ベニズワイガニ/紅ガニ/香住ガニ:生態や特徴と産地と旬
●ベニズワイガニ/紅ガニの生態と特徴
◆紅ズワイガニとは
分類:甲殻亜門 > 軟甲綱 > 真軟甲亜綱 > ホンエビ上目 > 十脚目 > 抱卵亜目 > 短尾下目 > クモガニ上科 > ケセンガニ科 > ズワイガニ属
学名:Chionoecetes japonicus Rathbun, 1932
英語:Red snow crab,Red tanner crab
ベニズワイガニは松葉ガニでも知られるズワイガニと同じケセンガニ科ズワイガニ属の一種で、主に山陰以北の日本海と銚子以北の太平洋に分布し、ズワイガニよりも深い、水深1000~2000mを中心に400~2700mの深海に生息しています。
ベニズワイガニの先祖はズワイガニとされ、氷河期に日本海に移動したズワイガニが、氷河期の終わりとともに取り残され深場で生き延び、環境に適応した種に変化していったと考えられています。
ベニズワイガニが生息する深海は水温0.5~1.0度程度と低く、年間を通して変化がほとんどない事などから、成長するのに時間がかかり、成熟するまで6~7年もかかるとされています。
また、メスの抱卵期間は2年間と長く、隔年でしか産卵しないことなどもあって資源保護の観点からメスは全面禁漁とされています。
◆ズワイガニとの交雑種も
水深200~600mを中心に生息するズワイガニに対し、ベニズワイガニは水深400~2700mのですが、両方が混じる水深のところでは交雑種もいて、両方の良い特徴を併せ持ち、希少性と食味の良さから「黄金ガニ」などともよばれています。この交雑種は言わばF1種と呼ばれる一代雑種なので生殖能力がない場合が多いそうです。
◆紅ズワイガニの特徴
ベニズワイガニの大きさはズワイガニとほぼ同じですが、殻がズワイガニに比べ生きている状態から茹でたように赤くやや薄いのが特徴です。
色は甲羅や手足の上面だけでなく、裏側も同じように赤く、キチンとキトサンの原料として利用されています。
ズワイガニと比べ身に水分が多く、鮮度落ちが早いことや、水分が多いせいで冷凍解凍した時に水分が流失し食味が著しく落ちてしまいます。
ズワイガニによくみられる甲羅に付いたカニビルの卵はベニズワイガニにも稀ですが付いていることがあります。
◆コストパフォーマンスに優れたベニズワイガニ/紅ガニ
身がしっかりと詰まったズワイガニは確かに美味しいですが、その価格は一般庶民が気軽に食べられるものではありません。それに対しベニズワイガニは確かに水分は多いのですが、鮮度がよく冷凍されていないものはズワイガニと同等かそれ以上に濃厚なカニ味噌が詰まっており、足も水分が多く柔らかいとはいえズワイガニよりも甘味が強く、しかも甲羅が薄く身が取り出しやすいという特徴があります。そして、その価格はズワイガニの10分の1か、せいぜい5分の1程ととてもコストパフォーマンスが優れていると感じます。
●紅ズワイガニの主な産地と漁期や旬
◆主な産地と生産量
主な産地は山陰地方の鳥取県をはじめ島根県や兵庫県、次いで北陸や新潟、北海道などです。
政府がまとめた平成27年産の漁獲量を見ると、最も多いのは鳥取県で、主な水揚げ港は境港です。この政府のデータでは鳥取県の合計で3,977トンとなっていますが、鳥取県のホームページによるとこの年に境港に水揚げされた漁獲量は8,385トンとなっており、なぜか大きな違いがあります。これは両県は隣接し、両漁協が提携していることから、島根県の分もここで水揚げされているということなのかもしれません。
◆香住ガニ
兵庫県ではベニズワイガニは香住漁港にしか水揚げはされていないことから、「香住ガニ」とも呼ばれています。この「香住ガニ」のブランド化がすすめられ、品質が良いものには「香住ガニ」の名称と、漁獲した漁船の名前が印字された白いタグが付けられています。
◆紅ズワイガニの漁獲時期
ベニズワイガニもズワイガニ同様、資源保護のため各地でサイズの規制や禁漁期が設定されています。主な産地の漁期を下記の表にまとめています。また、全国一律にベニズワイガニのメスは捕獲禁止となっており、市場はおろか産地でも目にすることはできません。
産地 | 漁期 | 禁漁期間 |
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堺港(鳥取) | 9月~6月 | 7月・8月 |
香住(兵庫) | 9月~5月 | 6月・7月・8月 |
新湊(富山) | 9月~5月 | 6月・7月・8月 |
新潟県・石川県 | 3月~12月 | 1月・2月 |
北海道(茂津多岬以北) | 7月~4月 | 5月・6月 |
北海道(茂津多岬以南) | 4月~8月 | 9月~3月 |
◆紅ズワイガニの旬
ベニズワイガニは年間を通して生息域の水温に変化がないことから、特に味が良くなったり落ちたりする季節はないようです。また、産地によって漁期にずれがあるため、結果的に1年を通して流通しています。
そういう意味では、産地での漁獲最盛期が旬ということになり、新潟県と石川県が夏場に最盛期を迎える以外、他の産地では12月から1月頃が最盛期となる旬になります。ただ、11月から1月末まではズワイガニの旬にあたるので、その前後がベニズワイガニの旬という考え型もあります。
また、ベニズワイガニは鮮度落ちが早いということから、気温が低い冬場が流通の観点から適しているともいわれています。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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山陰・富山 | ||||||||||||
新潟・石川 | ||||||||||||
北海道(茂津多岬以北) | ||||||||||||
北海道(茂津多岬以南) |