ムツ/鯥/むつ:生態や特徴と産地や旬
●ムツの生態や特徴
◆ムツとは
分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > ムツ科 > ムツ属(日本海洋データセンターより)
学名:Scombrops boops (Houttuyn, 1782)
和名:むつ/鯥
英名:Gnomefish
別名:本むつ、クロムツ、ロクノウオ、ムツメ、ムツゴロウ、クジラトオシ、メバリ、クルマチ、モツ、など
ムツはクロムツと共にスズキ目ムツ科ムツ属の魚で、学名のムツ属“Scombrops”は“Scomber”(サバ属)のような容姿、顔をした魚という意味。“boops”は牛の目を意味することばから付けられている。
和名「ムツ」の名前の由来は、「むつっこい」「むつい」など脂っぽいという意味の言葉がなまったものといわれている。ムツはその名のとおり非常に脂を多く含み、大きなものは高級魚として扱われている。一方、小ぶりの幼魚はまとまって大量に獲れる事もあり安い惣菜魚となっている。
ムツは同属のクロムツとそっくりで、両方を指す総称として用いられることもある。両種は同定が難しく、西日本ではムツをクロムツと呼ぶところもあり紛らわしい。また、ムツと名に付くものに「アカムツ(のどくろ)」というのもいる。一見赤いムツのように見えるがホタルジャコ科アカムツ属の魚でムツ科ではない。
◆ムツの生態
ムツはほぼ日本中の沿岸に見られる魚で、「日本産魚類検索 全種の同定第三版」によると日本近海での分布は北海道~九州南岸の太平洋沿岸、北海道~九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、東シナ海縁辺域、鳥島、九州ーパラオ海嶺となっている。また、海外においては朝鮮半島南岸、済州島、台湾、デラゴア湾(南アフリカ)にも分布するという。
同属のクロムツは同じ北海道以南に分布するが、本州中部辺りまでとなっている。
産卵期は10月から3月にかけてで、その時期には比較的浅いところまできて繁殖するとみられている。稚魚は沿岸から沖合の表層に多く、幼魚になると沿岸の浅場へ、そして成魚は水深200~700mの岩礁や大陸棚斜面で鋭い歯が並ぶ大きな口で小魚をはじめイカなどの頭足類などを捕食し生息している。
◆ムツの特徴
ムツは全長60cm程になる紡錘形の魚で、やや側扁するが体長に対し体高はあまり高くはない。頭部の大きさに対して目がとても大きく、大きめの口には上下の顎に鋭い歯が内向きに並んでいる。背ビレは前後2か所に分かれている。
体表はやや大きめのウロコに覆われているがはがれやすく、網で漁獲されたものはほとんど取れてしまっているものも多い。体色は成魚は背が黒く紫がかっており腹は少し色が薄く燻銀色。幼魚は色が薄く、赤みを含む黄褐色。
◆同属のムツとクロムツの見分け方
同属のクロムツは非常によく似ており、一見藩閥が難しい個体も多い。両種を判別するポイントは4つ。
1.成魚の体色がムツは金紫褐色なのに対し、クロムツは黒紫褐色。
2.側線上方から第一背ビレ中央までのウロコ数がムツは6~9枚でクロムツは8~9枚。また、側線から下部にはムツが10~15枚に対し、クロムツは14~17枚であり、全体的にクロムツの方がウロコが小さい。
3.第一鰓弓の鰓耙数はムツが上2~5、下12~17なのに対し、クロムツは上1か2しかなく、下9~13となっている。
4.側線有孔鱗数がムツが50~57なのに対し、クロムツは59~70とわずかに多い。
●ムツの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
主な産地は高知県や徳島県、長崎県、伊豆諸島など暖かいところで多く獲れる。全国の統計データが無いので、具体的な漁獲量は不明。
◆ムツの漁獲時期と旬
ムツは通年水揚げされ市場に並び、味的にも年間を通じて脂が多く美味しい魚だが、深場から産卵のために水深100m程のところまで上がってくる晩秋から冬が旬とされている。特に産卵期が3月から5月で、その産卵前の卵「ムツコ」は煮付けにすると非常に美味で猟師たちが好んで食べるそうだ。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ムツ |