スダレガイ/すだれ貝- Paphia euglypta -:生態や特徴と旬
●スダレガイの生態や特徴
◆スダレガイとは
分類:二枚貝綱 > 異歯亜綱 > マルスダレガイ目 > Veneroidea > マルスダレガイ科 > Paphia(スダレガイ属)(日本海洋データセンターより)
学名:Paphia euglypta (Philippi, 1847)
和名:すだれがい/簾貝
英名:grooved paphia
スダレガイはマルスダレガイ科スダレガイ属の一種で、生息数が少ないのか時折他の魚貝に混じって穫れる程度らしく、中央市場に出回る事はほとんどない。
市場で眼にする「スダレガイ」という名称の貝はほとんど本種ではなく、近縁種のアケガイである。また、オオスダレガイやサツマアカガイも外見がそっくりでスダレガイと混同されている。
貝類の同定は非常に難しく、市場ではあまり細かく仕分けされない事が多く、またそういったものは食味的にもほとんど違いがないものが多い。写真の貝はもしかしたらサツマアカガイかもしれないが、当サイトは学術書的な物ではなく、食材としての紹介に重点をおいているためご容赦いただきたい。
スダレガイという名称は殻表に見られるすだれ状の輪脈にちなむ。
◆スダレガイの生態
「日本近海産貝類図鑑第二版」によると日本近海での分布は北海道南西部から九州に至る沿岸とされ、海外においては朝鮮半島、中国大陸南岸にまで及ぶ。
水深10~40mの砂底に生息し、アサリなどと同じように海水をろ過しながらプランクトンなどを食べている。
◆スダレガイの特徴
スダレガイは殻長9cmほどになる。殻は長楕円形で殻表には名前の由来となっている、殻頂から同心円を描く太いすだれ状の輪脈がある。
殻表の色は淡褐色の地に褐色の放射帯が四条入っており、それ以外の部分には細い波状の模様が入っている。
市場でも見かける近縁種のアケガイと似ているが、本種の輪脈はアケガイのそれよりも段差がはっきりしており、それが殻頂にまでおよんでいるのが特徴。アケガイの方が滑らかなので全体に艶っぽく見える。
また、アケガイの殻の内側は殻頂部辺りが黄色いのに対し、本種は黄色くない。
●スダレガイの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
スダレガイはほぼ全国の沿岸に生息するようだが、まれに他の貝類に混じって獲れる程度のようだ。産地として知られるのは山口県。
今回入手したものも、和歌山県雑賀崎港に水揚げされたイタヤガイやツキヒガイと共に1個混じっていたものだった。
◆スダレガイの漁獲時期と旬
確かではないが、おそらくアケガイと同じと考えられる。そうだとすれば美味しい旬の時期は4~6月。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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スダレガイ | ? | ? | ? |
< 出 典 >
※「日本近海産貝類図鑑 第二版」奥谷喬司編著 東海大出版部
※「食材魚貝大百科 ②」平凡社
※「旬の食材- 春の食材」 -講談社
●スダレガイの目利きと調理のポイント
◆活きのいいものを
貝類は生きていることが前提で、水中のものは水管を伸ばし、触ると素早くひっこめるものを選び、水からあげられているものは殻を閉じ、だらりと殻を開けていないものを選ぶ。
◆調理のポイント
食用となるスダレガイの軟体部は色や形状などがアケガイとそっくりで味わいも似ているので、同じ食べ方で楽しめると考えていいだろう。
●スダレガイの美味しい食べ方と料理
スダレガイを使った料理とだけでなく参考としてアケガイを使ったものも紹介しておく。
◆スダレガイを使ったブイヤベース
写真は和歌山県雑賀崎港で仕入れた貝類や、アシアカエビ(クマエビ)、マゴチのアラを使い、洋風にニンニクやハーブを効かせトマトベースでブイヤベースにしたもの。それぞれの魚貝からとてもいい出汁が出て、まさに極上の食べるスープとなる。
ポイントは長時間煮込まないこと。貝類やエビは煮すぎると身が縮んでしまい硬くなりやすい、あらかじめベースとなるトマトソースをしっかりと煮込んでおき、魚貝を加えてからは短時間で一気に煮あげる。
今回はエシャロット、セロリ、ニンニクを炒め、一緒に仕入れたマゴチのアラでとった出汁と潰したホールトマトの缶詰を加えてトマトソースを作った。
◆アケガイの握りと軍艦
アケガイの脚を握りに、貝柱やヒモを軍艦にしてみた。今回は湯通しせず、生のままで作ったが、生ならではの優しい噛み応えと貝の風味が口に広がってそれなりに美味しい。甘味という点ではさっとゆでた方が強くなる。
◆アケガイの酒蒸し
酒と刻み生姜で酒蒸しにしたもの。アサリに比べ一つ一つが大きいので貝を食べている感が強くテンションが上がる。この赤い色を綺麗、美味しそうととるか、どぎつくいやらしいととるかは個人差があるかも。
味的には間違いなく美味しい。
◆アケガイの煮付け
アケガイを酒、醤油、みりんで煮たもの。煮すぎると硬くなるので、蓋が開いてから少しにて火を止め、そのまま冷ましている。醤油との相性もよく、貝の弾力もあって美味しい。
◆アケガイの貝汁そうめん
アケガイを酒蒸しして、そこにめんつゆと水を加えて味を調整し冷蔵庫で冷やす。茹でたそうめん(写真は半田麺)を冷水ですすぎ器に盛り、その上から先のアケガイ汁をかけ、刻んだ大葉とショウガを散らす。
これがことのほか旨い。少し贅沢にアケガイを使ってしまったかも。
◆アケガイの炊き込みご飯
アケガイの殻を剥き、酒とめんつゆを加えて炊き込みご飯にしたもの。意外に貝の味は柔らかく、ほのかに貝の風味がする感じで、これはこれで美味。アケガイの色合いが良いアクセントになる。