イサキ/鶏魚/伊佐木:生態や特徴と、産地と旬の時期
●イサキの生態や特徴
◆イサキとは
分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > イサキ科 > イサキ属(日本海洋データセンターより)
学名:Parapristipoma trilineatum (Thunberg, 1793)
和名:いさき/伊佐木、伊佐幾、鶏魚
英名:Chicken grunt
別名:イサギ、クロブタ、クッカ、オクセイゴ、コシタメ、ウズムシ、イッサキ、ハンサコ、ジンキ
イサキはスズキ目イサキ科に分類され、単独でイサキ属とされている。文献によってはコショウダイ亜科イサキ属とされているものもある。
手頃な大きさの魚で、味はとてもよく刺身や塩焼きの美味しさには定評がある。骨が硬く、かつて和歌山県で鍛冶屋がのどに骨が刺さり苦しんで死んだことから「鍛冶屋殺し(かじやごろし)」の異名を持つ。
◆イサキの名前の由来と地方名
イサキという名前の由来には諸説あり、「キ」または「ギ」は魚を意味する接尾後のようなもので、若いイサキに斑(マダラ)があることから「斑キ=イサキ」となったという説。古くは斑をイサと発音していて、現在でもその名残で白く斑のある葉の事を「斑葉(いさは)」と言う。また、イサキは磯に多いことから「磯キ」がなまりイサキとなったという説などもある。漢字の「伊佐木」、「伊佐幾」、「鶏魚」はいずれも当て字で、最後の「鶏魚」は背ビレが鶏のトサカに似ていることに因む。
イサキも広く各地で取れる魚なので、産地によって様々な呼び名が付けられている。東京では「イサギ」とも呼び、神奈川辺りでは「クロブタ」や「クッカ」、その他東北地方では「オクセイゴ」、静岡では「コシタメ」、近畿では「ウズムシ」、九州では「一先(イッサキ)」、「ハンサコ」、「ジンキ」などと呼ばれる。
◆イサキの生態
イサキはやや暖かい海域に棲む魚で、日本近海では新潟県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海、伊豆諸島、宮城県〜九州南岸の太平洋沿岸、屋久島、東シナ海大陸棚域に分布し、海外では朝鮮半島南岸、済州島、台湾、福建省、広東省にみられる。
夜行性で、昼間は水深50~100mの藻場や岩礁帯に群れを成して生息するが、夜になると海面近くまで浮上し餌となる甲殻類や多毛類、小魚など捕食する。
産卵期は初夏から夏にかけて。
◆イサキの特徴
イサキは成長すると45cm程になり、体形はやや側扁し横から見ると綺麗な紡錘形。背ビレは前部と後部が分かれず連続し、棘条は13~14本、軟条は16~18本。尾ビレは緩いV字型。
成魚の体色は顔のあたりはオリーブグリーンが混じった褐色で背は褐色、腹は黄色味を帯びているものからいぶし銀のような色合いのもまで個体差がある。
背ビレをはじめ、胸ビレ、腹ビレ、臀(しり)ビレは黄色味が強く、尾鰭は赤みを帯びた褐色。
◆イサキの幼魚
イサキは30cmほどの一人前になるのに3~4年かかるとされ、そうなるまでの幼魚は、体側の上半分にエラブタの後ろから尾にかけて黄色い3本の縦縞がある。これはさらに成長すると消えていくが、これがイノシシの場合とよく似ていることから、この幼魚の事を産地によっては「ウリボウ」や「ウリンボウ」「イノコ」などと呼ぶ。
●イサキの主な産地と旬
◆主な産地と生産量
政府がまとめた平成27年の漁獲量を見ると、長崎県が最も多く、全国の3割近くを占めている。次いで多いのは福岡県、山口県。
◆ブランドイサキ
値賀咲(ちかさき)
長崎県の五島列島北部、宇久島・小値賀島周辺で獲られた瀬付きのイサキで、「値賀咲」として出荷されるものは、一匹一匹撒き餌を使わずに手釣りし、丁寧に活 け〆を行うなど、品質には細心の注意が払われているとされ、外見、鮮度が良いことはもちろん、身がしっかりと締まり、撒き餌を使用しないので生臭みが非常に少ないのが特徴とされている。
名称には小値賀島の「値賀」と未来が明るく「咲く」ようにと願いが込められている。
紀州いさぎ
潮流れの速い紀州灘で獲られたイサキで、周年を通して手釣りにより漁獲され、活かしたまま田辺漁港に持ち帰り、水揚げ直前に1尾1尾活け締めされ、状態の良い高鮮度なイサキのみ紀州いさぎとして出荷される。
◆イサキの漁獲時期と旬
イサキはほぼ通年市場には入荷されている魚だが、6月頃から9月頃にかけての夏が産卵期にあたる。
最も美味しい旬の時期はこの産卵期と重なり、初夏の5月頃から7月頃までの梅雨頃とされ「麦わらイサキ」、「梅雨イサキ」などとよばれている。また、産卵後の秋から春にかけては、脂ののりが悪く、美味しい時期のものとの差がかなりある。
●イサキの旬カレンダー
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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イサキ |
< 出 典 >
※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部
※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会
※「食材魚貝大百科」平凡社
※「旬の食材- 夏の食材」 -講談社
※FishBase Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus