ヒメエゾボラ/青ツブ:生態や特徴と産地や旬
●ヒメエゾボラの生態や特徴
◆ヒメエゾボラとは
分類:軟体動物門 > 腹足綱 > 直腹足亜綱 > 新生腹足上目 > 吸腔目 > Hypsogastropoda亜目 > 新腹足下目 > Buccinoidea上科 > エゾバイ科 > Neptunea(エゾボラ)属(BISMaLより)
学名:Neptunea arthritica (Bernardi, 1857)
和名:ヒメエゾボラ/姫蝦夷法螺
英名:Arthritic neptune、Neptune whelk
別名:青ツブ、マツブ、ネムリツブ、ネグリツブ、ネンネツブ
「ヒメエゾボラ」は「エゾボラ」などと同じエゾバイ科エゾボラ属の巻貝で、一般に「ツブ貝」と呼ばれる類の一つだが、市場では「青ツブ」と呼ばれているものが本種である。「真ツブ」と呼ばれる「エゾボラ」に比べ小さく、かなり安い値で扱われるが、食味は良く産地では家庭でもつぼ焼きなどで楽しまれている。
◆ヒメエゾボラの生態
ヒメエゾボラは潮間帯から水深10mほどの砂や小石が混じる海底に生息し、肉食性で主に貝類を捕食するほか魚などの死肉も食べる。
交尾は5月中旬から6月下旬にかけて、産卵は6月中旬から7月下旬にか けて行われ、雌は20~80個のカプセルでできた卵塊を岩に産み付ける。
生殖期には雄同志の間に仮性交尾が見られ、交尾のとき雌雄が接近するのは偶然であって、誘導する感覚はなく、雄雌関わらず近くにいるものと交尾を試みるらしい。
「日本近海産貝類図鑑」によると日本近海での分布は常磐から北海道、日本海の潮間帯~水深100mとなっている。
◆ヒメエゾボラの特徴
ヒメエゾボラは殻長8~9cmで、殻は硬く体層はよく膨れ肩部に弱い瘤状の結節を生ずるものが多い。成長脈は細かくやや粗い。
殻表は暗褐色から黄褐色で個体差があり、殻口は広く外唇は鈍い。内壁は行楽があり、白い物から淡褐色、濃紫色まで個体差がある。
蓋殻は薄い皮革質で、長楕円形で殻口より小さく、淡褐色から褐色。
撮影したヒメエゾボラは9月9日に仕入れた北海道産で、殻長11cmほどある大きい物だった。
殻表は暗褐色から緑がかった暗褐色で、エゾボラなどと同じように身が殻の中に収まりきらずはみ出している。
殻表は茹でるなど加熱調理するとどれも緑色になった。
●ヒメエゾボラ/青ツブの目利きと調理のポイント
◆ヒメエゾボラの目利き
ヒメエゾボラは刺身で食べる場合は生きているものが良い。ただ、近年は冷凍技術も進み、冷凍品でも美味しく食べられるものが多い。殻が良く膨らみ、持った時に重い物を選ぶ。
また、刺身の場合は大きい方がいい。小さいものは煮たりつぼ焼きなどにするといいだろう。
◆調理のポイント
ヒメエゾボラもエゾボラ同様エゾボラ属の巻貝で、テトラミンという神経毒を含む唾液腺を持っているので、小さなものであってもこの部分を取り除かなくてはならない。唾液腺の取り除き方やさばき方は「ツブ貝(エゾボラ属)のさばき方」を参照されたい。
身はエゾボラ同様刺身で美味しく食べられるほか、小さいものも多く価格が手ごろなので煮付けやつぼ焼きなどでも気軽に楽しめる。
●ヒメエゾボラの美味しい食べ方と料理
◆ヒメエゾボラの刺身
大きなものはやはり刺身で食べたい。マツブ(エゾボラ)に負けじと食感、味ともにとても美味しい。
ただ、殻はとても固く、ウロまで綺麗に引き出すのは至難の業である。木槌などで殻を割るのが手っ取り早い。
ウロの部分はさっと塩茹でして添える。
◆ヒメエゾボラのつぼ焼き
ヒメエゾボラは価格的に手頃なので、気軽につぼ焼きなどでも楽しめる。
つぼ焼きの場合も唾液腺は取り除かなければならない。
あらかじめ殻から身を引き出し、唾液腺を取り除いたものを殻に戻し、酒、醤油、みりん、砂糖を合わせた調味液をたっぷり注いで炭火やグリルで焼く。醤油の代わりに昆布醤油を使うのがお勧め。
焼いたヒメエゾボラの食感が硬すぎず、香ばしい香りと相まってとても美味しい。
◆ヒメエゾボラのエスカルゴバターソテー
殻から取り出し、唾液腺を取り除いたヒメエゾボラの身を塩でぬめりを取り除き、食べやすく小口に切ってから、みじん切りにしたパセリとニンニクを混ぜ込んだバターでソテーしたもの。
ヒメエゾボラの身は硬すぎず柔らかすぎず絶妙の食感で、エスカルゴバターとの相性もとてもいい。これに乾煎りしたパン粉をまぶしても美味しい。
◆ツブを使った料理をサイト内や外部レシピサイトで探す
真ツブ(エゾボラ)の料理 | カラフトエゾボラの料理 | エゾボラモドキと チヂミエゾボラの料理 |
クックパッド | レシピブログ | 楽天レシピ |
●ヒメエゾボラ/青ツブの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
ヒメエゾボラの主な産地は北海道南部から東北沿岸にかけてです。
かつては沢山獲れたようですが、近年漁獲量が減少し、資源保護のためサイズや漁期などに制限を設けられています。
◆ヒメエゾボラの漁獲時期と旬
北海道の主な産地である檜山管内では、7月1日から8月20日までの2ヶ月弱がヒメエゾボラを対象としたカゴ漁の漁期となっています。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ヒメエゾボラ |
< 出 典 >
※「日本近海産貝類図鑑」奥谷喬司編著 東海大出版部 p.259、927
※「食材魚貝大百科②」平凡社 p.025
※「旬の食材- 冬の食材」 -講談社 p.1204
※「生殖期におけるヒメエゾボラ Neptunea arthritica Bernardi の行動」貝類學雜誌ヴヰナス 1958 年 19 巻 3-4 号 p. 219-224
※「ヒメエゾボラ」標津町役場 標津百科事典
※ Neptunea arthritica (Valenciennes, 1858) GBIF
※ Neptunea arthritica Barnardi, 1857 SeaLifeBase