アミメノコギリガザミ：生態や特徴と産地や旬

●アミメノコギリガザミの生態や特徴

◆アミメノコギリガザミとは

分類：ホンエビ上目 ＞ 十脚目 ＞ 抱卵亜目 ＞ 短尾下目 ＞ ガザミ／ワタリガニ上科 ＞ ガザミ／ワタリガニ科 ＞ ガザミ亜科 ＞ ノコギリガザミ属（BISMaLより）

学名：Scylla serrata (Forskål, 1775)

和名：あみめのこぎりがざみ／網目鋸蝤蛑

英名：Mud crab、Mangrove crab

別名：ドウマンガニ／胴満蟹（愛知県）、エガニ（高知県）

　「アミメノコギリガザミ」はガザミと同じワタリガニ科に分類される大型のカニでノコギリガザミ属を構成する。ノコギリガザミ属は国内には「トゲノコギリガザミ」や「アカテコギリガザミ」なども生息するが、それらとの差異が小さく、近年まで「ノコギリガザミ」”Scylla serrata” として同一視されてきた。（「原色日本大型甲殻類図鑑Ⅱ」でもそう扱われている）特にトゲノコギリガザミとアミメノコギリガザミはとても良く似ており、生息域や形状など現在もそれらの差異に関して研究が進められている。

　中国や台湾、東南アジアあたりでは重要な食用蟹として養殖も行われている。特にハサミ脚が大きいのが特徴で、国内ではその大きさと獲れる数が少ないことから非常に高価なカニとなっている。アミメノコギリガザミとトゲノコギリガザミは姿や大きさだけでなく味わいも同じと思っていいだろう。いずれも旨味として感じる甘味がとても強く、濃厚な味わいで実に旨い。

　愛知県をはじめ東京市場では「どうまん蟹」と呼ばれている他、高知県では「エガニ」と呼ばれている。英語圏ではMud crab（マッドクラブ）やMangrove crab（マングローブクラブ）と呼ばれている。

◆アミメノコギリガザミの生態

　「アミメノコギリガザミ」は房総半島以南から東南アジア、オーストラリア、インド洋西部に広く分布する暖海性のカニで、内湾から河口付近に多く、熱帯地域ではマングローブが地帯に多く生息することから「マングローブクラブ」と呼ばれている。

　生きている様子を撮った動画はこちら

　「原色日本大型甲殻類図鑑Ⅱ」によると日本近海での分布は沖縄・八重山列島をはじめ、八代海・有明海・土佐湾、南紀南部、紀伊長島、伊豆下田、相模湾、利根川河口沿岸さんの記録があるとされ、海外では温度西太平洋、ハワイ諸島沿岸に広く生息するとある。ただし、ここでは「アミメノコギリガザミ」他「トゲノコギリガザミ」や「アカテコギリガザミ」の3種をひとくくりに「ノコギリガザミ」として扱われている。

◆アミメノコギリガザミの特徴

　「アミメノコギリガザミ」はガザミ類の中では最大種で、大型のものは甲幅が20cmを超え、2kg以上にもなる。写真は甲幅約17.5cmで1,468gの雄。

　甲の形はガザミのように左右の張り出しはなく楕円形に近く、全縁には左右9対の歯があり、眼孔上縁との間に顕著な切れ込みが入っている。額縁には４歯が並び、外縁の９対の歯と眼上の１歯、それに額縁の4歯合わせ、左右12歯が並んでいる。

　甲背の色は全体に灰緑から暗緑色で、腹は白く、ハサミ脚の腹側はオレンジ色。写真は雄で、ハサミが大きく、腹のハカマの部分の幅が狭い。

　額縁の４歯は3種で形状にわずかな違いがみられ、「トゲノコギリガザミ」はほぼ正三角形が4つ並ぶのに対し、「アミメノコギりガザミ」は長く尖った二等辺三角形に近く、「アカテノコギリガザミ」は半円ないし低い三角形が並ぶ。（写真のアミメノコギリガザミは脱皮間近で甲羅がかなり摩耗してしまっているので分かりにくい）

　「アミメノコギりガザミ」の大きな特徴は、歩脚全てに明瞭な網目模様が見られることである。「トゲノコギリガザミ」は後方のへら状の脚には網目があるが、それ以外の歩脚は不明瞭になっている。

　ノコギリガザミ類の最大の特徴は強大なハサミ脚で、貝の殻を割る力がある。

●アミメノコギリガザミの主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

　アミメノコギリガザミは沖縄をはじめ、高知県、愛知県など。漁獲量はとても少なく、大きめのものは小売価格で１杯１万円ほどになる。

◆アミメノコギリガザミの漁獲時期と旬

　オスとメスで旬の時期が違い、オスは夏に漁獲が多く、メスは秋から冬にかけては内子をもったメスが旬となる。ただ、夏は脱皮のシーズンでもあり、ブク（脱皮して間がない柔らかいカニ）に注意が必要。

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＜ 出　典 ＞

　※「原色日本大型甲殻類図鑑Ⅱ」三宅貞祥著　保育社　（昭和58年初版、平成10年第三版発行）p.80

　※「食材魚貝大百科①」平凡社 p.047

　※　Scylla serrata　SeaLifeBase