ツクシトビウオ:生態や特徴と産地や旬
●ツクシトビウオの生態や特徴
◆ツクシトビウオとは
分類:魚類 > 条鰭綱 > ダツ目 > トビウオ科 > Cypselurinae > ハマトビウオ属(日本海洋データセンターより)
学名:Cypselurus doederleinii (Steindachner, 1887)
シノニム:Cheilopogon heterurus doederleini (Steindachner, 1887)
和名:つくしとびうお/筑紫飛魚
英名:Japanese flyingfish
別名:カクトビ(角飛)、ナツトビ(夏とび)、アゴ、大目(オオメ/ダイメ)
「ツクシトビウオ」は「ハマトビウオ」とよく似ており、近縁種であることは間違いがないであろう。両者とも胴の部分の断面が四角く角ばっていることから、「角とび」と呼ばれている。
また、本種は夏に群れを成して回遊してくることから「夏とび」とも呼ばれている。
一般のスーパーなどに鮮魚として安く売られているものの多くは本種である。鮮度が良い物は刺身などで美味しく食べられる。
学名の”doederleinii ”はドイツの動物学者でシュトラスブルグ大学教授、ルードビッヒ・デーデルライン氏に因む。1879年に2年間来日し大学でドイツ語を教えながら海産動物の採集と研究をおこなったとある。
「ツクシトビウオ」はトビウオ科”Cypselurus(ハマトビウオ属)”とされているが、トビウオ類の分類に関してはこの”Cypselurus(ハマトビウオ属)”と”Cheilopogon”属どちらにするのか文献によって分かれるところで、従来は本種も「ハマトビウオ」も”Cypselurus(ハマトビウオ属)”とされてきたたのが、「ハマトビウオ」は”Cheilopogon”属に分類すべきという説が強くなってきているようだ。そうなると”Cypselurus”=ハマトビウオ属に「ハマトビウオ」が含まれず、日本の属名に違和感が出来てしまう。一方、本種「ツクシトビウオ」にもシノニムでは”Cheilopogon”属とするものがあり、Wikipediaでは”Cheilopogon”=ツクシトビウオ属と属名がつけられている。
◆ツクシトビウオの生態
「ツクシトビウオ」は北海道南以南の全国の各地の沿岸表層を群れで回遊してくる。主に動物性プランクトンを食べている。
少しでも長時間水中から飛び出していることで敵から身を守るのだが、身を軽くする必要に適応しトビウオには胃らしい部分がなく直線的な短い消化器官しか持たない。
産卵期は5~7月にかけて、雄が先に接岸し、雌は後から産卵しに接岸し、終えるとすぐにまた沖に戻る。産卵は数回に分けて行われ、雌はこれを繰り返すようである。
「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は北海道石狩湾〜九州西岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道臼尻〜仙台湾の太平洋沿岸、房総半島東岸〜屋久島の太平洋沿岸とされ、海外では朝鮮半島南岸及びピーター大帝湾(稀)に分布する。
◆ツクシトビウオの特徴
「ツクシトビウオ」は全長35cmほどになるトビウオで、吻の先はやや尖っており、胴の部分は腹が角ばっていて断面が四角いのが特徴で、「角とび」と呼ばれる所以となっている。
胸ビレは暗色を帯びた半透明で一部に透明体があり、また、胸ビレの先端は背ビレ基底後端を越えるほど長いのが特徴。
「ホソトビウオ」に似るが、「ホソトビウオ」は胸ビレが少し短く臀ビレ基底後端に達しないこと、眼がやや小さいこと、そして第1鰓弓下枝の鰓耙数が「ツクシトビウオ」が15~18なのに対し19~24と多いことで見分けられる。
同じく「角とび」と呼ばれる「ハマトビウオ」とは獲れる時期や大きさが違う事でもおおむね判別できるが、「ツクシトビウオ」の側線鱗数は52~57(「ハマトビウオ」は61~68)、背ビレ前方鱗数30~35(「ハマトビウオ」は40~47)と明確に違うので一目瞭然である。
仔魚から幼魚にかけては随分と色味や様子に違いがあり、18mmほどになると下アゴに1対のヒゲ状突起が現れ、成長と共に眼の後方辺りまで伸びるが、10cm程まで成長すると消失する。幼魚のうちは胸ビレをはじめ、背ビレ、腹ビレも黒く、胸ビレと腹ビレには明瞭な透明帯がある。
●ツクシトビウオの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
「ツクシトビウオ」は初夏から夏にかけて全国各地の沿岸で沢山漁獲され、一般のスーパーなどへも広く出荷されている。鮮魚として流通するトビウオの中では最も多い。
主な産地は北陸から九州にかけての日本海沿岸各地。福井県ではプライドフィッシュに指定されている。
◆ツクシトビウオの漁獲時期と旬
「ツクシトビウオ」は初夏に産卵のため各地の沿岸に群れで押し寄せ、それらが定置網等でもまとまって漁獲され、盛漁期となる。
こうして「ツクシトビウオ」がまとまって漁獲され、沢山市場に出回るのは5~8月までで、旬は6~7月。
旬のカレンダー | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | ||||||||
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ツクシトビウオ |
●トビウオ科の魚
< 出 典 >
※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部
※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会
※「食材魚貝大百科」平凡社
※「旬の食材- 夏の食材」 -講談社
※「九州北西岸におけるツクシトビウオの成熟と産卵 」日本水産学会誌/65 巻 (1999) 4 号 p. 680-688 一丸 俊雄, 中園 明信
※「珍魚採集報告第94号 ツクシトビウオ幼魚」 東京都島しょ農林水産総合センターホームページ
※ 「日本大百科全書(ニッポニカ)」 小学館