アカムツ/ノドグロ/ノドクロ:生態や特徴と産地や旬
●生態や特徴
◆アカムツ/ノドグロとは
分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > ホタルジャコ科 > Doderleiniinae > アカムツ属(BISMaLより)
学名:Doederleinia berycoides (Hilgendorf, 1879)
和名:あかむつ(赤鯥)
英名:Blackthroat seaperch
別名:ノドグロ/ノドクロ (喉黒)
アカムツは和名に「~ムツ」と付きますが、ムツなどを含むムツ科ではなくホタルジャコ科アカムツ属の一種で、「東のキチジ(キンキ)、西のアカムツ(ノドグロ)」といわれる超高級魚として人気がある魚です。季節を問わず脂が乗っており「白身のトロ」とも言われています。
学名の”berycoides”は『キンメダイ(beryx)に似たもの』を意味するラテン語に因む。
◆アカムツ/ノドグロの生態
アカムツは北海道辺りからオーストラリア北部にかけての西太平洋、東シナ海に分布し、日本では主に日本海沿岸域と東北辺りから南の太平洋沿岸域に分布し、特に新潟県辺りから長崎県辺りまでの日本海側で多く漁獲されています。
生息している水深は海域にもよりますが100~200mとされ、東シナ海の大陸棚斜面では350~400mにも生息しているようです。(東シナ海漁業資源部底魚生態研究室資料より)
アカムツは岩礁の傍にもいますが、砂泥底を好み、大きな口と鋭い歯で小魚や甲殻類などを捕食しています。
「日本産魚類検索全種の同定第三版」によるとアカムツは水深60メートル〜600mの大陸棚及びその斜面に生息し、日本近海での分布は
青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、北海道〜九州南岸の太平洋沿岸、東シナ海大陸棚〜斜面域、大東諸島近海とされ、海外においては朝鮮半島南岸、済州島、山東半島、浙江省、台湾、フィリピン諸島、インドネシア、オーストラリア北西岸に分布するとあります。
◆アカムツ/ノドグロの特徴
アカムツは大きいものだと50cmを超えるものもいるそうですが、市場に出回る大きさは大きいもので35~40cm程。また、20cm前後のものも多い。
体形は正面から見ると縦長の楕円形で、目が大きく、黒目の周りが赤い個体が多い。
体色は全体に赤みを帯び、生息域によって背が鮮やかな濃い紅色の物から、薄紅色のものまであります。ウロコは櫛鱗(しつりん)と呼ばれる縁にギザギザがあるタイプで、アカムツを持った時にざらついた感じがします。
ヒレは全て紅色から淡い薄紅色で、口は大きく、小さいが鋭い歯が並んでいます。また、名前の由来になっているように、口の中を覗くと奥が真っ黒なのが分かります。
産卵期は7月頃から10月頃にかけてで、寿命は雄が5年程、雌はそれより長く10年程とされています。
●稚魚の放流始まる
2013(平成25)年に富山県水産研究所が新潟市水族館「マリンピア日本海」などとの共同研究で、人工授精で生まれた稚魚の育成に成功しました。その後稚魚がある程度大きく育つまでの環境が研究され、2017(平成29)年2月には5・5万匹の本格的な放流がスタートしました。放流されるたのは体長約5センチ程だそうですが、約4年後には約25センチ程の漁獲対象サイズに成長するそうです。おいしいノドクロが安定して食べられるようになるといいですね。
●クロムツとアカムツ
アカムツとよく似た魚に「クロムツ」や「本ムツ」などがありますが、一見アカムツの黒いバージョンのように見えて実は別のグループになり、あちらの方が「ムツ」という仲間では本家筋に当たります。
どちらも味的には似ており、北陸では「白身のトロ」と言われるようにとても脂分が多く、刺身でもとろけるような舌触りを感じることができます。この「ムツ」という名前も、その脂っぽさを表現する『むつっこい』『むつい』という言葉からつけられたそうです。
●アカムツ/ノドグロの主な産地と旬
◆主な産地
アカムツは太平洋側よりも日本海側で多く獲れ、富山や福井などの北陸から島根など山陰地方の特産として有名です。これらの地方では「ノドクロ」あるいは「ノドグロ」と呼ばれています。
島根県では8月から翌年5月までに漁獲された80g以上の新鮮なノドグロを「どんちっちノドグロ」としてブランド化されています。
また、長崎県では対馬市上県町の上県漁業協同組合が、はえ縄で獲れた釣り物を平成17年度から「紅瞳」というブランドで出荷しており、その質の良さから高値で取引されています。
近年は韓国からの輸入ものも多く、スーパーにも韓国産のものが並んでいるのを見かけます。
●産卵期
アカムツは7月頃から10月頃にかけて産卵期になると言われています。
●美味しい旬の時期
アカムツは一年を通して脂が乗っていて美味しいと感じる魚です。それ故か、最も美味しいとされる時期には諸説あり、晩秋から冬が最も美味しいという説や、産卵前の夏7月から8月が最も美味しとする説など真逆で存在します。
通年それなりに美味しいので、その時期その時期に合った料理で楽しめる魚ではないでしょうか。私としては、シンプルに塩焼きや鍋にするなら冬の12月から2月頃がお勧めで、刺身や握りにするなら春から初夏の物が美味しいと感じます。
また、子持ちの煮付けは7月から9月頃の物で、これも濃厚な旨みを堪能できる旬と言えます。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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アカムツ(ノドクロ) | ||||||||||||
ムツコ |
< 出 典 >
※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 P.152
※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会 p.751
※「食材魚貝大百科②」平凡社 P.136
※「旬の食材- 冬の食材」 -講談社 P.40
※ Doederleinia berycoides FishBase