クロシビカマス:生態や特徴と産地や旬

クロシビカマス,スミヤキ,エンザラ,ナワキリ,Roudi escolar

●クロシビカマスの生態や特徴

◆クロシビカマスとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > 新鰭亜綱 > 真骨下綱 > 棘鰭上目 > スズキ目 > サバ亜目 > クロタチカマス科 > クロシボカマス属(日本海洋データセンターより)

学名:Promethichthys prometheus (Cuvier 1832)

和名:くろしびかます/黒鴟尾魳

英名:Roudi escolar 仏名:Escolier clair

別名:スミヤキ(旧標準和名)、エンザラ(南房総、神奈川)、ヨロリ(和歌山)、ナワキリ/縄切り(南大東島、伊豆大島)

 クロシビカマスは”カマス”と名に付くがよく知られるアカカマスなどのカマス科ではなく、カゴカマスなどと同じクロタチカマス科で、その中のクロシボカマス属に分類されている。

 クロタチカマス科の魚は深海にすむ物が多く、浮袋を持たないため体内に脂肪を多く含んでいるものが多い。中でもバラムツやアブラソコムツなどは人が食べた時に消化できないワックス成分を多量に含んでおり、食用としての販売が禁じられている。

 本種クロシビカマスは、房総以南の太平洋沿岸ではそう珍しい魚ではない。また、見かけは真っ黒で冴えないが脂をたっぷりと含んだ白身でとても美味しい魚である。しかし、一部の産地を除き、鮮魚としての評価はとても低く、大都市の市場にはほとんど出荷されていない。それは、この魚の骨の付き方に特徴があり、皮側から内向きに沢山の骨が付いているため、普通に三枚におろしても骨だらけで食べにくいからのようだ。

 相模湾周辺ではスミヤキとも呼ばれている。この「スミヤキ」という名称はかつて本種の標準和名とされていた。また、歯が鋭く網を噛みきることもあることから「アミキリ」とも呼ばれるほかエンザラ(南房総、神奈川)、ヨロリ(和歌山)など地方名も多い。

 学名の属名及び種名はいずれもギリシャ神話に登場する、天界の火を盗んで人類に与えたといわれる神、プロメーテウス(プロメテウス)を意味するがその由来は不明。

◆クロシビカマスの生態

 クロシビカマスは東太平洋を除いた世界中の温帯から熱帯の海に広く分布する魚で、大陸棚縁辺から斜面の水深100~750mの深海に生息し、夜間に中層辺りまで浮上し小魚をはじめイカなどの頭足類や甲殻類など小動物を捕食する。

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 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は福島県南部沖、相模湾〜九州南岸の大平洋沖、山陰・隠岐、東シナ海、天皇海山とされ、海外においてはインド-太平洋及び大西洋の暖海域に広く分布する。

◆クロシビカマスの特徴

 クロシビカマスは標準体長43cmほど、大きい物だと体長50cmほどになる(写真は全長53cm900gほど)。体はやや側扁し縦長で、アカカマスなどと同じように上下のアゴには鋭く長い歯が内向きに並んでいる。

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 背ビレは17~19+1棘からなる長い第1背ビレと18~20軟条の第2背ビレからなり、その第2背ビレは2棘15~18軟条の尻ビレと上下対をなし、それぞれの後方には2つの小離鰭が並ぶ。

 腹ビレは退化し1棘、もしくは1棘1軟条だがほとんど目立たない。

 側線は1本で、胸ビレ上方で強く湾曲する。

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 成魚の体色は「スミヤキ」という別名がつけられている通り全体に黒から黒紫でヒレも黒い。

 幼魚から若魚は体が全体に銀白色。

●クロシビカマスの主な産地と旬

◆クロシビカマスの主な産地と漁獲量

 クロシビカマスは沖での釣りをはじめ、定置網や底引き網などで漁獲されるが、漁獲されてもその多くが練り物などの加工用となっている。鮮魚として人気があるのは神奈川県、千葉県、静岡県、伊豆諸島、沖縄など。

◆クロシビカマスの漁獲時期と旬

 クロシビカマスは通年漁獲はされているようです。クロシビカマス科の産卵期に関してはまだまだ明確なことが解っていないようで、ある程度の波はあるものの四季を通じて行われていると考えられている。

 食べて美味しい旬は不明。水温があまり季節の影響を受けない深海に生息しているため、年間通してあまり食味に差がないようにも思える。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
クロシビカマス                        

< 出 典 >

 ※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会

 ※「食材魚貝大百科」平凡社

 ※「日本近海の外洋域におけるクロタチカマス類仔稚魚の出現分布」 - 西川康夫 水産海洋研究会報 51巻1号 1987年1月

 ※ Promethichthys prometheus FishBase


 
 

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