クロザコエビ(黒雑魚蝦):生態や特徴と産地や旬
●クロザコエビの生態や特徴
◆クロザコエビとは
分類:(日本海洋データセンターより)
分類:ホンエビ上目 > 十脚目 > 抱卵亜目 > コエビ下目 > エビジャコ上科 > エビジャコ科 > クロザコエビ属(日本海洋データセンターより)
学名:Argis lar (Owen, 1839)
和名:くろざこえび/黒雑魚蝦
別名:白ガスエビ、土エビ、モサエビ、ガサエビ、ドロエビ(泥えび)
クロザコエビは日本海沿岸の山陰や北陸、東北などの沿岸部では馴染み深い海老だが、漁獲量が少ない上に傷みやすく、死んでしまうとすぐに黒ずんで見栄えが悪くなるため産地以外に出荷されるのは極わずかしかない。
近縁種の「トゲザコエビ」は姿が似ており一緒に混ざって売られている事もあるが、クロザコエビより全体に色が赤黒くクロザコエビの方が白っぽいので、富山や石川辺りではクロザコエビを「シロガスエビ」、トゲザコエビは「ガスエビ」と呼ばれている。
その他にもいろいろな地方名がつけられているが、「クロザコエビ」と「トゲザコエビ」を区別せず新潟辺りでは「泥エビ」、山陰では「土エビ」あるいは「モサエビ」などと呼ばれている。いずれもあまり美味しそうな名前は付けられていない。
ところが食味の面ではいずれもとても美味しいエビで、甘エビよりも甘みがあり、刺身は格別だ。クロザコエビはトゲザコエビよりも僅かだが身に締りがあり食味が勝る。かつては雑魚(ザコ)エビという名の通り雑魚扱いだったようだが、食味の良さが広く知られるようになり今では決して安いエビではない。
産地に行くと観光客向けにかなり高値で売られているのをよく見かける。
◆クロザコエビの生態
クロザコエビは七尾湾から北海道、韓国東岸、日本海北部、オホーツク海、ベーリング海、北米太平洋北岸に分布し、水深250~270mの泥砂あるいは泥底に生息する。(※1)
太平洋側では岩手県釜石沖まで分布する。微少な甲殻類、多毛類、デトライタスなどを食べていると考えられている。
近縁種のトゲザコエビはクロザコエビよりも深い海域に多く、水深250m辺りでは混在し生息域が分かれるとみられる。
産卵期は1~3月とされ、今回1月中旬に入手したものも抱卵しているものが多かった。
◆クロザコエビの特徴
クロザコエビは体長12cmほど。体の中央辺りがやや扁平で、上から見ると左右に広く、頭部先端と腹節後端で細くなっている。
眼上棘・蝕角上棘・額棘は小さいが、それらによって眼柄を守るように覆っている。
体色は全体に黄褐色から淡い茶褐色で、第3、第4、第6節の背から左右前方に向けて3筋の暗褐色の帯が入っているのが特徴。
近縁種のトゲザコエビとは似ているが並べてみると一目瞭然で、クロザコエビの方がややずんぐりとしていて背の暗色帯の有無や腹節の左右の縁取りの色味などで見分けられる。
また、尾の付け根に付いている左右1対の棘がトゲザコエビが鋭く長く尖っているのに対し、クロザコエビは丸いことでも判別できる。
●クロザコエビの主な産地と旬
京都中央卸売市場のシーフーズ大谷さんで仕入れたクロザコエビ820g。
◆主な産地と漁獲量
クロザコエビ(白ガスエビ、ドロエビ)は日本海沿岸の水深200m位を境に、それより浅い泥質の海底に生息しています。この海老を獲る為という訳ではなく、底引き網などで他のエビなどと一緒に獲れるようです。
福岡では見かけたことが無かったので、恐らく島根から山陰、若狭などの北陸、新潟、秋田あたりが主な産地だと思えます。山陰では「もさえび」、金沢では「しろがすえび」、丹後ではトゲザコエビ共に「土えび」「泥えび」、新潟でも「泥えび」と呼ばれています。旅行などで見かけたら、是非一度味わってみてほしい食材の一つです。
◆クロザコエビの漁獲時期と旬
クロザコエビの漁期は産地によって違いがあるようですが、春から初夏、3月あたりから6月初旬位まで底引き網漁で採れた物が並び、夏の間禁漁となって、9月からまた底引き網漁が解禁されます。
食べ頃の旬と言えるのは春に底引き網で大量に獲れ、価格もグンと安くなる3月から5月中旬くらいまでだと言えます。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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クロザコエビ |
< 出 典 >
※1「原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅰ)」三宅貞祥著 保育社
※「食材魚貝大百科」平凡社
※「旬の食材- 夏の食材」 -講談社
※「クロザコエビ」鳥取の魚図鑑 鳥取県水産試験場
※「日本海の陸棚性コエビ類(タラバエビ科・モエビ科・エビジャコ科」の分類学的概要」 駒井智幸著 日本海ブロック試験研究集録 第31号1994
※「Argis属(クロザコエビ属)等 深海性エビ類の漁業生物学的調査」石川県水産試験場1992
※「Argis lar (Owen, 1839)」 WoRMS