タマカイ:生態や特徴と産地や旬

タマカイ,クエタマ,タマクエ

●タマカイの生態や特徴

◆タマカイとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > ハタ科 > ハタ亜科 > ハタ族 > マハタ属(日本海洋データセンターより)(日本海洋データセンターより)

学名:Epinephelus lanceolatus (Bloch 1790)

和名:たまかい

英名:Giant grouper

別名:アーラーミーバイ、モングエ(高知)

 「タマカイ」は「マハタ」や「クエ」などと同じハタ科マハタ属に分類される魚で、これまでの記録では全長270cm、400kgという記録があり、ハタ科の中でも最大種である。

 南方系の魚で、本州では「クエ」に比べ知名度は低いが、国内でも沖縄をはじめ鹿児島県や高知県などでも漁獲されており、食味が良く、大型種という事もあり高級魚として扱われている。

 和名の由来は不明。沖縄では「タマカイ」の他、「ヤイトハタ」なども含め大型のものを「アーラーミーバイ」と呼ぶ。また、英名はこの大きさに因み”Giant grouper”(ジャイアントグルーパー)だ。

 学名の属名部分”Epinephelus”は『曇った』という意味のギリシャ語”Epinephelos”に因み、種小名”lanceolatus”はラテン語で『小さな槍のある』という意味をなす”lanccola”+接尾語”-atus”からなっているらしいが、その由来は不明。

◆タマカイの生態

 「タマカイ」は熱帯から温帯の海域に分布し、沿岸の水深4.5~200mの岩礁やサンゴ礁域に生息する。老成魚になるまでは非常に食欲旺盛で小魚を中心に甲殻類など小動物を捕食し、「クエ」などに比べ成長速度が速いことが知られている。特に水温が高い海域の方がより早く大きくなるようだ。この成長の早さに注目し、高級魚である「クエ」との交配種をつくり養殖に活かされている。

 「タマカイ」は現代に繁栄している魚類の中では最もシーラカンスに似た形態や習性を持つとされ、アクアマリンふくしまではシーラカンスのロボットと同じ水槽で展示されている。

タマカイ,クエタマ,タマクエ

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は八丈島、小笠原諸島、和歌山県紀伊大島、鹿児島県笠沙、山口県(日本海)とされ、海外においては、台湾南部、香港、海南島、西沙群島、中沙群島、インド-太平洋(紅海とハワイ諸島含む)に分布するとされる。

 上記には記されていないが、沖縄県でも釣りの対象となるなど生息が確認されている。

◆タマカイの特徴

 「タマカイ」は標準体長2mの大型種で、大きい物になると全長3mにもおよび、ハタ科の最大種である。

 体形はやや側扁した縦長の楕円形で、口は大きく下顎が上顎よりも顕著に前に出ている。尾ビレ後縁は丸い。

タマカイ,クエタマ,タマクエ
 背ビレ棘条部は背が低く前方で高くなっていない

 体側の斑紋は成長と共に変化し、幼魚の時期は黄色から淡褐色の地に不規則な黒色帯が見られるが、これは大きくなるにつれ不明瞭になり、成魚になると全体に暗褐色の地に白から淡褐色のまだら模様となる。

 背ビレは11棘14~16軟条からなり、臀ビレは3棘8軟条からなる。

 本種とクエやマハタとの明確な違いは、他のマハタ属が背ビレ棘条部が前方で高くなるのに対し、本種の背ビレ棘条部は低く、前方で高くならないことと、他のマハタ属の側線管開口部が単一であるのに対し、本種のそれは4~6本に分岐していること。

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 側線管開口部が4~6本に分岐している

 また、背ビレ軟条部、尻ビレ、尾ビレに淡褐色や黄色いまだら模様が入っているのも特徴。

 写真はクエとタマカイのハイブリッド(交雑種)と思われるが、上記の特徴はタマカイのものと一致する。

●クエタマ / タマクエ

◆クエタマ / タマクエとは

 「クエタマ」あるいは「タマクエ」と呼ばれているものは「クエ」と「タマカイ」の交雑種を指す。

 これは肉質や味が良く高級魚で知られる「クエ」を養殖するのに、出荷サイズまで育てるのに4~6年以上かかるところを、成長が数倍早い「タマカイ」を掛け合わせることで両者のいいとこどりを狙い開発されたハイブリッド種である。

 マグロの養殖で有名な近畿大学が2014(平成26)年に、「クエ」の卵にマレーシアで養成されている「タマカイ」から採取された精子を交配させ育成したものと、愛媛県のイヨスイ株式会社が10年の歳月をかけ養殖生産を軌道に乗せ、2018年から国内向けにも「タマクエ」として販売を始めている。この「タマクエ」という名称はイヨスイによって2017年に商標登録されている。

 一方、鹿児島などの定置網や釣りなどでもこのハイブリッド種が漁獲されることがあり、自然界で偶然生まれたものか、養殖網から逃げ出したものなのかは定かではない。

 今回撮影した個体は京都市中央卸売市場のクエをはじめハタ科の魚をメインに扱っているシーフーズ大谷さんで仕入れた鹿児島県産のもので、大谷さん曰く、おそらくこのハイブリッドだろうとのこと。

 「クエタマ」あるいは「タマクエ」はタマカイににたスタイルで、体側の斑紋は「クエ」のように暗色の帯がありつつ「タマクエ」の特徴である淡色の斑点が全体に散らばっている。

●タマカイやクエタマ / タマクエの主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

 タマカイは国内では鹿児島県をはじめ沖縄県や高知県などで稀に漁獲される程度で、その数は極わずかである。

 2007年に高知県室戸岬沖の定置網に体長2.3m、重さ208kgもあるタマカイがかかり水揚げされたと話題になった。

 タマカイは養殖も行われており、国内では沖縄で、また、その南に位置する台湾でも行われている。また、国内ではイヨスイ株式会社が愛媛県宇和島や鹿児島県垂水で「タマクエ」を養殖し出荷している。

◆タマカイやクエタマ / タマクエの漁獲時期と旬

 養殖されている「クエタマ / タマクエ」は通年出荷が可能だと思うが、「タマカイ」も漁獲される時期は不規則で美味しい旬の時期は不明。暖海性の大型魚なので、あまり季節的な身質の変動はないように思う。ただ、クエやマハタなどの大型のハタ類は鍋料理に使われることが多く、そういう意味では晩秋から冬にかけて食べたい魚かもしれない。

 天然物はめったに市場に出回らないので、見つけた時が買い時という魚。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
タマカイ                        

●ハタ科の魚


< 出 典 >

 ※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会

 ※「食材魚貝大百科」平凡社

 ※「【持続可能な養殖 近畿大の挑戦】味と成長速度を両立」読売新聞オンライン 2021/02/24

 ※「新魚種 クエ×タマカイ “いいとこ取り”新魚」一般社団法人全国海水養魚協会ホームページ(2018/9/11 水産経済新聞)

 ※Epinephelus lanceolatus FishBase


 
 

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