タカアシガニ(高足蟹):生態や特徴と産地や旬
●タカアシガニの生態や特徴
◆タカアシガニとは
分類:ホンエビ上目 > 十脚目 > 抱卵亜目 > 短尾下目 > クモガニ上科 > Inachidae > タカアシガニ属(日本海洋データセンターより)
学名:Macrocheira kaempferi (Temminck, 1836)
和名:たかあしがに/高足蟹、高脚蟹
英名:Japanese giant spider crab
別名:ヒガンガニ/彼岸蟹(徳島県海部郡)、バンバガニ(神奈川県三崎)、シマガニ(駿河興津)、メンガニ(静岡県御前崎)
タカアシガニは大きいものだと左右の両脚を広げた幅が4mにもなる世界最大のカニである。ただし、甲羅の大きさではオーストラリアに棲息するタスマニアオオガニには敵わない。
伊豆半島や駿河湾周辺では産地の名物として様々な料理に用いられているが、食味という点では水分が多く大味でズワイガニはもとよりタラバガニにも及ばないとされている。ただ、大きいわりに価格は安めなので楽しみ方次第ではないだろうか。
西伊豆の戸田地区ではタカアシガニの甲羅に顔を描き魔除けや厄病除けとして玄関に飾る風習がある。
徳島県や和歌山県辺りでは春の彼岸の時期になると比較的浅いところまで産卵のために移動してきたものが多く獲れるようになることから「ヒガンガニ(彼岸蟹)」と呼ばれている。
◆タカアシガニの分布と生態
「原色日本大型甲殻類図鑑(三宅貞祥著)」によると日本近海での分布はタカアシガニは水深50~300mの砂または砂泥底に生息し、岩手県釜石沖から日向灘・天草灘に分布する。相模湾、駿河湾、南紀、土佐湾で多産する。
また、「食材魚貝大百科(平凡社)」によると九州南岸から台湾にかけての東シナ海大陸沿岸にも分布するようだ。
主に水深200~300mの深海の砂泥底で長い脚で胴の部分を浮かせて歩き、貝類をはじめ魚の死骸など主に動物性のものを食べる。春の彼岸辺りになると産卵のため水深50mほどの浅いところまで移動する。
◆タカアシガニの特徴
タカアシガニは非常に脚が長く、両脚を広げた長さが4mにもなる。一対のハサミ脚と4対の歩脚を持ち、歩脚の形状はタラバガニやズワイガニなどとは違い、長節の部分がほぼ円筒の棒状になっている。
オスはメスに比べ顕著に大きくなり、老成していくにつれハサミ脚が長く発達し歩脚よりも長くなる。写真はそこそこ大きなオスだが、ハサミ脚は歩脚より短いので、まだ若い個体と言える。オスとメスははかまの部分の形状が違う。
タカアシガニは成長と共に姿が変わって行くことも知られており、幼体は甲羅や脚が剛毛と長い棘で覆われ、額棘が長く斜め前方に伸びている。そして、成長と共に剛毛や棘は消えていく。
成体の甲羅は上から見ると洋梨のような形で甲幅は大きいものでは40cmにもなり(写真のもので21cmほど)、甲長の方が長くなる。
体色は甲羅が上面が橙色で下部は白っぽく、脚は橙色と白のまだらになっている。甲羅には小さなヒメエボシが沢山ついていることが多い。このヒメエボシもタカアシガニの餌となる。
●タカアシガニの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
タカアシガニは主に底引き網や底刺し網、カニかご漁で漁獲される。産地としては相模湾に面する神奈川県、駿河湾に面した静岡県、また、太平洋に面した愛知県から三重県、和歌山県、徳島県、高知県などで水揚げされている。ただ、タカアシガニを目的とした漁が行われているのは伊豆半島の下田や西伊豆くらいで、その他の地域では混獲される程度となっている。
漁場は相模灘、駿河湾、土佐湾、尾鷲、伊豆七島周辺などだが、産卵期の春は禁漁となっている。
◆タカアシガニの漁獲時期と旬
産卵期は春で、彼岸の頃に比較的浅いところまで上がってくるので、その時期に混獲されることが多い。
相模湾や駿河湾周辺では一時、漁獲量が減ったことから資源保護のため漁期が決められている。ただ、産地では漁期に獲られたものが生簀で活かされ通年味わうことができる。
小型底曳き網 戸田漁港(9月中旬~5月)
カニかご 田子漁港、戸田漁港、下田(12月 - 翌年2月)
こうしたことから、タカアシガニが美味しい時期は秋ごろから産卵前の春先までと言えそうだ。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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タカアシガニ |