トリガイ/とり貝:生態や特徴と産地や旬

トリガイ/鳥貝/とりがい

●トリガイ(とり貝)の生態や特徴

◆トリガイとは

分類:二枚貝綱 > 異歯亜綱 > マルスダレガイ目 > Cardioidea上科 > ザルガイ科 > Laevicardiinae亜科 > トリガイ属(日本海洋データセンターより)

学名:Fulvia mutica (Reeve, 1844)

和名:とりがい/鳥貝

英名:Heart Clam、Japanese Cockle

 トリガイはザルガイ科トリガイ属の二枚貝で、「鳥貝」という名前の由来は貝殻から伸びる黒い足が、鳥のくちばしに見えるからだとする説と、食べた時の食感が鶏肉に似ているからだとする二つの説がある。

トリガイ/鳥貝/とりがい

 もっぱら鮨だねとして食され、剥き身を開いて湯引きされた状態でパックに並べられたものがスーパーなどでも売られており、生きた殻付きの物を見たことがない人も多いのではないだろうか。むき身の輸入物は安いが、国産の活け物は高級品である。

 近年、トリガイとよく形が似ている足がクリーム色の貝も高級すし店などで石垣貝という名称で出されることがあるが、これも同じザルガイ科のエゾイシカゲガイという近縁種である。

◆トリガイの生態

トリガイ/鳥貝/とりがい

 トリガイは北海道を除く日本各地の内湾、及び朝鮮半島や中国沿岸に分布し、水深10m程までの泥底で海水を濾過しながらプランクトンを食べ生息している。

 産卵期は春と秋の二回あるとされ、寿命は約1年~2年程と考えられている。

 トリガイは酸素不足などに弱く環境の変化などによって一度に多量に死ぬことがある。そうかと思えば、時として大発生を起こしたり、豊凶が著しい貝として漁師の悩みの種となってきた。

◆トリガイの特徴

 トリガイは殻長6~10cm程で殻幅がふっくらとした二枚貝で、殻は薄く割れやすい。殻の色は黄褐色で殻頂から同心円上に縞模様が見られる。表面には40本ほどの放射肋と呼ばれる溝が付いており、その溝に沿って苔のような短い毛が生えた皮に覆われている。

トリガイ/鳥貝/とりがい トリガイ/鳥貝/とりがい

 殻を開けると、殻の内側は白地に赤から紫色の部分が見られる。

 脚の部分が黒っぽく、発達して長いため折りたたんだように収納されているのが分かる。食べるのは主にこの脚の部分である。

 市場でよく目にするのは上の写真のような放射肋の毛が少ないもだが、京都府の丹後地方で育成されている「丹後とり貝」は下の写真のように全体に大きく、放射肋の毛がびっしりと生えている。

丹後とり貝/トリガイ

●トリガイ(とり貝)の主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

 トリガイの国内の主な産地としては、太平洋側の東京湾や三河湾、伊勢湾など、日本海側では宮津や舞鶴など丹後地方。また、瀬戸内海も主な漁場である。ただ、いずこも漁獲量は減ってきており、産地によって状況に応じて年によっては漁を見合わせるなど資源量の保全に取り組んでいる。

◆京のブランド・丹後とり貝

トリガイ/鳥貝/とりがい

 舞鶴湾や若狭湾はもともとトリガイの好漁場ではあったが、豊凶の問題に取り組み、京都府立海洋センターが、稚貝を人工孵化させ、コンテナに稚貝を入れて海中に吊り下げる方法を開発し、実用化されている。この方法で育てられたトリガイは天敵のタコやヒトデから守られ、天然物より大きく育ち、安定して供給することが可能となった。この手法で育てられるものを「育成トリガイ」といい「丹後とり貝」のブランド名で宮津市や、舞鶴市の漁業者のもとで育成・生産拡大に取り組まれている。ちなみに、上の画像の物は舞鶴の育成物で、魚屋で一つ1200円ほどの値が付いていたた。

丹後とり貝/トリガイ

 この「丹後とり貝」は殻長8~10cmと大きく、可食部の重さも約20~40gもあり、味共に非常に優れているうえ、まだ数量的に少ない事もあって超高級品となっている。

◆むき身での流通

むき身のとり貝

 輸入も多く、中国や韓国から、同じように開いて湯引きされた物が大量に輸入されており、スーパーや回転寿司などで見かけるのはほとんどこうした輸入物である。

 トリガイは消化管に泥を含んでいる物が多いことや、殻が割れやすいこと、もっぱら鮨だねとして利用されるので、使いやすいよう剥き身を開いて湯引き(さっと塩や酢を加えた熱湯をくぐらせ、氷水に落とす)しパックに並べられた状態で出荷されている。こうしたものにはチルドのものと冷凍されたものがある。

◆トリガイの漁獲時期と旬

 トリガイの漁期は産地によって違いがあり、三河湾や石川県の七尾湾などでは3~6月頃、宮津や舞鶴などの丹後では5~7月となっている。

 春に獲れる物を「春貝」と呼び、食感が柔らかく甘味が強い。一方秋に獲れる物は「秋貝」と呼ばればれ、身が大きく歯ごたえが楽しめるが「春貝」のような繊細な甘さは無い。旬の時期は丹後とり貝に関しては5月から7月で、それ以外の産地では概ね4月から5月にかけてとなる。

丹後とり貝/トリガイ
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
トリガイ                        
育成丹後とり貝                        

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