●ナガニシ/ハシナガニシの生態や特徴
◆ナガニシとは
分類:腹足綱 > 直腹足亜綱 > 新生腹足上目 > 吸腔目 > Hypsogastropoda > 新腹足下目 > Buccinoidea > イトマキボラ科 > ナガニシ属(BISMaLより)
学名:Fusinus perplexus (A. Adams, 1864)
和名:ながにし/長螺
英名:Spindle snail
別名:夜泣き貝、ハシナガニシ
ナガニシはイトマキボラ科ナガニシ属に分類される巻貝です。日本近海に分布するナガニシ属にはこの他フトウネナガニシやイボウネナガニシ、イトマキナガニシなど24種がいます。また、ハシナガニシと呼ばれるものも本種と同一種と考えられています。
このナガニシは古くから夜泣き貝とも呼ばれてきましたが、この由来には諸説あり、幼児が夜泣きした際にこの貝を見せると夜泣きが止んだからという説や、夜泣きの薬にしたという説など、子供の夜泣きに因むものがいくつか見られます。また、古くはこの貝殻が幼児の玩具に使われていたようなので、子供をあやすために使われたのかもしれません。
現在は大量に獲れる貝ではなく、またワタにエグミがあることなどから食用とする地方は限られているが、広島県では刺身で食べる貝として非常に珍重されている。
◆ナガニシの生態
ナガニシは北海道南部から九州にかけての沿岸の比較的浅い10~50mの砂底に生息する。
産卵期は春で、「さかさほおずき」あるいは「ぐんばいほおずき」と呼ばれる卵嚢を産み出す。
◆ナガニシの特徴
ナガニシは殻長15cm以上になる細長い貝で、螺塔が高く、螺層はふくらみら、水管溝が細く長く伸びている。縦肋は高く角状になっているものから低くなだらかなものまで個体差が大きく、螺肋が蜜に走っている。
殻は白いが、表面は淡褐色から褐色のビロード状の殻皮に覆われている。
殻口の内側は白く、外側と同じように螺肋が見られる。
蓋は下端が尖った長楕円形の角質で、軟体部の脚はやや毒々しい赤い色をしているのが特徴。本種にはエゾボラなどと同様、唾液腺にテトラミンを含んでいるので注意が必要。
●ナガニシ/ハシナガニシの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
ナガニシは広く日本各地の沿岸に生息するが、これを主とした漁はなく、また食用とする地方も限られており、それ以外の所では出荷の対象とはほぼなっていない。
ただ、広島県では刺身で食べると美味しい貝として人気があり、そこそこ高値で取引されている。
貝類を多く産する愛知県でも他の貝などに混じって獲れたものが時折出荷されている。
◆ナガニシの漁獲時期と旬
ナガニシは通年水揚げはあるようですが沢山獲れるものではありません。食的な旬は冬から産卵を控えた春にかけてと思われます。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ナガニシ |
●ナガニシ/ハシナガニシの目利きと調理のポイント
◆選ぶポイント
生きていることが基本。水の中で元気よく動いているもの、そうでなくても触れた時に素早く蓋を閉じようとするものを選びます。
また、刺身で食べることを考えると大きい方が良いでしょう。
◆冷蔵庫で保存
買ってきたらそのまま冷蔵庫に入れておきます。塩水の中で活かされていたものであれば、水を切って冷蔵庫に入れても翌日くらいまではちゃんと生きています。さばいたものはその日に食べてしまいましょう。
◆調理のポイント
ナガニシ類はワタにエグミがあるので、食べられるのは脚の筋肉部分だけと考えてください。また、本種にはエゾボラなどと同様、唾液腺にテトラミンを含んでいるので注意が必要。
◆ナガニシの刺身
ナガニシの硬い殻をハンマーなどを使って割り、身を取り出す。ワタを取り除き、脚の部分を包丁で開いて、中の唾液腺を取り除く。これに塩を振り、軽くもんでから流水でぬめりを洗い流す。
大きな貝ではない上、食べられるのは菓子の筋肉だけなので非常に歩留まりが悪いが、食感や味はとてもいい。
◆ナガニシの煮貝
ナガニシを殻ごと煮付けたもの。
煮ると身は爪楊枝などで簡単に取り出せる。これも食べるのは身の部分だけ。ワタは苦みというかエグミが強く食べられない。
正直なところ、これを食べた時点ではテトラミンを含んでいるとは知らず、取り除かずに食べていた。そこそこ食べたのだが、特にテトラミン中毒になることは無かった。
とは言え、今後はちゃんと取り除いて食べることにしたい。
食味はというと、シコシコとした食感で甘味があり味は美味しかった。
◆ナガニシのむき身を使って
ナガニシをさっと塩ゆでしてから身を取り出し、ワタと唾液腺を取り除けば色々な料理に使える。
ただ、やはり手間がかかるので、あえてこの貝を選ぶという意味はなく、この貝が沢山手には行った時にこういう食べ方もできるという程度だろう。
< 出 典 >
※「日本近海産貝類図鑑」奥谷喬司編著 東海大出版部
※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会
※「食材魚貝大百科②」平凡社 p.022
※「旬の食材- 冬の食材」 -講談社 p.106
※「日本沿岸に生息する16種巻貝唾液腺中のテトラミン含量」 食品衛生学雑誌/62 巻 (2021) 6 号 p. 203-208
※「On Some Fusinus (Gastropoda: Fasciolariidae) from Japan, with Type Selections(レクトタイプの選定を伴う,日本産ナガニシ属数種の再検討)」 カロモン P. , スナイダー M. A. VENUS(日本貝類学会)2004 年 第 63 巻 第 1-2 号 p.13-27
※「F. perplexus (A. Adams, 1864)」 WoRMS
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