シャチブリ:生態や特徴と産地や旬

シャチブリ

●シャチブリの生態や特徴

◆シャチブリとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > シャチブリ目 > シャチブリ科 > シャチブリ属(日本海洋データセンターより)

学名:Ateleopus japonicus Bleeker, 1853

和名:しゃちぶり/鯱振り

英名:Pacific jellynose fish

別名:ウネクラゲ、ユウレイ

 シャチブリはシャチブリ科シャチブリ属の一種である。

 これまで日本近海で確認されたシャチブリ属にはシャチブリの他にムラサキシャチブリとタナベシャチブリ、そしてシログチシャチブリの4種があるとされてきたが、近年の研究によりムラサキシャチブリとタナベシャチブリはシャチブリと同種であることが 判明している。(※1

 シャチブリは見た目も冴えず見るからに深海魚といった姿で、傷みも早く漁獲されても値が付かず市場に出回ることはほぼない。ごくわずかに産地で食用にされるにすぎない。ただ、臭みなどはなく、トロンとした食感が好きな方はゲンゲなどと同じように汁物などで美味しく食べることができる。

◆シャチブリの生態

 シャチブリは100~600mの深海砂泥底に生息し、主に甲殻類などの底生動物を捕食する。

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は鹿島灘〜土佐湾の太平洋沿岸、新潟県、若狭湾、兵庫県余部沖、隠岐、島根県敬川沖、山口県日本海沿岸、瀬戸内海、沖縄舟状海盆となっている。ただし、この中ではタナベシャチブリとムラサキシャチブリを別種として扱っており、この3種が同種とするならばそれらの分布もシャチブリの分布とみなすことになるので、参考として下記に示しておく。

シャチブリ

 タナベシャチブリの分布:宮城県沖、鹿島灘、銚子沖、相模湾、駿河湾、紀伊水道、土佐湾。

 ムラサキシャチブリ:鹿島灘、銚子沖、駿河湾、土佐湾、山口県日本海沿岸、東シナ海、南シナ海。

◆シャチブリの特徴

 シャチブリは標準体長が1mほどになる細長い魚で、頭部はずんぐりとしていて吻と目から前の部分が半透明の寒天状で、肛門から後方が細長い。腹に1対の長いヒゲ状に伸びるものがあるが、これは腹ビレが変異したものとされる。その後ろに左右の胸ビレと腹びれと同じくらいの幅で背ビレがあり、肛門の後ろから尾の先までは強く側扁し臀(しり)ビレが連なっている。

シャチブリ

 寒天状の頭部以外も全体に柔らかくぶよぶよしており、ウロコはなく薄い表皮のみ。

シャチブリ

 タナベシャチブリ及びムラサキシャチブリとシャチブリが別種とされてきた違いは上あごに小さな歯があるかないかで、シャチブリには下あごには歯がなく上あごに小さな歯がならんでいる。この3種が同種となれば、上あごまたは下あご、またはその両方に歯が認められればシャチブリという事になる。近縁種のシログチシャチブリには上下いずれのアゴにも歯がないことで見分けられる。

 また、近縁種のオオシャチブリとは口が下位についている(シャチブリ)か亜端位についている(オオシャチブリ)かと、糸状の腹鰭が長く胸鰭始部分を超える(シャチブリ)か胸ビレ基部に達しない(オオシャチブリ)かで見分けられる。

●シャチブリの主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

 シャチブリは主に太平洋沿岸の底引き網漁で漁獲されている。ただ、あくまでも他の魚貝に混じって混獲される程度で、その数は少なく、漁獲されても試乗に出回ることはほとんどない。

 比較的よく見かける産地は愛知県、三重県、静岡県など。

◆シャチブリの漁獲時期と旬

 旬は不明。各地の底引き網漁の時期となる。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
シャチブリ                        

●シャチブリの美味しい食べ方と料理

◆鮮度落ちが早い

シャチブリ

 シャチブリは水分が多いため鮮度落ちが早く、できれば漁協などいつ漁獲されたものなのかわかるところで入手しよう。全体に艶があり、エラが綺麗な色をしているもの、匂いを嗅いで臭くなっていないか確かめよう。

◆調理のポイント

 水分が多く、ゼリー状の部分で覆われており、身となる筋肉部分はとても少ない。

 三枚におろすのは困難で、骨付きのままぶつ切りにして調理するのがお勧め。骨は食べられないが柔らかく口には刺さらない。

◆シャチブリの味噌汁

 見た目の肉質がゲンゲに似ており、同じように味噌汁にするとおいしく食べられる。

シャチブリ

 味噌汁にする場合は内臓(肝は食べられる)とエラを取り除き、食べやすい大きさにぶつ切りにしてから、沸騰している湯の中に入れてさっと湯通しをしてから冷水に落とし、表面のぬめりを指で落としてザルにあげる。

 その身を昆布を敷いた鍋に入れて酒と水を張り加熱して火を通し、他の具材を加えミソを溶く。


※1 Redescription of Ateleopus japonicus Bleeker 1853, a senior synonym of Ateleopus schlegelii van der Hoeven 1855, Ateleopus purpureus Tanaka 1915, and Ateleopus tanabensis Tanaka 1918 with designation of a lectotype for A. japonicus and A. schlegelii (Ateleopodiformes: Ateleopodidae)


 
 

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