イタヤガイ- Pecten albicans -:生態や特徴と産地や旬
●イタヤガイの生態や特徴
◆イタヤガイとは
分類:二枚貝綱 > 翼形亜綱 >- イタヤガイ目 > イタヤガイ上科 > イタヤガイ科 - Pectininae(イタヤガイ亜科) - Pectinini(イタヤガイ族) > Pecten(イタヤガイ属)(日本海洋データセンターより)
学名:Pecten albicans (Schröter, 1802)
和名:いたやがい/板屋貝
英名:Japanese baking scallop
別名:杓子貝(しゃくしがい)
イタヤガイはイタヤガイ科を代表する二枚貝でイタヤガイ属に分類されている。各地で古くから食用にされいるが、大量発生する年があると思えば全く取れなくなる年もあったりと漁獲が安定せずホタテガイのように常に市場に並ぶというものではないこともあり、味が良いわりに価格は不安定でほとんど産地で消費される。
名前は上の殻(左殻)の外見が板ぶき屋根(板屋)を思わせることにちなむ。また、下の白い殻(右殻)は柄を付け杓子に使われたことから杓子貝(しゃくしがい)とも呼ばれる。
◆イタヤガイの生態
イタヤガイは北海道南部から九州、さらに海外では朝鮮半島から中国沿岸まで東アジアに広く分布し、外洋に面した水深10~100mの細砂底に生息する。幼貝までは足糸を伸ばし自分の体を岩などへ固定して過ごすが成貝になると足糸を切り砂底で自由に動き回る。移動するときは左殻(上の殻)を勢いよく開閉することで海水を噴射する。
イタヤガイはホタテ貝とは違い雄雌同体で、通常一つの体の中に卵巣と精巣を持ち、産卵期には卵と共に精子も放出する。
◆イタヤガイの特徴
イタヤガイは殻長12cmほど。上側の殻(左殻)はほぼ平らで、殻表は幅広の放射肋が8~10本あり、頂部では平らになっている。上から見ると綺麗な扇形で、正にシェル石油のマークそのものだ。
右殻は左殻よりも若干大きく、半球形に強くふくらんでおり、殻表は左殻に対応した放射肋がはいっている。
殻表の色は上側の殻(左殻)は赤褐色から紫色のもの、褐色の帯または線が殻頂から同心円状に入っているものなど個体差がある。
下側の殻(右殻)は白または黄白色のものが多いが、中には殻頂近くが紫のものや全体に紫色のもの、茶色い縞模様のものなども見られる。
中の軟体部の形状はホタテガイとほぼ同じだが、イタヤガイは雄雌同体なので生殖巣は色分けされたように卵巣と精巣が分かれつつ一体となっている。(上の写真では生殖巣が外套膜に隠れて見えない)
●イタヤガイの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
イタヤガイは主に小型底引き網漁や貝桁網などで他の魚貝に混じって漁獲される程度である。比較的多く獲れるのは愛知県辺りから九州にかけての太平洋沿岸の他、山陰から福岡辺りにかけての沿岸などだが、愛知県などでは漁獲されてもその場で海上に投棄されることも多いようだ。
また、かつて島根県ではホタテガイのように養殖の研究がすすめられ、盛んに取り組まれた時期もあったようだが、外洋を好むイタヤガイの養殖は思うように成果が上がらず今ではほとんど行われていないようだ。
◆イタヤガイの漁獲時期と旬
本種を目的とした漁を行っているところは現在ないと思われるが、個々の漁船がわずかに水揚げしている。
イタヤガイの産卵期は冬で、この時期に身も充実するようだ。ただ、ホタテガイと同じと考えると産卵前の秋と産卵後に貝柱に旨味が貯まる春から初夏にかけてが味的には良くなるのかもしれない。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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イタヤガイ |
●イタヤガイの目利きと調理のポイント
◆基本的に生きていること
貝類全般に言えることだが、殻付きのものは基本的に生きていることが前提となる。しっかりと殻を閉じているものが元気よく、もし殻を開いているものがあれば触れた時にすぐに閉じるか確認しよう。
◆持った時に重く感じるもの
沢山の中から選ぶ場合は、手に持ってみて少しでも重く感じるものを選ぶといい。中には殻の割に身が小さいものもいたりする。
◆調理のポイント
イタヤガイはホタテガイほど身が大きくならず、ベビーホタテに近い大きさで、味も似ているので、ベビーホタテの食べ方と同じと考えるといいだろう。
鮮度が良いものは貝柱を刺身で食べることができるが、小さいので加熱調理でひもやウロごと食べる方が良いのかもしれない。
漁獲された場所や、漁獲後の扱いにより砂を沢山含んでいることがある。そういう場合は生のままむき身にし、流水でしっかりと砂を洗い落とすしかない。
●イタヤガイの美味しい食べ方と料理
◆イタヤガイの刺身
イタヤガイの貝柱を刺身にしたもの。写真はイタヤガイ2個分を使っている。食感は優しく滑らかで、甘味がありホタテガイと変わらない美味しさ。
◆イタヤガイとハゴロモガイの煮付け
イタヤガイは加熱調理すると身が縮みやすいが、味的にはより甘みが増して美味しい。写真は殻ごと酒、醤油、みりんで煮付けたもの。沢山ある場合はかさばるので殻を剥いてから煮付けても良いだろう。
◆イタヤガイを使ったブイヤベース
今回仕入れたイタヤガイと同じく和歌山県雑賀崎港で仕入れた貝類やアシアカエビ、それにヒメジを使い、洋風にニンニクやハーブを効かせトマトベースでブイヤベースにしたもの。それぞれの魚貝からとてもいい出汁が出て、まさに極上の食べるスープとなる。
ポイントは長時間煮込まないこと。貝類やエビは煮すぎると身が縮んでしまい硬くなりやすい、あらかじめベースとなるトマトソースをしっかりと煮込んでおき、魚貝を加えてからは短時間で一気に煮あげる。今回はエシャロット、セロリ、ニンニクを炒め、一緒に仕入れたマゴチのアラでとった出汁と潰したホールトマトの缶詰を加えてトマトソースを作った。
◆イタヤガイの酒蒸し
小ぶりのイタヤガイを酒蒸しにしたもの。殻の割に可食部が小さく歩留まりが悪いが味は良い。ただ、しっかりと砂抜きをしておかないと食べられない。
◆イタヤガイのグリル
イタヤガイの平らな殻を剥き、酒と醤油、みりんを垂らして炭火か家庭用グリルで焼いてもいい。仕上げに刻んだアサツキか小ネギを散らす。弾力のある貝柱の食感と共に香ばしい香りと貝の旨味が楽しめる。
◆イタヤガイの揚げ物
むき身にしたイタヤガイに小麦粉、卵、パン粉をまぶしてフライにしてもいい。
◆イタヤガイの塩ゆで
イタヤガイを塩ゆでし、むき身にする。これをサラダやマリネなどで食べても美味しい。また、炒め物にも使える。写真は炒飯に使ったもの。砂が多く入っていそうな場合は生きているうちに殻を剥き、外套膜の隙間までしっかりと流水で砂を洗い流してから茹でた方がいい。
◆イタヤガイとトマトの冷製スパゲッティ
むき身にして酒蒸ししたイタヤガイを冷まし、フレッシュトマトとバジル、塩コショウ、ニンニクを効かせたオリーブ油と合わせてパスタソースに仕上げたもの。
◆イタヤガイを使った料理をレシピサイトで探す
主な料理レシピサイトのイタヤガイを使ったレシピのページにリンクしています。参考にされると良いでしょう。
クックパッド | レシピブログ | 楽天レシピ |