ホテイウオ(ゴッコ):生態や特徴と産地や旬
●ホテイウオの生態や特徴
◆ホテイウオとは
分類:魚類 > 条鰭綱 > カサゴ目 > カジカ亜目 > ダンゴウオ科 > ホテイウオ属(日本海洋データセンター BISMaLより)
学名:Aptocyclus ventricosus (Pallas, 1769)
和名:ほていおう/布袋魚
英名:Smooth lumpsucker
別名:ゴッコ
ホテイウオはダンゴウオ科の一種で、北海道の冬の郷土料理「ゴッコ汁」に使われる魚として知られ、一般には「ゴッコ」と呼ばれている。
冬に産卵のために沿岸に寄ってきたところを漁獲され、メスの腹には驚くほど沢山の卵が詰まっていてこの卵が珍重されるため、オスよりも卵が詰まったメスの方が高値で取引されている。
見た目はヌルヌルでブヨブヨしており、愛嬌のある顔つきでなんともキモ可愛い魚だ。和名は丸くふっくらとした姿かたちが七福神の一神「布袋様」を思わせることに因む。
学名の属名”Aptocyclus”は『結びつける』という意味のギリシャ語”haptõ”と『円』または『輪』を意味するギリシャ語”kyklos”からなり、種小名”ventricosus”はラテン語で『大きな腹の』を表している。(※1)
◆ホテイウオの生態
ホテイウオは沖合の表層から水深1700mの深海にまで分布し、漂うように泳ぎながらウリクラゲなどを食べ、沿岸ではヨコエビ類を食べている。
孵化から3年ほどで成熟し冬に産卵のために接岸するが、その際、胸に付いている大きな吸盤で岩場に張り付く。2~3月になると岩礁のくぼみや海藻の脇などにオスが陣取り、そこにメスが直径2.4mmほどの卵を数万の塊で産卵する。メスは産卵後死んでしまう。オスはその卵が孵化するころまでの間ずっと守り続け、卵が孵化する頃にはオスもその一生を終える。
「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は北海道前縁岸、青森県~島根県隠岐の日本海沿岸、大和堆、対馬、青森県~千葉県銚子の太平洋沿岸とされ、海外ではベーリング海西部、ブリティッシュコロンビア州沿岸となっている。(※2)
◆ホテイウオの特徴
ホテイウオは標準体長25cmほど、全長40cmほどになる。体形はオタマジャクシに似た、腹が丸く膨らみ、第2背ビレと尻ビレの基部前方から尾柄にかけては側扁し体全体に対して細くなっている。
ホテイウオは第一背ビレが完全に皮下に埋没し見えないのが特徴で、背ビレがある近縁種の他のダンゴウオ科とは一目瞭然である。
体表にウロコはなくぬめりがあり、体全体がぶよぶよしている。
左右の胸ビレの間に大きな吸盤があるが、これは腹ビレが進化したものだという。仔魚の時から吸盤は発達し、海藻や岩などにくっついて流されないようにしている。
ホテイウオを真上からと真下から撮った写真を見るとオタマジャクシのようである。上がメスで下がオスだが、写真では分かりにくいが、通常産卵が近づくと『雌がはっきりした青黒色なのに対し、雄はくすんだ茶色で、さらに胸びれや吸盤が大きくなり両顎の歯が鋭くなるなどの二次性徴がみられる』(※3)とある。確かにオスの方が体に対して吸盤が大きく胸ビレも発達しているのはわかる。これはメスの産卵後、孵化するまでの間岩に張り付いて卵を守り、新鮮な水を送るためなのだろう。
●ホテイウオの主な産地と旬
◆ホテイウオの主な産地と漁獲量
ホテイウオは産卵のため接岸してきたところを刺し網や定置網で漁獲される。主な産地は北海道である。
◆ホテイウオの漁獲時期と旬
漁獲は12月頃から始まり4月頃までとなっているが、旬は産卵が近く、卵巣が発達する1~2月である。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ホテイウオ |
< 出 典 >
※1「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部
※2「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会
※「食材魚貝大百科」平凡社
※「旬の食材- 夏の食材」 -講談社
※ Aptocyclus ventricosus FishBase
※ Aptocyclus ventricosus World Register of Marine Species (WoRMS)
※3 「ホテイウオ[布袋魚]」北海道水産林務部水産局水産経営課 ホームページ