オオヒメ:生態や特徴と産地や旬
●オオヒメの生態や特徴
◆オオヒメとは
分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > フエダイ科 > ヒメダイ属(BISMaLより)(BISMaLより)
学名:Pristipomoides filamentosus (Valenciennes, 1830)
英名:Crimson jobfish 仏名:Colas fil
中国名:丝鳍紫鱼 台湾:絲鰭姬鯛
和名:おおひめ/大姫
別名:マーマチ(沖縄)、クロマチ(鹿児島)、クロマツ、マルマツ
オオヒメはヒメダイやキンメヒメダイなどと同じフエダイ科ヒメダイ属に分類される中型の魚で、沖縄や鹿児島ではマチ類と呼ばれるものの一種として重要な魚種となっている。本州でもオオヒメは食味の良さから一部の水産業者や料理人には知られ高級魚として扱われているが、入荷量が少なく一般にはあまり知られていない。
ヒメダイとよく似た上品な白身の魚で、サイズ的にも扱いやすい大きさのものが多い。
学名の”Pristipomoides”は『”Pristipomus”(日本では未知のイサキ属の魚)に似た』というギリシャ語に因み、ヒメダイ属を表し、”filamentosus”は種名を表し、『糸状の』という意味のラテン語に因む。
◆オオヒメの生態
オオヒメは熱帯から亜熱帯の海域に多く、水深70~350mの曽根と呼ばれる海底の岩礁域に生息し小魚やイカなどの頭足類、甲殻類などを捕食する。
産卵期は沖縄では5~8月とみられ、産卵は期間内に複数回に分けて行われる。寿命は長いものは35年以上とみられる。
「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は100mよりも深場。 伊豆諸島、小笠原諸島、神奈川県三崎(幼魚)、和歌山県すさみ、高知県柏島、種子島、琉球列島、南大東島とされ、海外においては台湾、東沙群島、西沙群島、南沙群島、インドー太平洋(オーストラリア北岸・ニューギニア島南岸・ツアモツ諸島以東を除く)に分布する。
◆オオヒメの特徴
オオヒメは標準体長50cmほど、大きいものになると全長80cmを超える。撮影したものは全長49cm(尾叉長44cm)1,530g。
体形は側扁した紡錘形でヒメダイよりもやや体高が高く吻が少し長い傾向がある。
背ビレは10棘11軟条からなり、前部と後部はほとんどくびれず連続し、臀ビレは3棘8軟条からなる。背ビレ、臀ビレとも最後軟条は長く後方に伸びる。尾ビレは深く切り込みが入った二叉型である。
体色はラベンダー色や赤紫、更に濃い赤褐色まで個体差がみられ、背から腹にかけグラデーションになっている。
背ビレの色も黄色味が強い物から赤みが強い物、淡色の物など個体差があるが、本種の特徴は尾ビレの後縁が赤く縁どられていること。よく似た近縁種のヒメダイにはみられないので見分けるポイントの一つとなる。
また、生時には頭部背面に暗青色から暗色の小斑点が多数見られるのが特徴で、これも他種にはなく見分けるポイントとなる。ただ、死後固定した時点では写真のように不明瞭になり分かりにくい。
確実に見分けるポイントは側線有孔鱗数の違いで、オオヒメが59~65に対し、ヒメダイはもっと多く70~74となっている。
●オオヒメの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
オオヒメの主な産地は沖縄県から奄美にかけてと小笠原諸島で、関西の市場には鹿児島から入ってくる。
沖縄では高級魚として市場に並ぶ魚の一つとして知られているが、本州の市場に入ってくる数は少なく、やはり高級魚となっている。
沖縄県及び鹿児島県の2020年のオオヒメの漁獲量は64トンとなっている。
◆オオヒメの漁獲時期と旬
オオヒメは暖海性の魚で、季節的な変動が少なく、通年あまり肉質に差がなく、時期よりも個体差でみた方が良さそうだ。沖縄での産卵期は5~8月、初夏から夏にかけてで、一般的には産卵期とその直後は脂が卵にとられ身痩せすることが多いのだが、オオヒメはこの時期でも美味しく、むしろ旬とさえ言われている。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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オオヒメ |
< 出 典 >
※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 P.175
※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会 P.930
※「食材魚貝大百科③」平凡社 P.91
※「旬の食材- 秋の食材」 -講談社 P.62
※FishBase Cheilopogon pinnatibarbatus japonicus
※「平成31年度以降の南西諸島海域マチ類広域資源管理方針の概要」水産庁
※「沖縄近海産オオヒメ(まーまち)の成熟と産卵BO」沖縄県水産海洋技術センター
※「マチ類 奄美諸島・沖縄諸島・先島諸島 令和3年度資源評価結果」国立研究開発法人水産研究・教育機構