ノコギリガザミ類:目利きと料理
ドウマン蟹とも呼ばれるトゲノコギリガザミやアミメノコギリガザミなどノコギリガザミ類を選ぶ際のポイント、目利きや見分け方をはじめ、蒸し方、茹で方、さばき方、そして美味しい食べ方などを沢山の写真と共に紹介します。
●ノコギリガザミ類の目利きと調理のポイント
◆基本的に生きているもの
トゲノコギリガザミやアミメノコギリガザミなどに限ったことではないが、カニは基本的に生きているものを買う。カニは死後はもちろん、死にかけているときから酵素が活性化し自己消化を始めてしまうため、元気なものを選ぶこと。そうでなければ生きているうちに茹でられたものか、急速冷凍されたものにする。
◆ブクを避ける
コギリガザミ類は何度か脱皮を繰り返し大きくなっていきます。脱皮したてのカニは甲羅が柔らかく、産地ではブクと呼ばれ敬遠されている。その理由は脱皮によるエネルギーの消費で中の身が痩せているからだ。ただ、中国や台湾、アメリカなどではこういう柔らかい物をソフトシェルクラブとして揚げ物などで殻ごと食べる文化もある。
身の味わいを求めるのであればブクは避けたいところだ。触ってみて甲が柔らかくないか確認しよう。また、硬くても腹が真っ白でハサミなどもやけに綺麗なものは脱皮してまだ日にちが経っていない場合が多いので要注意だ。上の写真の個体は腹側もかなり色がついており、ハサミの腕の棘もすり減って丸くなってしまっている。蒸してみたところ、脱皮間近だったようで、それも身詰まりの点ではややマイナスだ。
◆オスとメス
オスとメスは腹のハカマの形をみれば誰でも見分けられる。
オスは大きなハサミの身や肩にもびっしりと身が詰まっていて、ミソもあるが主に身の美味しさが魅力である。一方旬のメスは内子を持っており、これの濃厚な味わいが楽しめる。
◆大きなハサミに要注意
基本的に蒸すか茹でるなど加熱調理して食べる。通常大きなハサミは縛られて販売されていると思うが、縛られていないものはくれぐれも指など挟まれないように注意が必要。挟まれてしまったらただでは済まない。
●ノコギリガザミの蒸し方・茹で方
ノコギリガザミは蒸すだけで美味しい。茹でるよりもお勧め。蒸す場合は塩水を使わないので、なべにカニのエキスが出た煮汁を味噌汁などに使うことができます。
◆ノコギリガザミを仮死状態にする
ノコギリガザミは活きているものを蒸すが、元気があって動くものはそのまま蒸すと脚を自切してしまうことが多いの。そうならないようにノコギリガザミを仮死状態にする。方法は簡単で、ノコギリガザミが浸けられる大きめのボールか鍋に水(真水でもOK)を張り、たっぷりの氷を入れた冷水にして、その中にノコギリガザミを15分ほど浸け、手足が完全に動かなくなった仮死状態のものを蒸します。
◆蒸す準備
ノコギリガザミが入る大きめのフライパンか鍋を用意し、数cm水を張り火にかける。
沸騰したら上げ底にする網を入れ、その上にカニを背を下にして置き、蓋をして蒸します。時間は大きさによって20~25分ほどです。
蒸しあがったトゲノコギロガザミは全体に見事な朱色に変わります。
◆茹でる方法
茹でる場合のノコギリガザミは蒸すときと同じように仮死状態にしておきます。
ノコギリガザミが入る大きくて深い鍋を用意し、カニが浸かる程度の水を張り、1Lに対し20~30gの塩を加え、沸騰させます。
沸騰したらノコギリガザミを背を下にして入れ茹でます。時間は大きさによって20~25分ほどです。
ゆで汁はカニのエキスが出ていますが、塩度が強すぎるので料理には使えません。
●ノコギリガザミを味わう
ノコギリガザミは通常蒸すか茹でて食べます。そうして火を通した身をそのまま食べるか、身をほぐして色々な料理に使います。
◆ノコギリガザミのさばき方
腹側のフンドシをはがしもぎ取る。
甲羅を下にして、甲羅のフンドシがついていた側を押さえながら、脚が付いている胴の部分ンい指をかけて引きはがすように持ち上げて甲羅をはがす。甲羅に付いたミソがこぼれないように注意。
胴に付いているガニ(エラの部分)を指で取り除く。
歩脚を胴から切断する。
胴を縦に半分に切り、更にそれを切断面の真ん中から半分に切る。
歩脚を包丁で食べやすく半割にする。
ハサミの部分は硬くて包丁では切れないので、木槌などで身を潰さないように力加減しながら叩き割る。
後は身を取り出すだけ。
◆蒸したノコギリガザミをむさぼる
トゲノコギリガザミはガザミなど他の渡り蟹に比べ大きく、ハサミや肩の部分の身もたっぷり詰まっています。写真は875gのトゲノコギリガザミ。
カニの身を色々な料理に使う手もありますが、ノコギリガザミは高価で、また見た目が豪快なのでそのまま身をむさぼるように食べる方がこのカニには似合うように思います。
カニミソも入っていますが、比較的味はあっさりめで、味噌よりも身の味わいが美味しい。
身はとても甘みが強く、ふくよかでコクがあり高値で取引されるだけの値打ちが感じられます。
下の写真は1,468gの大きなアミメノコギリガザミを蒸したもの。ハサミの部分だけでもかなり大きく一口では入りきらず、食べ応えがあります。
●ノコギリガザミの歩留まり
◆一般的なカニの歩留まり
基本的にカニ類は歩留まりが良い食材とは言えません。日本食品標準成分表でいろいろなカニ類の歩留まりをみると、ズワイガニの廃棄率は生の場合70%にもなり、茹でたもので55%となっています。毛ガニは生だとやはり70%で、茹でたものは60%です。
そして、ノコギリガザミの近縁種であるガザミは生の場合65%となっていました。さて、ノコギリガザミの歩留まり、廃棄率はどれくらいなのでしょう。
◆実際に軽量してみた廃棄率
今回生きた状態で1,468gの大きなアミメノコギリガザミを実際に蒸しあげた状態と廃棄したものを計量してみました。
生の状態で1,468g。もちろんバットを乗せて0gに合わせてから計量しています。
そして蒸しあがった状態は1,209gでした。蒸すことで約260gの水分が抜けたことになります。
ノコギリガザミを解体し、身を食べつくしてから、エラやブヨブヨした部分なども含め殻など廃棄した部分を計量したら740.5gでした。
結果、1,468g→1,209g→740.5gで、可食部は468.5gでした。1.5キロ近い大きなカニでしたが、食べられたのは468.5gとやはり歩留まりはかなり悪いですね。
茹でたノコギリガザミの廃棄率 約61%
生きたノコギリガザミの重量に対し、食べることができた蒸し身の重量比は約32%でした。