ミクリガイ - Siphonalia cassidariaeformis -:生態や特徴と産地や旬
●ミクリガイの生態や特徴
◆ミクリガイとは
分類:軟体動物門 > 腹足綱 > 直腹足亜綱 > 新生腹足上目 > 吸腔目 > Hypsogastropoda > 新腹足下目 > Buccinoidea > エゾバイ科 > Siphonalia(日本海洋データセンターより)
学名:Siphonalia cassidariaeformis (Reeve, 1843)
和名:みくりがい/三繰貝/
英名:funereal whelk、Bonnet whelk
別名:ヨダレガイ
ミクリガイはエゾバイ科の小さな巻貝で、高知県では涎貝(よだれがい)と呼ばれている。これはこの貝が大量によだれのような粘液を出すことに由来する。
バイが全国的に知られ流通しているのに対し、本種は味は悪くないのだが産地で消費されるにとどまっている。おそらくそれは茹でても沢山出てくる粘液によるところではないかと思う。
◆ミクリガイの生態
「日本近海産貝類図鑑(東海大学出版部)」によるとミクリガイの日本近海での分布は本州から九州にかけての日本海沿岸及び太平洋沿岸とされ、海外では朝鮮半島から中国沿岸にも分布するようだ。
水深10~300mの砂底に生息するとされるが、50m以浅で漁獲されることが多い。
産卵期は冬で、雌は自身の殻の腹側に卵嚢を産みつける。
◆ミクリガイの特徴
ミクリガイは殻高5cm、殻径 3cm程の巻貝で、殻は硬く堅牢。形は螺塔がやや小さく体層が膨らんだ紡錘形で殻表には太めの低い螺肋があり、肩にやや尖った結節列が並んでいる。
殻口は広く軸唇はややまっすぐで水管溝は曲がり、それによりねじれた縫帯は太く顕著である。フタは革質で殻口の大きさに対して結構小さい。
殻表の色柄は個体差が大きく、茶色一色のものや螺肋に沿って白い帯が入っているもの、全体にまだら模様のものなど様々。今回入手したものは愛知県一色町で仕入れたもので、大きく分けて写真の3タイプに分けることができた。また別の産地ではまた違ったタイプの色柄も観られる。
●ミクリガイの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
ミクリガイは本州から九州にかけての沿岸各地で獲れるが、主な産地は房総から西側の太平洋側に多く、愛知県から三重県、高知県、鹿児島県など。
漁獲量は少なくほぼすべて産地で消費されてしまう。
◆ミクリガイの漁獲時期と旬
旬は不明。産卵期が冬ということなので、夏から晩秋辺りに身が美味しくなりそうだが…。
●ミクリガイの目利きと調理のポイント
◆生きていることが前提
基本的にこういった貝は生きていることが前提となる。触れた時に素早く反応する元気なものが良い。
◆調理のポイント
生きている状態から透明な粘液を出し、ゆでたり煮たりしても残る。ただ、においやクセはなく、食感的にはメカブなどのとろとろした粘液に近い。
基本的には加熱調理して食べる。
●ミクリガイの美味しい食べ方と料理
◆ミクリガイの煮付け
ミクリガイを良く水洗いし、酒、醤油、みりん、砂糖で煮付けたもの。煮ている間、粘液が灰汁となって沢山浮いてくるので、こまめに掬い取りながら煮る。
煮あがったら火を止めてそのまま粗熱をとる。
身は爪楊枝で簡単にスルっと引き出せ、食感もよく貝の甘味が広がる。
◆ミクリガイの塩ゆで
産地では塩ゆでにされることの方が多いかもしれない。シンプルな味で、この貝自体の味が堪能できる。