ホウボウ(魴鮄/ほうぼう):生態や特徴と、産地や旬

ホウボウ - Chelidonichthys spinosus -

■ホウボウ - Chelidonichthys spinosus -の生態や特徴

●ホウボウとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > カサゴ目 > Platycephaloidei > ホウボウ科 > ホウボウ属(BISMaLより)

学名:Chelidonichthys spinosus (McClelland, 1844)

英名:Spiny red gurnard、Gurnard、Sea robin

仏名:Rouget grondin

和名:ほうぼう/魴鮄

別名:キミウオ、キミヨ、キミオ、コトツ、コト、カナンド、カナガシラ、ホコウオ

 「ホウボウ」はカサゴ目ホウボウ科ホウボウ属に分類される魚で、このホウボウ科には日本近海ではホウボウ属をはじめカナガシラ属、ソコホウボウ属の3属19種が確認されている。

 「ホウボウ」という名前は、海から上げた時に浮き袋を震わせて「グーグー」と鳴くので、それがボーボーになりホウボウになったという説の他、胸ビレの軟条を使って方々這いまわる魚ということからという説などがある。

 青森県では「キミオ」と呼ばれ、そこから日本海沿岸に沿って北陸辺りでは「キミウオ」となる。また島根県や鳥取県などの山陰辺りでは「コトオ」や「コト」「コトチ」「コトツ」など、コトという音が付く色々な呼び名が使われているようだ。その他、九州では「ホコノウオ」とも呼ばれている。

 学名の属名部”Chelidonichthys”は、ギリシャ語で『ツバメ』を意味する”chelidon”と『魚』を意味する”ichthys”からなる。また種名部”spinosus”は『棘の多い』という意味のラテン語に因む。

 英語ではガーナードあるいはスパイニー・レッド・ガーナードと呼ばれるが、これは”Spiny(棘のある) red(赤い) gurnard(ぶつぶつ言う人)”という意味からつけられている。また、シーロビンとも呼ばれるが、こちらは「海のコマドリ」という意味である。

●やや高値の白身魚

 ホウボウは頭が大きく歩留まりは良くないが食味の良い上品な白身魚で、白身ゆえの淡白さがそれほど感じないほどに旨みがあり、煮てよし焼いてよし、生で良しである。そのため価格もやや高い。

●ホウボウの生態

 ホウボウは暖海性の底生魚で、西太平洋から黄海、東シナ海、南シナ海まで分布し、水深100-200mを中心に水深600mほどの深い砂泥底で下向きに着いた大きな口で甲殻類や小魚などの底生動物を捕食し生息している。

ホウボウ/魴鮄/ほうぼうの口 Chelidonichthys spinosus

 ホウボウは面白い魚で、胸びれに3本の脚・・というか指の様に見える柔らかい軟条が発達し、これを使って海底を歩くように砂の中の獲物を探し回る。

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は北海道日本海・太平洋沿岸、津軽海峡〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、津軽海峡〜九州南岸の太平洋沿岸、八丈島(希)、瀬戸内海、東シナ海大陸棚域となっており、海外においては渤海、黄海、朝鮮半島全沿岸、済州島、台湾、中国東シナ海・南シナ海沿岸、ピーター大帝湾(稀)に分布する。

●ホウボウの特徴

 ホウボウは標準体長40cmほどで大きいものは40~50㎝になるが、成長が遅く27㎝程の成魚になるのに4年もかかるという。

 体形は硬い骨で包まれた大きな頭の後ろに尻すぼみに円錐形の胴がのびている。

ホウボウ - Chelidonichthys spinosus - ホウボウ/魴鮄/ほうぼう

 胸鰭が異様に大きく、その色も内側にあたる上面は綺麗な緑色に縁が青く、その内側にも青い斑点が付いており、海底で泳ぐ様子はまるで蝶が羽を広げているように見える。

 胸ビレの軟条のうち下3本がヒレ全体から離れ、脚の膝関節があるかのように曲がり、それを使って海底を歩くように動くのがこのホウボウ属の大きな特徴。

ホウボウ - Chelidonichthys spinosus -

 体色は成魚になると背が褐色地だが、頭から体全体が鮮やかな赤い斑が現れ、背ビレや尾ビレ、腹ビレ、臀(しり)ビレは淡い橙色からピンク色。

■ホウボウの産地と美味しい旬の時期

●底引き網漁で獲れます

 日本近海では、北海道南部から九州、沖縄にかけての各地の沿岸で主に底引き網で漁獲される他、延縄や定置網でも漁獲されている。

●産卵期

 ホウボウの産卵期は海域によって多少差があるが、九州近海で1月~4月頃、その他のところは概ね4月頃から6月頃にかけてとなっている。ざっくりと春先から初夏にかけてとなります。

●ホウボウの旬は

 ホウボウは通年獲れ、一年を通して美味しい魚ではあるが、中でも12月から2月の冬が脂がのって最も美味しい旬になり、春には腹に卵を持ち始める。

旬カレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
美味しい旬                        
産卵期                        
ホウボウ/魴鮄/ほうぼう Chelidonichthys spinosus

< 出 典 >

 ※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 p.147

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会 p.722

 ※「食材魚貝大百科②」平凡社 p.110

 ※「旬の食材- 春の食材」 -講談社 p.46

 ※Chelidonichthys spinosus (McClelland, 1844) FishBase

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