ビンナガ/ビンチョウマグロ 特徴や産地と旬

ビンナガ/ビンチョウマグロ

●ビンナガ/ビンチョウマグロの生態や特徴

◆ビンナガとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > サバ亜目 > サバ科 > Scombrinae > Thunnini > マグロ属(BISMaLより)

学名:Thunnus alalunga (Bonnaterre, 1788)

和名:びんなが/鬢長

英名:Albacore、Longfin tunny 仏語:Germon

別名:ビンチョウマグロ、トンボ、カンタロウ、ヒレナガ、トンボシビ

 ビンナガはサバ科マグロ属の一種で、クロマグロ、メバチ、キハダ、コシナガとともに国内で漁獲されるマグロ5種の一つである。ビンナガはマグロにしては身が白っぽいことから値は安めで、加熱調理すると鶏肉のような見栄えになることから「シーチキン」でお馴染みの油漬けのツナ缶詰の原料となっている。本種を使ったツナの缶詰は「ホワイト」ツナと呼ばれ、キハダやメバチ、カツオなどが原料となっている「ライト」ツナよりも高級品となっている。

 とはいえ、脂がのった個体は刺身も十分に美味しく、”ビントロ”と呼ばれ寿司ネタとしても広く知られるようになった。

ビンナガ/ビンチョウマグロの長い胸ビレ

 ビンナガという和名は本種の長い胸ビレを鬢髪(びんぱつ)に見立てて付けられている。地方名にはやはりこの長い胸ビレを羽に見立てたのであろう「トンボ」や「トンボシビ」というのがあるほか、「カンタロウ」とも呼ばれている。学名も種小名”alalunga”は『ヒレが長い』という意味で付けられている。

◆ビンナガマグロの生態

 ビンナガは世界中の熱帯から温帯海域に分布する回遊魚だが、赤道付近ではあまり漁獲されないことから、北半球の魚群と南半球魚群は系群が異なることが解っている。さらに太平洋と大西洋、インド洋でも分かれていると考えられている。

ビンナガ/ビンチョウマグロ

 ビンナガは水温16~20度を好み、表層から水温が高い熱帯海域ではやや深層を回遊しながら小魚を捕食する。北太平洋では西から東にかけて大規模に回遊することが知られているが日本海に入り込むことは稀である。

 主な産卵期は春から夏にかけてだが、北太平洋の魚群は台湾・ルソン島~ハワイ諸島にかけての海域で周年産卵が見られるようだ。

 孵化した稚魚は1年で尾叉長36cm(0.8kg)ほどに成長し、2歳で51cm(2.5kg)、3歳で65cm(5.4kg)、4歳で76cm(8kg)、5歳で86cm(13kg)、7歳でようやく1mを超える。寿命は長くて16年程とみられている。撮影した個体は尾叉長76cm、8kg超だったので、これでいくと丁度4歳といったところのようだ。

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は全域だが日本海には稀となっており、海外においては朝鮮半島南岸・東岸他、世界中の亜熱帯から温帯海域に分布するとある。

◆ビンナガマグロの特徴

 ビンナガは全長1.2mほどで、記録がある最大でも1.4m、60kgと、クロマグロに比べると小さい。撮影した個体は全長80cmあまり8.4kgだった。

ビンナガ/ビンチョウマグロ

 体形はマグロらしい紡錘形で体の断面は丸い。背ビレは表皮に収納可能な13~14棘条からなる第一背ビレと臀ビレと対を成すようにつく14~16軟条からなる第二背ビレ、その後方には尾の付け根にかけて7~8の小離鰭が並ぶ。

 一番の特徴は成魚の胸ビレが著しく長いことで、小離鰭のある所まで達する。(若魚の胸ビレは短く、第二背ビレ基部にも達しない)

 体色は体側上半分が黒く、その境界から腹にかけては銀白色で目立った斑紋はない。尾ビレは暗色で後縁が白いのも本種の特徴。

ビンナガ/ビンチョウマグロの第二背ビレから尾ビレにかけて

●ビンナガ/ビンチョウマグロの主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

 ビンナガは世界中の海域で漁獲されているが、日本の漁業では主に竿釣りや延縄で漁獲されている。

ビンナガ/ビンチョウマグロの産地別と漁獲量

  農林水産省がまとめた令和3年産漁業・養殖業生産統計で見ると国内の主な産地は宮崎県、高知県、沖縄県、それに静岡県、三重県などで、上位3県で全国のおよそ半分を占めている。

 漁獲されたビンナガの多くが缶詰などに加工されている他、遠洋でとれた脂がのった物は刺身用などに冷凍され水揚げされている。鮮魚で市場に並ぶものは近海で獲れたもので数は少ない。

◆ビンナガマグロの漁獲時期と旬

 ビンナガは冷凍物をサクにしたものがスーパーなどで売っているのをよく見かけますが、こういったものは当然旬には関係なく常に出回っています。

 一方、近海で獲れ鮮魚として出荷されるものには旬があります。ビンナガの旬には諸説ありますが、静岡県では水揚げ量が多くなる春から夏にかけてが旬と言われています。また、平凡社の「食材魚貝大百科④」でも夏が旬となっています。所変わって和歌山県では12月頃~翌4月上旬が漁期で2~3月が最盛期となっており、この時期が旬となっています。

 ビンナガもカツオなどと同じように春から秋にかけて餌を求めて北上し、寒くなる前に南下してくる回遊魚なので、身に脂がのって美味しくなるのはやはり冬から春先にかけてという説もあり、当サイトでは冬から春先にかけてが旬としています。

 撮影試食したものは3月中旬に和歌山県で漁獲された8キロほどのものですが、身の締りがよく程よく脂もあり、美味しい状態でした。

旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ビンナガマグロ                        

< 出 典 >

 ※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 p.261

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会 p.1651

 ※「食材魚貝大百科 マグロのすべて」平凡社 p.023

 ※「食材魚貝大百科④」平凡社 p.103

 ※「旬の食材- 春の食材」 -講談社 p.16

 ※ Thunnus alalunga FishBase

 当サイトの画像一覧ページにある画像に関しまして、透かしロゴなしの元サイズ画像をご利用になりたい場合はダウンロードサイトからご購入頂けます。そちらに無いものでも各画像一覧からご希望の画像をクリックした際に表示される拡大画像のURLをお問い合わせフォームからお知らせ頂ければアップロードいたします。また、点数が多い場合は別途ご相談にも対応いたします。企業様の場合は請求書・振込払いも可能です。

マグロ属5種 - Thunnus South, 1845 -

キハダ Thunnus albacares

キハダ
Thunnus albacares

クロマグロ
Thunnus orientalis

メバチ
Thunnus obesus