◆富房(とみふさ)の来歴
「富房」は千葉県館山市にある千葉県陵地園芸試験場において「津雲」と「瑞穂」を交配した実生から育成され、1989(平成元)年に品種登録された千葉県のオリジナル品種です。育成の過程は下記の通り。
1966(昭和41)年12月 「津雲」×「瑞穂」を含む5組の交配を行う。
1967(昭和42)年 6月 成熟した果実から種子を取り出し、直ちに播種。発芽した実生を2年間育成。
1969(昭和44)年 各個体から採穂し他系統を接木した 5年生樹に高接ぎ。「津雲」×「瑞穂」のグループ31個体の中から1個体を選抜、系統番号は「L313」とする。
1974(昭和49)年 初結果。以降、観察・調査を実施。
1982(昭和57)年 施設栽培試験開始。
1987(昭和62)年 「富房」と命名し、種苗法に基づく登録出願。
1989(平成元)年 登録番号第2057号として品種登録完了。(2007/09/20 ※期間満了)
◆富房(とみふさ)の特徴
「富房(とみふさ)」の果実は果形が短卵形で「田中」に似ていますが果梗部が張っているので「田中」よりも丸みがあり、横断面はほぼ円形で、平均果重が約70gと大粒であることも特徴です。
果皮はやや黄色の強い燈黄色で光沢があり美しく、果肉も果皮と同様の燈黄色で肉質はち密で歯ざわりは軟らかく果汁を多く含んでいます。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の縦断面は短卵、横断面は円、果梗部の形は円~鈍、果実の大きさは大である。
果皮の色はやや橙黄、果実の紫斑は軽、緑斑は無、そばかすは軽、果粉の多少はやや多である。
果頂部の開孔は開、果頂部の突出度は凹、がく片の長さは短、がく片の基部の幅は広、がく筒果しん部の幅はやや広、がく筒の深さは中である。
果皮の厚さは中、はく皮の難昜は難であるが果頂部からのはく皮は昜である。
果肉の厚さは中、色は橙黄、粗密はやや密、硬度は中、甘味は中、酸味は少、果汁の多少は多、香気は少である。
種子数は多、種子の大きさは中、種皮小斑点の多少は少である。
開花期は中、開花期間は長、成熟期は中であり、育成地で5月末から6月初旬である。
「田中」と比較して、成熟期が早いこと、果実の横断面が円であること、酸味が少ないこと等で、「瑞穂」と比較して、果実が小さいこと、果実の紫斑が軽いこと、果肉の粗密がやや密であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた富房(とみふさ)の食味
撮影試食した「富房」は5月6日に届いた、化粧箱入りの3Lサイズの秀品でした。平均果重は80g以上あり、外観もとてもいい物でした。
半分に切ってみると中にはやや大きな種が4つ入っており、果肉は特に肉厚という訳ではありませんが、果実が大きいので十分食べ応えがあります。また、切った断面から果汁が滴り落ち、見るからに美味しそうです。
皮は果梗部からはむきにくいですが、果頂部(お尻の部分)からだと手で綺麗にむけました。
食べてみると、果肉はやはりとてもジューシーで、食感は優しく、甘味もくどさがなくとても美味しいビワでした。ちなみに糖度は11.4度から甘いものでは13.8度もありました。
●富房(とみふさ)の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「富房」は千葉県のオリジナル品種として千葉県内でのみ栽培出荷されてきました。農林水産省がまとめた令和元年産特産果樹生産動態等調査では千葉県の「富房」の栽培面積は7haとなっています。
主な産地は南房総市をはじめ館山市などで、「房州びわ」の中でもハウス物向けの主要品種となっており、ハウス物栽培面積の約6割を占めています。
◆富房(とみふさ)の収穫時期と旬
「富房」は育成地(千葉県館山市)において5月末から6月初旬に成熟する中生種とされますが、主にハウス栽培され、露地物よりも早い4月末頃から5月下旬ごろにかけて出回ります。
品種 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | ||||||||
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富房(とみふさ) |
< 出 典 >
※ 「ピワ新品種‘富房’の特性」千葉緩地園試研報. 16 : 1 -7. 1994. 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター
※ 「びわ|旬鮮図鑑」千葉県ホームページ
※ 「登録番号 2057」富房(とみふさ) 農林水産省品種登録データベース