イトヒキアジ(糸引鯵):生態や特徴と産地や旬

イトヒキアジ,Alectis ciliaris

●イトヒキアジの生態や特徴

◆イトヒキアジとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > アジ科 > Caranginae > イトヒキアジ属(日本海洋データセンターより)

学名:Alectis ciliaris (Bloch, 1787)

和名:いとひきあじ/糸引鯵

英名:African pompano

別名:カガミ、カガミウオ、エバアジ、カンザシダイ

 イトヒキアジはアジ科の一種で、世界中の暖かい海で獲れる魚です。日本の沿岸で獲れるのは写真のように背ビレと臀ビレが糸状に延びた若魚で、この姿が名前の由来となっています。成長するとロウニンアジなど他のヒラアジと同じような姿になる。

 成魚は1mほどにもなる大型魚ですが、近海では幼魚や若魚がほとんどであることや獲れる数が少ないのか、首都圏や関西の大きな市場ではあまり見かけず、ほとんど産地で消費されるローカルな魚の一つ。

イトヒキアジ(幼魚)/糸引鯵/いとひきあじ

 幼魚は長く伸びたヒレと、体側にくの字の帯状班がくっきりと表れていて見た目が可愛いため観賞魚としても知られている。

 味的には4kgほどのサイズになるとそこそこ美味しいのだが価格は安く、幼魚は取り立てて美味しいということもなく雑魚として扱われることが多い。

◆イトヒキアジの生態

 イトヒキアジは全世界の全世界の暖海域に分布する魚で、日本では主に南日本の沿岸に多い。内湾など沿岸の水深100m以浅に生息し、小魚や甲殻類等を捕食する。

イトヒキアジ(幼魚)/糸引鯵/いとひきあじ

 「日本産魚類検索 全種の同定第三版」によると日本近海での分布は伊豆ー小笠原諸島、北海道~九州南岸の日本海・東シナ海・太平洋沿岸(日本海沿岸と北海道~茨城の太平洋沿岸は幼魚が多く、瀬戸内海は稀に幼魚がいる程度)、屋久島琉球列島、東シナ海中部の大陸棚縁辺域となっている。また、海外では千島列島南部太平洋沿岸、ピーター大帝湾(稀)、山東半島(幼魚)、朝鮮半島南岸・東岸(幼魚)、台湾、中国東シナ海・南シナ海沿岸、海南島、および全世界の熱帯海域に分布する。

◆イトヒキアジの特徴

 イトヒキアジは成長すると1mにもなる大型魚で、成魚はロウニンアジやギンガメアジなどと同じよに体形は強く側扁し体高が高く、口から頭部にかけての傾斜が急で、体高に対して尾柄がとても細い。

イトヒキアジ,Alectis ciliaris

 幼魚は体形が角ばったひし形で、成長するにしたがって前後に少し伸びた形になっていく。また、幼魚から若魚までの間は第二背ビレと臀ビレの軟条が糸状に著しく伸びていて、泳ぐとこれがフワフワとたなびき、名前の由来となっている。第一背ビレは独立した小さな棘からなるが、成魚では皮下に埋没してしまう。

イトヒキアジ(幼魚)/糸引鯵/いとひきあじ

 体色は全体に鏡のような銀色で、若魚までは体側にくの字の帯状班が数列並んでいるが成魚になると薄れてわからなくなる。

 近縁種のウマヅラアジは非常によく似ているが、イトヒキアジの眼の前方の頭部傾斜(頭頂部から口にかけて)は眼のあたりでわずかにふくらんでいるのに対し、ウマヅラアジは眼のところでわずかにへこんでいること、ウマヅラアジの幼魚は腹ビレも何本が糸状に延びていること、更に詳しく見るとイトヒキアジの鰓耙(さいは)数は4~6+12~17なのに対し、ウマヅラアジは7~11+21~26と多いなどの違いがある。

●イトヒキアジの主な産地と旬

◆主な産地

 イトヒキアジは暖海性の魚なので、主な産地は高知県や鹿児島県、和歌山県など南日本の太平洋沿岸。

 若魚は愛知県や静岡県、神奈川県などでも漁獲されている。

◆イトヒキアジの漁獲時期と旬

 旬は不明。講談社出版の「旬の食材」では夏の魚として扱われている。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
イトヒキアジ                        

< 出 典 >

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会

 ※「食材魚貝大百科 - イカ・タコ類他魚類 3」p.73 - 平凡社

 ※「旬の食材- 夏の食材」 p.29 - 講談社

 ※ Alectis ciliaris (Bloch, 1787) FishBase


 
 

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