ゾウリエビ:生態や特徴と産地や旬

ゾウリエビ,Japanese mitten lobster,Japanese slipper lobster

●ゾウリエビの生態や特徴

◆ゾウリエビとは

分類:ホンエビ上目 > 十脚目 > 抱卵亜目 > Achelata > セミエビ科 > Ibacinae > ゾウリエビ属(日本海洋データセンターより)

学名:Parribacus japonicus Holthuis, 1960

和名:ぞうりえび/草履海老

英名:Japanese mitten lobster、Japanese slipper lobster

別名:タビエビ

 ゾウリエビはセミエビ科ゾウリエビ属に分類される扁平な形をしたエビで同じゾウリエビ属の近縁種、ミナミゾウリエビも外見がそっくりで市場では区別されることなく単にゾウリエビとして扱われている。

 一般に食材として市場に出回るセミエビ科には下の写真尾4種があるが、並べてみるとその違いが分かりやすい。

ウチワエビ、オオウチワエビ、ゾウリエビ、セミエビ

 ゾウリエビはウチワエビとセミエビの中間的な姿かたちをしているのがわかる。

 和名は見たままの姿に由来する。英名の”slipper lobster(スリッパー・ロブスター)”もそのスリッパのような姿からで、別名の”mitten lobster(ミトン・ロブスター”も平たく、左右に分かれた、先端が平らな蝕角などの姿がミトン(親指だけ分かれた手袋)を思わせるから。

 とても美味しいエビだが、まとまった数が獲れないことから、ほとんど産地で消費されている。

◆ゾウリエビの生態

 ゾウリエビは水深10~30mの岩礁海底に生息し、岩礁にしがみつくようにして動物性の死肉などを食べる。

 水槽の中だが、ゾウリエビがサバの切り身をムシャムシャと食べる様子を撮っているのでご覧いただきたい。

 平らな体と殻の表面が岩礁の色に紛れ、自身の存在を分かりにくくすることで外敵から身を守っている。

ゾウリエビ,Japanese mitten lobster,Japanese slipper lobster

 「原色日本大型甲殻類図鑑(三宅貞祥著)」によると日本近海での分布は千葉県から九州の太平洋沿岸・奄美群島・沖縄諸島となっている。

 じっとしていることが多いのか、ゾウリエビは頭胸甲の背だけでなく前に突き出た平たい蝕角や脚などいたるところにフジツボやエボシガイが付いている個体が多い。

ゾウリエビ,Japanese mitten lobster,Japanese slipper lobster

 上の写真は蝕角に沢山フジツボが付いていて重そうなほど。

 水槽で生かしているゾウリエビの様子を動画にしているので見ていただきたい。二本の蝕角の付け根や脚に沢山ムラサキハダカエボシがくっついて共生しているのがわかる。

◆ゾウリエビの特徴

 ゾウリエビは体長15cmほどで、全体に扁平な形をしている。殻は厚みがあって硬く、表面は丸く小さな粒状の突起で覆われ、その隙間は短い毛が埋めている。(写真のものは全長23cm278gの個体)

ゾウリエビ,Japanese mitten lobster,Japanese slipper lobster

 第2触角の第2・第4節が平らな板状に広がり、外縁に棘が並んでいる。

ゾウリエビ,Japanese mitten lobster,Japanese slipper lobster

 頭胸甲の左右には大きな棘が前方に向けて8個あり、前方の第2と第3の間に深い切れ込みがある。この感じはウチワエビによく似ている。

ゾウリエビ,Japanese mitten lobster,Japanese slipper lobster

 脚は左右5脚で、いずれも岩にしがみつきやすいよう鉗(ハサミ状に付いている部分)がなく尖った爪状になっている。

 甲羅の眼の孔の周りは小さな粒状突起で縁どられているが、この突起が紫色でアイシャドーをつけているようで可愛らしい。これはセミエビに似ている。

●ゾウリエビの主な産地と旬

ゾウリエビ,Japanese mitten lobster,Japanese slipper lobster
鹿児島の市場に並ぶゾウリエビ( 株)タカスイ 久保和博氏提供)

◆主な産地と漁獲量

 ゾウリエビは温かい海域に多く、主な産地は沖縄県をはじめ鹿児島県が多く、その他、高知県や和歌山県などでも少ないが漁獲されている。ただ、ゾウリエビを目的とした漁はなく、そのほとんどはイセエビ漁で混獲されたものだ。

 沖縄や鹿児島でも数はまとまって獲れないこともあり高級食材として扱われており、大きさにもよるが3000~4500円/kgもする。

◆ゾウリエビの漁獲時期と旬

 沖縄ではイセエビ及びセミエビの漁が4月1日~7月31日は禁漁期となっており、鹿児島では5月1日から8月20日がイセエビ量の禁漁期に設定されている。ゾウリエビは禁漁の対象ではないが、主にイセエビ漁で混獲されるため、沢山漁獲されるのは9月から春までとなる。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ゾウリエビ                        

◆セミエビ科の仲間



 
 

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