テングニシ/天狗螺/てんぐにし:生態や特徴と産地や旬
●テングニシの生態や特徴
◆テングニシとは
分類:軟体動物門 - 腹足綱 - 直腹足亜綱 - 新生腹足上目 - 吸腔目 - Hypsogastropoda亜目 - 新腹足下目 - Buccinoidea(ブチノイデア)上科 - テングニシ/カンムリボラ科 - テングニシ属(日本海洋データセンターより)
学名:Hemifusus tuba(Gmelin, 1781)または Hemifusus ternatanus (Gmelin,1781)
和名:テングニシ/天狗螺/天狗辛螺
英名:Tuba False Fusus
別名:コウガイ(甲貝)、コウカイ、ドウチガイ、ホウズキガイ
テングニシはコウガイ(コウカイ)などとも呼ばれ、その卵嚢を「海ほおずき」として、鬼灯のように子供が吹いて音を鳴らす玩具にして遊んだり、縁日で売られていた、かつては身近な巻き貝の一つだったようだ。
そうやって産地で消費されてきたが、今ではすっかり数が減っているという。しかし、市場価格は大きさのわりに非常に安い。
◆テングニシの生態
テングニシは太平洋側では房総半島あたりから南、日本海側では青森県辺りから南の日本の沿岸各地に分布し、本州中部以南で多く漁獲されている。
潮間帯下から水深50m以浅の砂泥底に生息し、産卵期は5~6月とされ、その卵嚢はドミノの板状に綺麗に並んで産み付けられていることが多く、その一つ一つに沢山の卵が入っていて、孵化してからある程度成長するまでその中で過ごし外敵から身を守るのに役立っている。
◆テングニシの特徴
テングニシは大きいものは殻高20cm程になる巻貝で、縦に長い紡錘形の形をしており、殻には巻いている螺旋に沿ってイボ状の突起が並んでいる。また、殻の表面は黄褐色から緑褐色の布状の殻皮で覆われている。
中の生体はエゾボラやバイと同じようなものだが、水揚げされたものは細長く厚い殻が結構奥まで引っ込んでしまっていることが多い。
●テングニシの主な産地と旬
◆主な産地
テングニシは鹿児島県や愛媛県や高知県など西日本に多く水揚げされているが、近年その数はかなり減っているようだ。水揚げされたものはほとんど産地で消費されている。
◆テングニシの漁獲時期と旬
通年漁獲はあるようだが、比較的浅場の底曳網などで獲れる事が多く、秋から春にかけて獲れるものが多い。産卵期は5~6月とみられるので、その前後は避けた方が良い。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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テングニシ |
●テングニシの目利きや美味しい食べ方と料理ポイント
◆買うときのチェックポイント
選ぶときはテングニシが活きていることを確認する。特に触った時にすぐに殻が奥に引っ込む元気なものが良い。
動かないものや生臭いものなどは避けよう。
◆殻が非常に硬い
テングニシの殻は非常に硬く、エゾボラのようにアイスピックで突いたくらいでは穴が開かないので、穴をあける際はタオルなどを敷き、アイスピックの先を殻にあて、けがをしないよう十分に注意しながらハンマーなどで後ろから叩いて開ける。もしくは金槌で割って取り出す。
◆調理のポイント
生の状態は結構身が硬く、好みもあるが半茹でにすると食べやすい硬さになる。
テングニシもエゾボラなどと同じように唾液腺にテトラミンが含まれているとされ、加熱調理でも無毒化はできないので、その部分を取り除いて調理しなければならない。さばき方はエゾボラのさばき方を参照。
◆テングニシの刺し身
テングニシの身は歯触りが結構硬めで、部位によってはかなり堅いので小さな子供やお年寄りにはお勧めできない。ただ、臭みなどもなく、味は旨い。
◆握り
テングニシを握り鮨にする場合は身が硬いので、塩茹でしてから切ったものを使った方がいい。
◆煮貝
小ぶりのものは酒、醤油、みりんで煮付けてもいい。
◆炒め物
塩茹でして取り出した身を食べやすい大きさに切り、色々な炒め物にすると食感も良く旨い。