肥の豊/ひのゆたか:来歴や特徴と産地や旬
●肥の豊とは
◆熊本県のオリジナル品種
「肥の豊(ひのゆたか)」は、樹勢が弱りやすく、高酸果実の割合が高い不知火(デコポン)の問題を改良すべく熊本県農業研究センター果樹研究所において、1989(平成元)年に「不知火」に「マーコット」を交配して得られた珠心胚実生(品種を掛け合わせて得られた交雑胚以外の、雌しべの珠心から発達した親のクローン胚)の中から選抜育成された変異種で、果実そのものの形状は不知火そのまま受け継ぎながら樹勢が強く、減酸が早いことから高酸果実の割合は低い品種となっている。
2000(平成12)年3月に熊本県によって登録出願、同年10月に公表され、2003(平成15)年に品種登録されている。
こうして肥の豊は熊本県オリジナルのデコポンの後継品種として平成19年産から市場に出荷が始まったばかりの柑橘である。
◆肥の豊の特徴
肥の豊の果実は270~300gの大きさで、外見は不知火とほぼ同じ。果こう部が盛り上がったデコがあり、果皮の色は橙で果面が少し粗くつるっとはしていない。
農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されている。
『----果実の形は球、果形指数は小、果頂部の形は平坦、放射条溝の有無は有、凹環の有無は無、果梗部の形は高カラー凹、放射条溝の多少は多である。果心の充実度は空、大きさは大、果実の重さは重、果皮の色は橙、油胞の大きさは小、密度は疎、凹凸は凸、果面の粗滑はやや粗、果皮の厚さは中、果皮歩合は小、剥皮の難易は易である。じょうのう膜の硬さは軟、さじょうの形及び大きさは中、色は橙である。果汁の多少は多、甘味は高、酸味及び香気の多少は中、種子数は少、胚の数は多胚である。発芽期及び開花期はやや晩、成熟期は早で育成地においては1月下旬~2月上旬である。-----』 以上、抜粋。
◆実際に食べてみた肥の豊の食味
今回入手したものは3月下旬に仕入れたもの。品種表示がされていなければデコポンと見分けることはできないだろう。
皮は手で簡単に剥け、ジョウノウ膜は房と房の間はとても薄いが、背側はやや厚く、ジョウノウ膜ごと食べられなくはないが少し口に残る感じ。
甘味酸味のバランスはとてもよく、固すぎず柔らかすぎず、ちょうど心地いい硬さのサジョウの粒感が舌に感じられ、しっかりした甘さの果汁が口に広がりとても美味しく感じられた。
●肥の豊の主な産地と旬
◆主な産地と生産量
肥の豊(ひのゆたか)は熊本県のオリジナル品種として、県内のみで栽培出荷されている。主な産地は不知火(デコポン)と同じ宇城地域、芦北地域・天草地域を中心に、まずは樹勢が低下した不知火の代替え樹として奨励されている。まだデビューしたばかりの品種なので、今後栽培面積が広がり、デコポンと同じように店頭に並ぶようになると思われる。
◆肥の豊収穫時期と旬
肥の豊(ひのゆたか)の成熟期は1月下旬~2月上旬となっており、5月いっぱい位まで出荷されるようだ。食べ頃の旬は2月下旬頃から4月中旬頃まで。
品種 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
肥の豊 |