イッテンアカタチ:生態や特徴と産地や旬

イッテンアカタチ Acanthocepola limbata

●イッテンアカタチの生態や特徴

◆イッテンアカタチとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > アカタチ科 > Cepolinae(アカタチ亜科) > アカタチ属(BISMaLより)

学名:Acanthocepola limbata (Valenciennes, 1835)

和名:いってんあかたち/一点赤太刀

英名:Blackspot bandfish

別名:アカタチ

 イッテンアカタチはアカタチ科アカタチ亜科アカタチ属の一種でタチウオのように細長い魚である。

 日本近海で見られるアカタチ亜科にはアカタチ属に本種とアカタチ、インドアカタチの3種、それにスミツキアカタチ属のスミツキアカタチの計4種がある。

 学名の属名部”Acanthocepola”はスミツキアカタチ属の属名”Cepola”に、ギリシャ語で『棘』を意味する”akantha”をつけたもので、アカタチ属の前エラ蓋骨後縁にはスミツキアカタチにはないのこぎり状の棘があることに因む。種名部”limbata”は『縁取りのある』という意味のラテン語に因む。

 本種は特に珍しい魚という訳では無いが、まとまって獲れるわけでもなく、また、細長く身が薄いため、食材としての魅力に乏しいことから、雑魚として産地で消費され、産地以外でお目にかかれるのは水族館くらいではないだろうか。ただ、可食部は少ないとはいえ、その身は結構美味しく、またいい出汁もとれる。

◆イッテンアカタチの生態

 イッテンアカタチは本州中部以南の水深80-100mの砂泥底に生息するが、幼魚は20~30mにも出現する。

イッテンアカタチ Acanthocepola limbata

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は富山県〜九州西岸の日本海・東シナ海沿岸、相模湾〜九州南岸の太平洋沿岸、西表島、東シナ海となっており、海外においては朝鮮半島南岸、台湾、広東省・広西省、海南島、アラビア海まで分布する。

◆イッテンアカタチの特徴

 イッテンアカタチは全長50cmほどになる。体高が低く、体長は体高の約13倍もあり著しく細長い形で側扁している。背ビレ。臀ビレと尾ビレは連続し、頭部から肛門にかけての前方を除き体全体に及ぶ。

イッテンアカタチ Acanthocepola limbata

 体色は全体に橙色がかった赤色で、背ビレの前方部に顕著な黒い斑紋があるのが特徴。

イッテンアカタチ Acanthocepola limbata

 同じアカタチ属の近縁種であるアカタチやインドアカタチとは一見姿形がよく似るが、アカタチとは背ビレにある黒斑の有無により容易に判別できる。インドアカタチにも同じような黒斑が背ビレにみられるが、アカタチやインドアカタチは体高が本種に比べ明らかに高く、体長が体高の7倍(インドアカタチ)、8~11倍(アカタチ)しかなく、この体長の長さの違いにより背ビレ軟条数もイッテンアカタチが102~104本あるのに対し、78~85本しかないので判別できる。

●イッテンアカタチの主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

 イッテンアカタチは主に底引き網漁で漁獲されるが、雑魚として扱われるため、漁獲量など詳細は不明。他の魚貝に混じって混獲される程度で、数は少ない。

 エソなど他の雑魚と共に練り物向けに出荷されるほか、少量が鮮魚として産地で消費されている。

◆イッテンアカタチの漁獲時期と旬

 各地の沖合底引き網が行われる時期に水揚げされるが、旬は不明。

 撮影した個体は、愛知県三河一色で10月下旬に仕入れたもので、市場には他の船の出荷にも混じっていた。

旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
イッテンアカタチ                        

●イッテンアカタチの目利きと調理のポイント

◆全体に色が鮮やかで、眼が澄んでいること

イッテンアカタチの顔 頭部

 本種は全体に鮮やかな赤い色をしているので、その色が鮮やかで、体に張りがあるものが新鮮。また、眼が澄んでいて白濁していないものが良い。

 可食部が薄いので、なるべく大きい物を選びたい。とはいえ、選ぶほど数が並ぶことは少ないですが…。

◆エラが鮮紅色

イッテンアカタチのエラ

 エラ蓋を開けてみて、中のエラが綺麗な赤い色をしているかをチェックします。

 ただし、基本的には魚屋さんを信用して尋ねるのが一番です。むやみに触ったり、エラを覗くのはやめましょう。あくまでも買ってきた魚の状態を確認する際のチェックとお考え下さい。

◆イッテンアカタチの調理のポイント

 本種はとても細長い魚で、しかもアナゴやハモなどのように断面が丸イ魚ではなく、タチウオのように薄いので、三枚におろすと身がとても薄くなってしまいます。三枚におろすのは50cmほどの大きい物にし、そうでないものは内臓とエラを取り除いて、ぶつ切りにして骨ごと調理することをお勧めします。

 身はとても上品な身質の白身です。骨は硬くはありませんが、骨ごと食べるという訳にはいきません。

 皮は薄く、引かなくても良いでしょう。

●イッテンアカタチの美味しい食べ方と料理

◆イッテンアカタチの刺身

 大きいものが手に入ったら、三枚におろして刺身にしても美味しいです。皮目を炙ると香ばしさも加わり、皮の歯切れも良くなります。

◆イッテンアカタチのポワレ

 身をぶつ切りにし、そのまま塩胡椒を振って、ニンニクとローズマリーを効かせながらオリーブオイルで焼き上げたもの。

イッテンアカタチの料理 ポワレ

 身が薄いので、皮がカリッとなるまで焼くと火が通り過ぎてしまうのでそこまでは焼いていません。

 身離れは良く、甘みがあって結構美味しいです。これで身がもっと厚みがあればいいのにな…と思ってしまいます。

◆イッテンアカタチの唐揚げ

 ぶつ切りにしたアカタチに塩胡椒を振り、小麦粉をまぶして唐揚げにしたもの。

イッテンアカタチの料理 唐揚げ

 身は甘く美味しい。ヒレ骨までは食べられますが、背骨や中骨は硬いので、身をせせるように食べることになります。

◆イッテンアカタチの煮付け

 酒、醤油、みりん、砂糖で煮付けても美味しいと思います。

 煮付けると身離れも良く、食べやすいでしょう。

◆イッテンアカタチの吸い物 味噌汁

 イッテンアカタチをぶつ切りにして昆布と共に煮だし、吸い物にするのもお勧め。赤い色も良く映えます。味噌汁も良いでしょう。身はせせるように食べることになりますが、やや面倒かもしれません。

 三枚におろした身を具にし、そのアラで出汁を取って吸い物に仕立てれば上品な椀物になります。

< 出 典 >

 ※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 p.188

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会 p.1024

 ※「食材魚貝大百科③」平凡社 p.139

 ※Acanthocepola limbata (Valenciennes, 1835) FishBase

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