オオクチイシナギ- Stereolepis doederleini -

オオクチイシナギ- Stereolepis doederleini -

●オオクチイシナギの生態や特徴

◆オオクチイシナギとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > イシナギ科 > イシナギ属(BISMaLより)

学名:Stereolepis doederleini Lindberg & Krasyukova, 1969

和名:おおくちいしなぎ/大口石投

英名:Striped giant seabass

別名:イシナギ、イシアラ、ダイシウオ(大師魚)、ボサツウオ(菩薩魚)、スミヤキダイ、オコ、オオイヨ、オオナ、オキアマギ

 オオクチイシナギはイシナギ科イシナギ属に分類される大型魚で、大きいものでは体長2m、100Kgにもなる。イシナギ科2属4種いるが国内にはイシナギ属の本種とコクチイシナギの2種がいる。イシナギ科の分類はこれまで不安定で、かつてはスズキ科とされていた。

 学名の属部”Stereolepis”はギリシャ語で『堅い』あるいは『しっかりした』という意味の”stereos”と、『鱗』または『魚』を意味する”lepis”からなる。種部の”doederleini”はドイツの動物学者、ルードビッヒ・デーデルラインに因む。

 食用として美味しいのは2~5kgの中型で、このサイズが価格的にも高め。20cm位までの幼魚は底引き網で獲れるが雑魚扱いとなっている。

◆イシナギ類の肝臓は要注意

 本種は脂を多く含んだ白身で食味は良いが、1mを超えるような大型になってくると肝臓に多量のビタミンAを含むようになり、食べ過ぎるとビタミンA過剰症により頭痛・嘔吐・発熱・皮膚落屑などを発症するので注意が必要である。そのため、イシナギ類の肝臓は食品衛生法で販売が禁止されており、イシナギは内臓を除去した状態で販売される。

◆オオクチイシナギの生態

 国内では高知県あたりと石川県あたりから北海道にかけて分布し、幼魚は沿岸で過ごし、大きく成長するにつれて深場へ移動していく。成魚になると400~600mの岩礁域で魚類や甲殻類など動物を捕食し生息するようになる。

 産卵期は晩春から初夏にかけてで、この時期には水深150~200mの浅場に移動し産卵する。

オオクチイシナギ- Stereolepis doederleini -

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は水深400-600m。産卵期(晩春から初夏)は30-200m。
北海道全沿岸〜屋久島の日本海・東シナ海・太平洋沿岸、男女群島西部、九州〜パラオ海嶺とされ、海外では朝鮮半島南岸・東岸、ピーター大帝湾(稀)に分布する。

◆オオクチイシナギの特徴

 オオクチイシナギは標準体長が2mにもなる大型魚で、体形はハタ科に少し似て、長楕円形でやや側扁するが、幼魚は体高が高い。背ビレは11棘10軟条からなり、背ビレ棘条は長めで強く、軟条部との境に深い欠刻がある。

 体色は全体が暗褐色で、幼魚から若魚は体側に4~6条の淡色の縦走帯があるが、暗色と淡色の割合は個体差がかなりみられ、いずれにしても成長するにつれて消失し、全体に暗褐色となる。

近縁種のコクチイシナギとは、側線有孔鱗数が57~68で、上顎後端が眼の中央より少し後ろになっているオオクチイシナギに対し、コクチイシナギは側線有孔鱗数が約80あり、上顎後端は眼の前縁下までしかないことで見分けられる。

●オオクチイシナギの主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

 オオクチイシナギは主に延縄や釣り、底引き網で漁獲される。珍しい魚ではないが、成魚は主な産地というほどまとまって獲れる魚ではなく、市場にも稀にしか出荷されていない。

 大型で味も良く、大型のものは希少であるにもかかわらず価格はハタ類に比べると随分安い。

◆オオクチイシナギの漁獲時期と旬

 オオクチイシナギの幼魚はほぼ通年水揚げがあるようだ。成魚は晩春から初夏にかけて産卵のため浅場にきて餌を求めるので、釣りではこの時期がシーズンとなり、漁獲量もこの時期に多くなる。

 身に脂がのって美味しい時期は腹の生殖巣が発達する前と思われるので、秋から冬にかけてではないだろうか。そういう考えると、旬の時期は脂がのる秋から、漁獲量が増える初夏にかけてとなる。

旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
オオクチイシナギ                        

●オオクチイシナギの美味しい食べ方と料理

◆オオクチイシナギの調理のポイント

 オオクチイシナギの肝臓には多量にビタミンAが含まれているので食べてはいけない。

 幼魚や若魚のウロコは比較的取りやすいが大型のものは包丁ですき引きした方が良いかもしれない。

 身はクセがなく脂を含んだ白身で甘みがあり、刺身の他、塩焼きやポワレ、ムニエルなどの焼き物から、煮付けや鍋、トマト煮、ブイヤベースなどの煮物、アクアパッツアや清蒸魚などの蒸し物、天ぷらや唐揚げ、フライなどの揚げ物と様々な料理で楽しめる。

オオクチイシナギ- Stereolepis doederleini -

●オオクチイシナギの写真一覧

各画像をクリックしていただければ拡大画像がご覧いただけます。

撮影機材: CANON EOS R5 , RF100mm F2.8 L MACRO IS USM

ロゴなし元画像サイズ:約4500万画素 8192X5464pix 72dpi RAWデータあり

< 出 典 >

 ※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 p.151

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会 p.749

 ※「食材魚貝大百科②」平凡社 p.137

 ※「旬の食材- 秋の食材」 -講談社 p.52

 ※Stereolepis doederleini Lindberg & Krasyukova, 1969 FishBase

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