トヤマエビ(富山蝦): 特徴と産地や旬
●トヤマエビの生態や特徴
◆トヤマエビとは
分類:ホンエビ上目 > 十脚目 > 抱卵亜目 > コエビ下目 > タラバエビ上科 > タラバエビ科 > タラバエビ属(日本海洋データセンターより)
学名:Pandalus hypsinotus Brandt, 1851
和名:とやまえび/富山海老
英名:Coonstriped shrimp
別名:ボタンエビ(牡丹海老)
「トヤマエビ」はタラバエビ科タラバエビ属の一種で、一般には「ボタンエビ」として市場に流通しています。正式に「ボタンエビ」の和名が付けられているエビが同じタラバエビ科にいるのですが、漁獲量が減り、近縁種で食味が似ている「トヤマエビ」が代用されるようになり、いつしか本種が「ボタンエビ」として定着してしまっているようです。
ちなみに、この「トヤマエビ」は北海道で多く獲れるのですが、名前の「トヤマ」の由来は、富山湾で最初に研究用に採捕されたからだそうです。
漁獲量が「ホッコクアカエビ(アマエビ)」に比べ少ないうえ、その食味の良さから高級寿司ネタになどに用いられ、甘海老の何倍もの値段で取引されています。
●トヤマエビの生態
「トヤマエビ」は福井県から北海道、朝鮮半島東岸・沿海州・サハリンにかけての日本海、北海道東岸、オホーツク海・ベーリング海~ピューゼット湾に分布し、水深100~400mに生息しているとされています。
ちなみに、本家「ボタンエビ」は土佐湾から北海道噴火湾に分布し、日本海にはいないとされています。
●オスからメスへの性転換
トヤマエビ(ボタンエビ)もホッコクアカエビ(アマエビ)などタラバエビ科のエビと同様、成長の過程で性転換を行います。産まれて4年程は全てオスで、4年目から5年目にかけて全てメスとなり、5年目で産卵を迎え、そのまま一年近く抱卵状態となります。寿命は8年ほどとみられています。
●トヤマエビの特徴
トヤマエビは成長すると20cm近くにもなるエビで、体色は透明感のある薄い朱色で、頭胸甲側面には不規則な白い斑点があり、背部に赤褐色の縞模様を持っています。また、足にも赤い縞が入っています。額角は甲長の1.5倍ほどあり、先端は上向きに反りかえっている。上縁には15~21歯、うち8~10歯が甲上にあり、下縁にも6~8歯、先端に1~2歯は付いている。
■トヤマエビの産地と旬の時期
●主な産地
トヤマエビは丹後あたりから北陸、北海道にかけて水揚げされていますが、北海道では日本海側だけでなく、噴火湾や釧路沿岸でも水揚げがあり、全体の多くを占めています。さらに、北海道の中では噴火湾周辺だけで北海道全体の約半分を占めているそうです。
漁獲は主にエビカゴ漁や底引き網で海底80~200m程のところで行われ、他のエビや魚に混じって水揚げされます。
●トヤマエビの産卵期
トヤマエビの産卵は海域によって多少ずれがあり、それぞれの海域で4~9月の間に行われます。産卵後は孵化するまでの半年から10か月程の間雌は抱卵状態となります。
●トヤマエビの旬
地域によって産卵期と、それに合わせて漁期が違い、市場にはほぼ通年入荷があるようですが、産卵期が早いところで4月頃から遅いところで9月頃に終わると言うので、トヤマエビ(ボタンエビ)は冬から春にかけて身が充実すると思われます。ただ、北陸などでは、ズワイガニ漁が出来ない時期にこのエビを獲ったりするので、金沢あたりでは蟹が終わってからの3月下旬から夏にかけて最盛期を迎えます。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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トヤマエビ |
< 出 典 >
※「原色日本大型甲殻類図鑑」三宅貞祥著
※「食材魚貝大百科」平凡社
※「旬の食材ー冬の魚」講談社