スジアラ/アカジンミーバイ:目利きと料理
ハタ科のスジアラを選ぶ際のポイント、目利きや見分け方、さばき方をはじめ、美味しい食べ方と調理方法、主な料理、料理レシピなどを沢山の写真と共に紹介します。
●スジアラの目利きと調理のポイント
◆色鮮やかで固いもの
体表全体につやがあり、色が鮮やかなもの、特に斑点のブルーが鮮明なものがいい。
魚を持った時に、頭部から尾までコチコチに硬いものが新鮮。特に腹の部分を触ってみて、硬く、腹の身に厚みが感じられるものが脂も多くお勧め。
◆目が住んでいるもの
目の幕が透明で、瞳が黒く澄んでいるものが新鮮。
◆エラが鮮紅色のもの
エラ蓋を開けてみて、中のエラが鮮やかな赤い色をしているものが新鮮。特に鰓耙(さいは)・鰓弓(さいきゅう)と呼ばれる白い部分と赤い鰓葉(さいよう)のコントラストが明瞭で境界がくっきりとしているものが新鮮。
◆調理のポイント
スジアラは70cmほどになる魚だが、1尾姿のまま丸ごと調理するのであれば600g~1kgほどのものがいい。そのサイズであればウロコはウロコ取りなどでも落とせる。しかし、それ以上のサイズになってくるとウロコは表皮に密着したような状態になり取りにくくなるので、写真のように包丁ですき引きしたほうがいい。
身質はやや透明感のある白身で、血合いはほとんどない。一見淡白なように見えるが、程よく脂もあり、何より身自体にしっかりとした旨味が多く、噛むほどにおいしく感じられる。
鮮度がいい状態のものは加熱調理した際にギュッと身が締り、身が反り返ったりしやすいので注意しよう。また、鮮度がいいものほど骨から身離れがよくなく、2~3日寝かせたほうが身離れはよくなる。
●スジアラの美味しい食べ方と料理
◆スジアラの刺身
今回のものは10月に仕入れた2.2kgサイズのもので、刺身は硬すぎることもなく、かといって緩いこともなくちょうどいい具合だった。血合いが無いため、切り身は単調な色合いだが、舌触りが滑らかで噛むほどに旨味が感じられ、とても美味しい魚だった。
次の写真は9月中旬に仕入れた2.7kgサイズのもの。しっかりとした食感がありとても美味しい。
◆スジアラの握り
やや薄く削ぎ切りにした身を握りにしてみた。
味的にはヒラメや真鯛のような派手さはないが、シャリとのなじみもよくおいしい。
昆布締めにした身で握るのもいいだろう。
◆スジアラのカルパッチョ風マリネ
スジアラを薄くスライスし、ニンニクを塗った皿に敷き詰め、
◆スジアラの塩焼き
二枚におろし、骨付き側を骨付きのまま切り身にして塩焼きにしたもの。
鮮度がいいこともあって、焼き上げたときに身がぶりんとはじけたかんじに見えるが、食べたときの食感は見た目ほど弾力が強いわけでもなく、ふっくらとしていて程よく繊維質が感じられ、甘みがあってとても美味しかった。
◆スジアラの柚庵焼き
皮付きのスジアラを切り身にし、酒、醤油、みりんを合わせた漬け汁にスジアラの切り身を浸し、その上にユズのスライスを敷き詰めて冷蔵庫で3時間ほど漬け込んだものをグリルで焼き上げたもの。
柚庵焼きのポイントはとにかく焦げやすいので、弱火でじっくりと焼き上げること。
食感がよく、身の甘味がとても美味しい。
◆スジアラのポワレ
皮付きのスジアラを切り身にして、塩を振りしばらく馴染ませてから、染み出た水分をふき取り、胡椒を振って皮目を下にしてニンニクと共にオリーブ油で焼き上げたもの。
焼き始めは皮が縮んで身が反りやすいので、少しの間皮がフライパンにピタッと全面付くように軽く押さえつけて焼く。
皮も香ばしく焼き上がり、スジアラの白身とオリーブ油の相性も良くとても美味しい。
◆スジアラのグリル キノコ餡かけ
スジアラの切り身に塩コショウを振り、グリルで焼き上げたものに、スジアラの骨や粗でとった出しにシイタケを加え、醤油、砂糖、塩で味を調えてから水溶き片栗粉でとろみをつけ、仕上げにごま油を垂らした餡をかけたもの。
シンプルな塩焼きも美味しかったが、こうすることで全く違った味わいが楽しめた。
◆スジアラの煮つけ
二枚におろし、骨付き側を骨付きのまま切り身にして酒、醤油、砂糖、みりんで煮つけにしたもの。
ふっくらとしていて白身の上品な甘みが堪能できる。ハタ科の中でも最上級の魚といわれるだけのことはあるなと感じる一品。
沖縄ではマース煮と呼ばれる、酒と塩だけで煮た料理にされることも多い。
