西南のひかり:来歴や特徴と産地や旬
●西南のひかりとは
「西南のひかり」は果樹試験場口之津支場が「EnOwNo.21」に「陽香」を交雑して育成した12月上中旬に成熟する早生のミカンタイプ品種で、果実は扁平で皮がむきやすく、β-クリプトキサンチンを高濃度に含有し、「オレンジ」と「アンコール」を混合した芳香があり食味は良好な柑橘です。
◆西南のひかりの来歴
「西南のひかり」は果樹試験場口之津支場(現 農研機構 果樹研究所 カンキツ研究口之津拠点)において皮が剥きやすく食味が良い中間母本系統「EnOwNo.21」(「アンコール」×「興 津早生」)に、大果で糖度が高く食味の良い中生種である「陽香」の花粉を交雑し、得られた実生から選抜育成されたミカンです。幾瀬の家庭か下記の通り。
1988(昭和63)年 果樹試験場口之津支場 において「EnOwNo.21」と「陽香」を交雑。種子を採取。
1989(平成元)年 ガラス室内 に播種して育苗。
1991(平成3)年 個体番号「En0w21・陽香-No.10」とし、「瀬戸温州」を中間台にして高接ぎ。
1995(平成7)年 初結実。優良個体として選抜。
1996(平成8)年 カンキツ第 8回系統適応性・特性検定 試験に系統名「カンキツ口之津26号」として供試。
2006(平成18)年 平成18年度果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会において、新品種候補としてふさわしいとの合意を得る。
2007(平成19)年 果樹試験研究推進会議において新品種候補と決定。農林水産省に命名登録申請および種苗法に基づく品種登録出願。
2008(平成20)年 「みかん農林16号」として農林認定および「西南のひかり」と命名、登録。
2009(平成21)年 品種登録完了。
「西南のひかり」という品種名には、九州(西南暖地) で育成され、カンキツ産地へ光(ひかり)をもたらす品種になって欲しいという願いが込められているそうです。
◆西南のひかりの特徴
「西南のひかり」の果実は、平均果実重180~190g程で、果形は扁円形で果形指数(横径/縦径×100)が140~150となっているので高さに対して直径が1.5倍近い扁平なミカンとなっています。
果皮は橙色から濃橙色で、比較的薄く手で剥きやすいです。中のジョウノウ膜も比較的薄くて食べやすく、果肉は濃橙色で軟らかくジューシーで機能性成分として注目されるβ-クリプトキサンチンを高濃度含有しているのが特徴です。
また、果汁の糖度は約13%で高く、減酸も早いことと、スイートオレンジとアンコールを混合した芳香を持っているののも特徴です。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。
『-----
果実の形は扁平、果頂部の形は平坦、果頂部放射条溝の有無は無、果頂部の凹環の有無は無、果梗部の形はやや凹、果梗部放射条溝の多少は中、
果心の充実度は空、果心の大きさは大、果実の重さはやや重、
果皮の色は濃橙、油胞の大きさは小、油胞の密度は中、油胞の凹凸は凸、果面の粗滑は中、果皮の厚さは薄、果皮歩合は中、剥皮の難易は易、
じょうのう膜の硬さは軟、さじょうの形は中、さじょうの大きさは中、さじょう(果肉)の色は濃橙、果汁の多少は多、甘味は高、酸味は低、香気の多少は中、種子数は少、
発芽期は中、開花期は中、成熟期はかなり早、隔年結果性は中、浮皮果の発生は少、裂果の発生は無、貯蔵性は中である。
出願品種「西南のひかり」は、対照品種「はれひめ」と比較して、果皮の厚さが薄であること、甘味が高であること等で区別性が認められる。
対照品種「太田ポンカン」と比較して、果実の形が扁平であること、種子数が少であること等で区別性が認められる。
-----』以上、抜粋。
◆実際に食べてみた西南のひかりの食味
撮影試食した「西南のひかり」は12月24日に香川県内の直売所で購入した5個入り300円ほどのものです。
果実は200g前後でミカンとしてはやや大きく、皮は柔らかく手で剥きやすいです。
ジョウノウ膜は特に薄いというほどではありませんが、そのまま食べてもあまり気にはなりませんでした。食味的には酸味が少なく甘いみかんで、計った糖度は11.8~12.5%でした。
香りは特徴にあるように、「温州みかん」とは少し違い、オレンジに近い感じで美味しいです。β-クリプトキサンチンを多く含んでいるとのことですが、見た目や食べた感じでは分かりませんでした。
今回の試食は購入してから12日間ほど室外の冷暗所に貯蔵し、年明けの5日に試食したのですが、どれも状態は良く、美味しく頂く事が出来ました。
中に浮き皮果がありましたが、食味は全く問題なく、むしろジョウノウ膜が薄めで美味しく食べられました。
●西南のひかりの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
「西南のひかり」の全国の栽培面積と収穫量を農林水産省がまとめている特産果樹生産出荷実績調査で見ると、全国の栽培亜面積は3.2haしかなく、収穫量も37トンほどとなっています。
主な産地は香川県で、21.3トン、次いで高知県、福岡県、長崎県となっています。香川県の主な産地は三豊市、観音寺市、坂出市です。
この統計に出ていませんが、その他の柑橘産地でも個々の農園で栽培はされているようですが、全国的に生産者は少なく、多くは産地で消費されていると思われます。
◆西南のひかりの収穫時期と旬
「西南のひかり」は12月上中旬に成熟する早生のミカンで、収穫時期は12月上旬頃から下旬にかけてで、市場に出回るのもその時期だけとなっています。
品種 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
西南のひかり |
< 出 典 >
※ 「カンキツ新品種'西南のひかり'」果樹研究所研究報告 第19号 p. 11-22 2015
※ 「機能性成分を高濃度含有する早生のミカン新品種「西南のひかり」」
※ 「西南のひかり」農研機構 育成品種紹介
※ 「登録番号17969西南のひかり 」 農林水産省品種登録データベース