主体に2系統を選抜。
2000年5月 果重,外観,病害,硬さ,食味等に特徴ある 1系統を優良系統として選抜。
2001年~ 現地適応性試験実施を経て「砂丘S3号」とし、2002年に品種登録出願調査
2003年9月 名称を「おとめ心」とし、種苗法に基づく品種登録出願。
2004年 市場に本格デビュー
2006年3月 品種登録完了。
交配親に用いられた2品種の簡単な来歴は次の通り。
「北の輝」
農研機構が1990年に晩生で果実品質の良い「ベルルージュ」を種子親に、大果で果実の硬い「Pajaro」を花粉親として交配し、得られた実生から選抜したいちごで、1996年8月にいちご農林19号「北の輝」として命名登録され、2000年2月に品種登録されています。
果実は大果で極硬く、果形はやや短円錐形、果皮色は鮮赤色で成熟期が極晩生の寒冷地の露地栽培に向く品種となっています。
「砂丘S2号」
山形県立砂丘地農業試験場が1992年に「89-81-69(Albriton X Donner)」と「‘89-96-61 (はるよい×盛澗20号)」を交配し育成した品種です。果実はやや大玉で、果皮色は明赤色で、果形は円錐形で光沢がある。また、糖度は10%以上と高く、食味が優れ、果肉が硬く日持ち性が良い品種となっています。
こうして山形県立砂丘地農業試験場で「砂丘S2号」の育成まで含めると14年の歳月をかけて開発された山形県のオリジナル品種のいちごです。
◆おとめ心の特徴
「おとめ心」の主な特徴は以下の通り。
1,果実は円錐形でやや大きく、果皮の色は濃紅で光沢が強い。また、果肉も薄紅色。
2.果肉は硬く輸送性が高い。
3.甘味酸味のバランスが良い。
4.寒冷地での半促成栽培に適する。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
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果実の縦横比は縦長、大きさはやや大、果形は円錐、
果皮の色は濃紅、果実の光沢はかなり強、そう果の落ち込みは落ち込み小、
がく片の着き方は離、果径に対するがく片の大きさは中、
果実の硬さは硬、果肉色は淡紅、果心の色は淡赤、果実の空洞は中である。
開花始期及び成熟期はかなり晩、季性は一季成りである。
「宝交早生」と比較して、果実の光沢が強いこと、果実が硬いこと等で、「北の輝」と比較して、果形が円錐であること、そう果の落ち込みが小であること等で区別性が認められる。
-----』
◆実際に食べてみたおとめ心の食味
撮影試食した「おとめ心」はシーズンの後半5月23日に山形県から届いたものです。長距離であることと時期的に気温も上がっていることもあり、果皮表面は傷みが少し見られました。やはり関西で関東より遠い所からの取り寄せは難しいですね。
今回取り寄せたのは2パック入り2箱で、果実の大きさは20~29g少しばらつきがありましたが、形はどれも整った円錐形で、どれも全体に良く色付いていました。
箱を開けた時に甘いいちごらしい香りが感じられました。食べてみると、果肉はしっかりとした硬さが感じられ、甘味と共に酸味もしっかりとあり、バランスが良いというのがうなずけました。
糖度を計ってみると11~13.7度でした。
●おとめ心の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「おとめ心」は山形県のオリジナル品種で、県内だけで生産されています。
県内の主な産地は庄内砂丘ですが、山形市などの内陸地域にも広がっているようです。
山形県はイチゴの栽培が盛んなわけではなく、農林水産省の2019年(令和元年)産野菜生産出荷統計の栽培面積は58haとなっていますが、出荷量は不明で、そのほとんどが観光農園など地元で消費されています。
◆おとめ心の収穫時期と旬
「おとめ心」は現在各地で主流となっている一般的な促成栽培ではなく、半促成栽培が行われており、9月中旬から10月に定植し、、開花したらミツバチを使って交配し、収穫は翌3月下旬から始まり、6月までとなっています。
品種 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | ||||||||
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おとめ心 |
< 出 典 >
※ 「山形県では良質な「いちご」がほぼ通年味わえる」おいしい山形ホームページ
※ 「イチゴ 'おとめ心' の育成について」山形県園芸研究報告 菅原眞一、丸山康広 2006年3月
※ 「北の輝」 農研機構ホームページ
※ 品種登録データベース 農林水産省ホームページ