◆スジアラの中華風蒸し魚
スジアラは台湾や中国でも料理店でも使われる高級魚で、中華風蒸し魚にされることも多い。
赤い皮を残して切り身にしたスジアラに塩を振り、しばらく馴染ませて、染み出てきた水分をふき取っておく。
鍋にネギを敷き、スライスした生姜を散らして酒を注いで加熱し、そこに切り身を入れて蓋をし、蒸し上げる。
切り身を器に盛り、その上に刻みネギを山盛りのせて、さらにスライスしたミョウガをたっぷりとのせる。
鍋の煮汁にオイスターソース、豆板醤を加え煮詰めながら味を調え、ミョウガやネギの上からたっぷりとかけ、その上から熱く熱したごま油をかける。
上品な甘みの白身とごま油の香りが効いたタレがとても良く合う。
◆スジアラの鍋料理
スジアラはクエなどと同じように鍋に仕立てても美味しく食べられる。
◆スジアラの天ぷら
スジアラはハタ科の魚なので、揚げ物料理にも適している。
とはいうものの、非常に高価な魚であり、身の味も上品なので単にから揚げにするにはもったいない。今回は天ぷらにしてみた。
サクッとした衣に包まれた白身はふっくらと揚がり、香り塩で食べるもよし、天つゆでも旨い。
◆スジアラと小エビの春巻き
棒状に切ったスジアラを小エビ、アスパラガス、バジルの葉、ミニトマトと共に春まきの皮で巻いて揚げたもの。
出来上がった春まきの断面がこちら。サクッとした春まきの皮の中はプリッとしたエビとふっくらと火が通ったスジアラが詰まっています。
火が入りすぎないよう春まきの皮にある程度色がついてきたら油から揚げ、余熱で火を通します。
トマトソースを敷いた上に載せ、バジルソースを垂らしています。このバジルの香りもスジアラを引き立ててくれます。
◆スジアラの皮の素揚げ
刺身にする際引いたスジアラの皮を揚げたもの。
低温でじっくりと揚げてから、高温で仕上げるのがポイント。やや硬い食感で、おかきを食べるような感じで美味しい。
◆スジアラのかぶと煮
そこそこ大きな魚なので頭や窯の部分にも美味しい身がたっぷりついている。
これは酒、醤油、砂糖、みりんで煮付けたもの。油を多く含んだ身は旨味も多く、優しく口の中でほぐれていく。皮のゼラチン質もいい感じ。これだけでも十分にメイン料理となりうる一品となった。
◆スジアラの兜焼き
頭とカマの部分をグリルで塩焼きにしたもの。
塩はたっぷり目に振っておいてちょうどいい。 上品な白身に焼けた皮の香ばしさが加わり酒の肴にもご飯のおかずにもなる。
魚はこの部分が一番美味しい部位ではないだろうかといつも思う。
◆スジアラのアラのトマト煮
スジアラの頭や釜の部分と尾柄やヒレの付け根などアラをトマトで煮込んだもの。
アラは塩を振って馴染ませてから流水で洗い、しっかりと水気をふき取っておく。
フライパンにたっぷりのオリーブ油と潰したニンニクを入れて加熱し、香が立ってきたらみじん切りにしたタマネギとセロリ、アラを加えて炒める。
アラは表裏返しながら両面焼き、そこにローズマリーと白ワインまたは酒を注ぎ、沸騰させながら軽く煮付けてからトマト缶を潰しながら加えて煮る。
煮る間は時々鍋を揺らすようにし、身が崩れないようにアラなどはなるべく触らない。
スジアラのアラがメインのご馳走に仕上がった。
◆スジアラのトマトソース・スパゲッティー
上のスジアラのアラで作ったトマト煮の煮汁をパスタソースにアレンジした。
フライパンに潰したニンニクとオリーブ油を入れ加熱し、香が立ってきたらアサリと小イカを加え、サッと炒めて白ワインを注いでフタをして蒸す。
アサリの殻が開いたらフタをとり、軽く煮詰めてからオレガノとスジアラのトマトソースを加える。
茹で上がったスパゲッティを加え、麺にソースを吸わせるようによく混ぜて皿に盛り、ソテーしたスジアラのスライスをのせる。
スジアラの出汁がとても濃厚なトマトソースになり、贅沢なパスタになった。
◆スジアラのあら汁
さばいた後の骨やひれなどの粗(アラ)で作った吸い物。粗から出る出汁も抜群にうまい。
粗はあらかじめ沸騰させている湯の中に浸し、20秒ほど軽く泳がせるようにしてざるにあげておく。
鍋に昆布を適量入れ、水を加えて一晩おいておいた中に酒と上記の湯引きした粗を入れ火にかける。
沸騰し始めたら昆布は取り出し、弱火にして静かに煮る。ブクブクと沸騰させて煮ると汁が濁るので注意。30分ほど煮たら火を止め、少量の醤油を香りづけに垂らし塩で味を調えて器に盛る。