ツキヒガイ:生態や特徴と産地や旬
●ツキヒガイの生態や特徴
◆ツキヒガイとは
分類:二枚貝綱 > 翼形亜綱 > イタヤガイ目 > イタヤガイ超科 > イタヤガイ科 > イタヤガイ亜科 > Pectinini(イタヤガイ族) > Amusium(ツキヒガイ属) > Amusium japonicum(日本海洋データセンターより)
学名:Amusium japonicum japonicum(Gmelin, 1791)
和名:つきひがい/月日貝
英名:saucer scallop、sun and moon shell
ツキヒガイはホタテガイなどと同じイタヤガイ科の一種でツキヒガイ属に分類されている。近縁種には南方系の「タイワンツキヒ」や「タカサゴツキヒ」などがある。
獲れる数が少なく、産地以外の一般のスーパーなどで見かけることはほとんどないだろう。しかし、この貝、身はホタテガイそっくりなのだが舌触りや味わいがホタテ以上に良く、知る人ぞ知る旨い貝なのだ。しかも殻がまた美しい。
和名は、この殻の表が濃い赤褐色なのに対し裏が黄色みを帯びた白という対照的な色味をしており、これを「月」と「日」に見立ててつけられている。
◆ツキヒガイの生態
ツキヒガイは西日本に多く、「日本近海産産貝類図鑑 第二版(東海大学出版部)」によると日本近海での分布は山陰地方から九州にかけての日本海沿岸、房総半島から九州にかけての太平洋沿岸となっている。
水深10~100mの細砂底に生息し、右殻(白い方)を下にして砂底に横たわり殻の内側を覆う外套膜の外縁から無数の細い触手を伸ばしている。移動する際にはホタテと同じように殻を強く開閉することで水中をはねるように泳ぐ。
◆ツキヒガイの特徴
ツキヒガイは殻長殻高とも12cmほどで殻幅(膨らみ)は小さく扁平な円盤状の二枚貝である。
殻表は艶があり、左殻(上側)の外側は赤褐色で細かい成長線がみられるのに対し、右殻(下側)の外側は淡黄白色で、この対照的な色味を「月」と「日」に見立てたのが名前の由来となっている。
上の写真はツキヒガイの左殻の外側と内側。外側が艶のある平滑な表面なのに対し、内側は白く、放射状の肋が45~52本入っているのが特徴。
右殻も同じように外側が平滑なのに対し、内側には左殻と同じように放射状に肋があり、色は殻頂が白く、外縁が明瞭な黄色で、殻頂から外縁に向けてグラデーションになっている。
食用となる中の軟体部はホタテガイと同じ形状でほぼ中央に発達した大きな貝柱がある。
●ツキヒガイの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
ツキヒガイは主に西日本で獲れるが、まとまった数が獲れることは少なく、ほとんど産地で消費されていると思われ、都市部の市場ではあまり見かけない。
産地としては鹿児島県が特産としているほか、鳥取県から福岡県にかけての日本海沿岸、愛知県から紀伊半島、高知県にかけての太平洋沿岸ですが、その数はかなり減っているようだ。
◆ツキヒガイの漁獲時期と旬
鹿児島県では9~11月の秋が旬とされている。
今回撮影したものは5月下旬に和歌山県で漁獲されたものだが、写真の通り貝柱の身はしっかりとしていて非常に味の良いものだった。ただ生殖巣は小さく感じた。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ツキヒガイ |
●ツキヒガイの目利きと調理のポイント
◆基本的に生きていること
貝類全般に言えることだが、殻付きのものは基本的に生きていることが前提。触れた時にすぐに反応して殻を閉じる元気なものが良い。
◆重く感じるもの
ツキヒガイは殻の大きさの割に殻が薄いために軽く感じるが、個体によって貝柱の大きさにかなりばらつきがあるので、手に持ってみて、なるべく重く感じるものを選ぶ。
◆調理のポイント
食べ方や料理はほぼホタテ貝と同じと考えていいだろう。鮮度が良いものは生食もできる。ただ、細かい砂の中に棲んでおり、漁獲時に中に大量の砂が入ってしまうことが多いので、殻を開けずに焼いたり煮たりする場合は殻の隙間からしっかり中の砂を洗い流してから調理する必要がある。
●ツキヒガイの美味しい食べ方と料理
◆ツキヒガイの刺身
ツキヒガイの貝柱は甘味があり、ホタテに比べ繊維感が少なく舌触りが滑らかでとても旨い。個人的にはホタテガイより数段旨いと思うのだが、そう感じる人は多いのではないだろうか。
また、ツキヒガイの殻はとても綺麗で、形も薄い皿状なので盛り付けに使わない手はない。
◆ツキヒガイのグリル
ツキヒガイの上の殻を外し、酒、醤油、みりんを垂らして網焼きにする。貝柱は焼いてもそう硬くはならずとても美味しい。
◆ブイヤベース
色々な魚介を魚のアラでとった出汁とホールトマトの缶詰を加えて煮込み、スープ仕立てにしたもの。具となる魚介類は短時間で一気に煮あげ、あまり長く煮込まないのがポイント。
◆その他
ホタテ貝と同じ料理に使えるので、いろいろな煮物や鍋物、椀だねにも使えるほか、バターソテーやフライ、炒め物などいろいろな楽しみ方ができる。