ヤコウガイ:生態や特徴と産地や旬
●ヤコウガイの生態や特徴
◆ヤコウガイとは
分類:腹足綱 < 直腹足亜綱 < 古腹足上目 < ニシキウズガイ上科 < サザエ/リュウテン科 < Turbininae < リュウテン属(日本海洋データセンターより)
学名:Turbo marmoratus Linnaeus, 1758
和名:夜光貝
英名:Great Green Turban
別名:ヤクガイ(屋久貝)、ヤクゲー、ヤクンガイ
ヤコウガイはサザエと同じリュウテン属に分類される大型の巻貝で、沖縄や奄美では古くから食用とされてきただけでなく、貝殻には厚い真珠層があり螺鈿の材料として利用されてきた。正倉院の宝物にある螺鈿はほとんどがヤコウガイの貝殻で作られているそうだ。
ヤコウガイは漢字で夜光貝と書くが、夜に光るわけではなく、「屋久貝」(やくがい)が転じたものと言われており、その昔、屋久島辺りから奄美群島まで含めた広い島々を「ヤク」と呼んでいたことに因むという説がある。
学名の属名”Turbo”は「螺旋」を意味するラテン語に由来し、種小名”marmoratus”は同じくラテン語で「大理石の」という意味を表す。
◆ヤコウガイの生態
ヤコウガイは種子島から屋久島以南の西部太平洋の熱帯海域に分布し、水深30m以浅、5~20mの比較的浅いサンゴ礁斜面域に多く、海藻類などを食べて生息する。
◆ヤコウガイの特徴
ヤコウガイは殻高15cm、殻径20cmほど(写真のものはさらに大きく、重さも1.4㎏あった)になるサザエ類の中では最大の巻貝。
幼貝は丸く光沢があり螺肋がないが、大きくなるにつれて螺肋を形成し、大きな竜骨突起を突出させる。殻は陶器のような風合いで厚みがあり、殻だけでも結構な重量がある。殻口は大きく、その中にほぼぴったりはまる白く丸い丸餅状のフタを持つ。
殻表は全体的に暗緑色の地色で赤茶色の斑点があり、、個体により部分的に赤さび状の斑がある。内側は厚い真珠層となっている。横から見るとまるで陶芸品のようだ。古くからこの殻を工芸品に使ったというのもうなずける。
●ヤコウガイの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
国内の主な産地は沖縄県や鹿児島県の奄美群島など。
かつては螺鈿用に大量に獲られていた時代があったようだが、現在は沖縄で種苗放流が行われるなどしているが漁獲量は少ない。
◆ヤコウガイの漁獲時期と旬
ヤコウガイは熱帯海域に生息し、産卵は冬季を除き大潮の時には常時行われるようなので、食味の季節変動はほぼないものと思われる。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ヤコウガイ |
●ヤコウガイの目利きと調理のポイント
◆生きていること
殻付きの貝は基本的に生きていることが前提となる。
◆身の取り出し方と調理のポイント
ヤコウガイは食用となる軟体部も大きい。殻は非常に厚く頑丈で、ちょっとやそっとでは割れない。身を取り出す手順は以下の通り。
1.殻口と白いフタの隙間から身にフォークか何かを刺して少し身を引き出す。
2.白いフタと身の間にナイフを入れ、フタから身を削ぐように切り進めてフタをはずす。
3.殻口の内側の壁に沿って指先を差し入れ、殻に張り付いている貝柱を指先で外していく。
4.脚の部分をつかんで引き出す。貝柱を外してしまうと意外なほど簡単に奥のワタまで綺麗に引き出せる。
●ヤコウガイの美味しい食べ方と料理
◆ヤコウガイの刺身
取り出したヤコウガイの身を筋肉部分とワタの部分に切り分け、脚や貝柱の部分を生のまま刺身に、ワタの後ろにある渦巻部分(中腸線と生殖霜)はさっとゆでて添える。
身の部分はコリコリした硬い部分と比較的柔らかい部分がある。特にフタに接していたところは硬い。
サザエのような磯臭さはなく、いろいろな食感があって結構おいしい。特にワタがアワビの肝のような甘味があり旨い。
写真は身の半分を刺身にして盛りつけたもの。
◆ヤコウガイのバターソテー
やや薄くスライスしたヤコウガイの身に塩コショウを振り、バターでさっとソテーしたもの。シコシコした食感で甘く美味しい。写真はトマトとミニバジルを散らしている。
◆ヤコウガイとマゴチやヒメジのスパゲッティ、ソースジェノベーゼ
薄くスライスしたヤコウガイや魚の切り身に塩コショウを振り、ニンニクを効かせながらオリーブ油でさっと炒め、茹で上がったスパゲッティーを加えバジルソースを絡めたもの。バターソテーとはまた違った風味でこれも美味しい。