セミホウボウ:生態や特徴と産地や旬

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

●セミホウボウの生態や特徴

◆セミホウボウとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > カサゴ目 > セミホウボウ亜目 > セミホウボウ科 > セミホウボウ属(日本海洋データセンターより)

学名:Dactyloptena orientalis (Cuvier, 1829)

和名:せみほうぼう/蝉魴鮄

英名:Oriental flying gurnard、Helmet gurnard

別名:イソトビ、ソコトビ、ツバクロ

 なんとも魚らしからぬ容姿だが、セミホウボウは一見ホウボウと似ていて、名に「ホウボウ」とつくが、カサゴ目ホウボウ科ではなく、カサゴ目セミホウボウ科に分類される魚で世界で2属7種いるとされ、日本近海にはそのうち1属4種、セミホウボウをはじめ、ホシセミホウボウ、オキセミホウボウ、トンガリセミホウボウが分布している。

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

 また、セミホウボウの特徴は独特なため、カサゴ目ではなく独立したセミホウボウ目とする考え方もある。

 和名はホウボウに似るが、ずんぐりとした胴体に羽のような胸ビレが付いている姿を上から見ると蝉(せみ)に似ているから・・・だと思う。

 属名の”Dactyloptena”は『指』を表すギリシャ語”daktylos”と『翼のある』という意味の”ptēnos”からなる。種小名”orientalis”は『東洋の』という意味でその分布域に因む(「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著)

 地方名では「イソトビ」や「ソコトビ」などとも呼ばれるが、これは胸ビレを広げて泳ぐ姿が空を滑空しているように見えるからだと考えられ、英名でも”flying gurnard”(飛ぶホウボウ)と呼ばれている。また、硬い頭部の様子に因んだ英名”Helmet gurnard”(ヘルメット・ホウボウ)というのもあり面白い。

 この魚は食用にもなるのだが、まとまった数が獲れず、よく似たホウボウほど味がいいわけでもないため大きな市場に出荷されることはほとんどなく、ほぼ産地で消費される地魚である。とはいっても味は悪くない。

◆セミホウボウの生態

 セミホウボウはかなり浅い所から水深100mより深いところにまで生息し沿岸の岩礁域周辺の砂泥底で甲殻類をはじめゴカイなど底生の多毛類、小魚などの小動物を捕食する。

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

 海底で餌を探すときなどは腹ビレを使い這うように動き、遊泳するときは大きな胸ビレを翼のように広げ海底を滑空するように泳ぐ。

 ホウボウに似るが、ホウボウは胸鰭の一部が変化した遊離軟条を使って這うように移動するがセミホウボウはこれを使わない。

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は渡島半島西岸、青森県八戸、宮城県南三陸、新潟県〜九州南岸の日本海、東シナ海沿岸、千葉県銚子〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、東シナ海大陸棚域、沖縄島、小笠原諸島となっている。また、海外においては朝鮮半島南岸、済州島、台湾、広東省、海南島、インドー西太平洋(紅海を含む)、フィジー諸島~ツアモツ諸島、ハワイ諸島に分布が確認されている。

◆セミホウボウの特徴

 セミホウボウは標準体長35cmほど(写真のものは30cmほど)で体形は少し縦扁し吻の部分があまり突き出ておらず、上顎から頭部は硬い骨盤で覆われている。

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

 体表のウロコは普通の魚のウロコのようにはがれるタイプではなく、爬虫類のウロコのように表皮と一体化しており、体側のウロコは1枚1枚の中央に隆起がありとても固い。

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

 背ビレは頭部付け根辺りに1本長く伸びた遊離棘(ゆうりきょく)と、その後ろの短い遊離棘(ゆうりきょく)1本、5本の棘条からなる背ビレと、また短い1本の遊離棘、そして7本の軟条からなる。

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

 写真のものは二本目の短い遊離棘に気付かず立てていないので分かりにくいが、よく見るともう一本たたまれているのがわかる。よく似た近縁種のホシセミホウボウにはこの2本目がなく見分けるポイントとなるので注意し無ければならない。

 33本の軟条からなる胸ビレはたたむとその後端は尾ビレの付け根まで達し、広げるととても大きい。前方の5-7本はホウボウと同じように遊離軟条となっている。

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

 体色は背面が赤褐色で腹側は白地に少し赤味が入っている。そして背面と胸ビレ、背ビレ棘条に暗色の水玉模様が付いている。

 尾に近い部分の体側下部には3~4対の大きく突き出るように発達したウロコが付いている。

セミホウボウの腹側から見た尾柄部

 近縁種のホシセミホウボウとは頭部後方についている遊離棘がセミホウボウは2本に対しホシセミホウボウは1本しかないので見分けられる。

 また、オキセミホウボウとは吻の形状が少し突き出ているセミホウボウに対しオキセミホウボウはほとんど出ていないことと、セミホウボウの臀(しり)ビレは7軟条で黒斑がありオキセミホウボウは6軟条で黒斑がないことで見分けられる。

●セミホウボウの主な産地と旬

セミホウボウ Dactyloptena orientalis

◆主な産地と漁獲量

 セミホウボウは温かい海域に多く、よく漁獲されるのは愛知県や高知県、鹿児島県など。

 ただ、本種を目的とした漁はなく、刺し網や底引き網などで混獲されるにすぎず、その数もとても少ない。

 産地では毎年時期になるとよく目にする魚ではあるが、さばきにくさや、その苦労に見合うほど味がいいわけでもないため産地の安い総菜魚となっている。

◆セミホウボウの漁獲時期と旬

 セミホウボウは釣りや底引き網などでほぼ通年漁獲はされているようで、美味しい旬の時期は不明。

 今回入手したのは三河一色さかな村で8月上旬だった。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
セミホウボウ                        

 
 

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