アツエゾボラ:生態や特徴と産地や旬

アツエゾボラ,Neptunea heros,赤つぶ貝

●アツエゾボラの生態や特徴

◆アツエゾボラとは

分類:軟体動物門 > 腹足綱 > 直腹足亜綱 > 新生腹足上目 > 吸腔目 > Hypsogastropoda亜目 > 新腹足下目 > Buccinoidea(アクキガイ)上科 > エゾバイ科 > Neptunea(エゾボラ)属(日本海洋データセンターより)

学名:Neptunea heros (Gray, 1850)

和名:あつえぞぼら/厚蝦夷法螺

英名:Heros neptune、Northern neptune

別名:単に「ツブ」、赤つぶ、茶つぶ、エゾボラ(真ツブ)を「Aつぶ」と呼ぶのに対し本種を「Bツブ」

 「アツエゾボラ」は真ツブ(エゾボラ)と同じエゾボラ属の一種で主に北海道で獲れ、数は多くは無いが関東や関西の市場にも流通している。ただ、市場での評価は高くなく、高級食材として扱われている「エゾボラ」を「真ツブ」や「Aツブ」と呼ぶのに対し、「アツエゾボラ」は「ウスムラサキエゾボラ」などと同様種名で流通することはほとんどなく、単に「ツブ」もしくは「Bツブ」と呼ばれている。

 時には「エゾボラ」の半値ほどで取引されたりもするが、食味はけっして悪くなくお買い得感がある。

 和名は殻が厚くとても硬いことに因む。

◆アツエゾボラの生態

 「アツエゾボラ」は寒海性の巻貝で、国内では主に北海道に多くみられる。

 詳しい生態はまだ解っていないようだが、エゾボラ属は貝類やゴカイ類、ナマコ類などの底生動物を食べると考えられている。

アツエゾボラ,Neptunea heros,赤つぶ貝

 「日本近海産貝類図鑑第二版(奥谷 喬司著)」によると銚子以北、北海道からベーリング海に分布し、水深100〜200mの海底に生息すると書かれている。

◆アツエゾボラの特徴

 「アツエゾボラ」は殻長11cmほどで縦長の巻貝。殻は厚みがあり、肩の部分に太い螺肋があり、体層にも何本か螺肋がある個体もいるが、あっても極めて不明瞭である。

 若い個体にはほとんど見られないが、老成ししてくると下段の成長脈が波打ち、部分的にヒレ状に立つ個体も出てくる。

 殻表の色は黄褐色から赤褐色で、雄は殻口内が赤橙色だが雌は淡黄褐色。

アツエゾボラ,Neptunea heros,赤つぶ貝

 殻頂から見た螺旋の様子。

アツエゾボラ,Neptunea heros,赤つぶ貝

 底側から見た前管溝の形状。

●アツエゾボラの主な産地と旬

アツエゾボラ,Neptunea heros,赤つぶ貝

◆主な産地と漁獲量

 「アツエゾボラ」は本種を目的とした漁ではなく、主に「エゾボラ」を目的とした漁で混獲される。主な産地は北海道で、宗谷海峡から津軽海峡までの日本海沿岸、津軽海峡から根室海域にかけての太平洋沿岸で漁獲されている。

 漁獲量は「エゾボラ」よりも少ないと思われる。

◆アツエゾボラの漁獲時期と旬

 「アツエゾボラ」はほぼ通年漁獲され市場に流通する。

 旬は不明。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
アツエゾボラ                        

●アツエゾボラの目利きと食べ方

◆選ぶポイント

 アツエゾボラも刺身でいただくなら生きていることが前提となる。なるべく元気が良さそうなものを選ぼう。

 殻が厚く歩留まりとしてはよくないが、なるべく大きなものを選びたい。また、手に持ってみて、ずっしりと重みが感じられるものが良い。

アツエゾボラ,Neptunea heros,赤つぶ貝

◆調理のポイント

 アツエゾボラは殻が厚く同じ重さではマツブ(エゾボラ)よりも歩留まりが悪いことと、身の色が黄色っぽい事から価格は安い。とはいえ、味的にはしっかりとした歯ごたえとクセがなくほんのり甘味もあってとても美味しい。 

 殻がとても固く、身を取り出すための穴を開けるにも苦労する上に、身も取り出しにくい。

 エゾボラ属の一種なので、脚の少し上を開いてテトラミンが含まれている唾液腺を取り除く必要がある。

アツエゾボラのむき身,Neptunea heros,赤つぶ貝

 さばき方や食べ方は他のツブ貝と同じ。

◆アツエゾボラの刺身

 アツエゾボラ3個分を刺身にしたもの。

アツエゾボラの刺身,Neptunea heros,赤つぶ貝

 ワタの部分は塩ゆでして添えている。

 身は硬すぎずコリコリと良い食感で、甘味もあり十分に美味しい。ワタの部分は比較的あっさりとしていて苦みが少なく、苦手な人も食べやすいと思う。


 
 

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