トゲザコエビ/ガスエビ/ドロエビ:生態や特徴と産地や旬

トゲザコエビ/ガスエビ/ドロエビ

●トゲザコエビ/ガスエビの生態や特徴

◆トゲザコエビとは

分類:ホンエビ上目 > 十脚目 > 抱卵亜目 > コエビ下目 > エビジャコ上科 > エビジャコ科 > クロザコエビ属(日本海洋データセンターより)

学名:Argis toyamaensis (Yokoya, 1933)

英名:Mosa shrimp

和名:とげざこえび/棘雑魚蝦

別名:ガスエビ、ガサエビ、ドロエビ(泥えび)、モサエビ、トゲクロザコエビ

 トゲザコエビはエビジャコ科の一種で、この名前よりも「ガスエビ」や「ドロエビ」、「モサエビ」などの地方名の方が馴染みがあるのではないだろうか。日本海沿岸の産地で食べられてきたとても美味しいエビで、「見た目は悪いが甘くて美味しいエビ」として知られる。これとよく似たものに「クロザコエビ」というのもいる。トゲザコエビより少し白っぽい位で、ほとんど同じ姿をしており、一緒に混ざって売られている事もある。

 「食材魚貝大百科」や「旬の食材- 冬の食材」など書籍によっては本種をトゲクロザコエビ(Argis dentata (Rathbun, 1902))と紹介しているものもあり、和名トゲクロザコエビとされる種(Argis ochotensis Komai, 1997)というのもあって紛らわしいく、以前当サイトでも先の書籍にもとづき本種をトゲクロザコエビとして紹介していたが、近年日本近海に分布するトゲザコエビが”Argis dentata”とは別種として扱われるようになり当サイトにおいてもトゲザコエビとして改訂した。こうした深海エビ類の分類に関してはまだはっきりとしていないことが多いようだ。

◆トゲザコエビ/ガスエビの生態

 トゲザコエビは日本海の水深200~1000mという深い海の泥底に生息し近縁種のクロザコエビとは水深250m辺りを境にその生息域が分かれるとみられる。

 分布に関してはまだ未解明のようで、山陰以北の日本海からオホーツク海とみられる。

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 産卵期は1~3月とされるが初夏にも抱卵したものが多く、抱卵期間が長い。また隔年でしか産卵しないとみられている。

◆トゲザコエビ/ガスエビの特徴

 トゲザコエビは体長12~13cmほどの大きさで、近縁種のクロザコエビより少し大きい。

トゲザコエビ/ガスエビ/ドロエビ

 外見は全体的にガサガサしたした姿で、額角(がっかく)は棘程度しかなく両目が並んで突き出ている。

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 体色は全体に赤褐色のものが多いが、獲れた場所によって上の写真のようなクロザコエビと同じような黄褐色ものもいる。しかしクロザコエビに見られる腹節の背部に褐色の帯が本種にはなく、頭胸甲の側面に白い斑紋あがあり、腹節の腹側が同じ白で縁取られている。

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 尾の付け根に付いている左右1対の棘がトゲザコエビが鋭く長く尖っているのに対し、クロザコエビは丸いことでも判別できる。

●トゲザコエビ/ガスエビの主な産地と旬

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◆主な産地と漁獲量

 トゲザコエビは漁獲されるほとんどが産地で消費されている。福岡では見かけたことが無かったので、恐らく島根から山陰、若狭などの北陸、新潟、秋田あたりが主な産地と考えられる。

 旅行などで見かけたら、是非一度味わってみてほしい食材の一つだ。

近江町市場にて

◆トゲザコエビ/ガスエビの漁獲時期と旬

 主に底引き網で漁獲されるので、日本海の各地で底曳網が禁漁期となる夏以外が漁期となる。ただ、産地となる地方は冬場はズワイガニ漁がメインとなるので、漁獲量が増えるのはズワイガニの漁期が終わる春から初夏にかけてで、産地では手頃な価格で沢山出回る旬となる。ただし、春以降は産卵し抱卵期となる。

 身が美味しい旬は晩秋から冬にかけて。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
トゲザコエビ                        

< 出 典 >

 ※「原色日本大型甲殻類図鑑(Ⅰ)」三宅貞祥著 保育社

 ※「食材魚貝大百科」平凡社

 ※「旬の食材- 夏の食材」 -講談社

 ※「日本海の陸棚性コエビ類(タラバエビ科・モエビ科・エビジャコ科」の分類学的概要」 駒井智幸著 日本海ブロック試験研究集録 第31号1994

 ※「Argis属(クロザコエビ属)等 深海性エビ類の漁業生物学的調査」石川県水産試験場1992

 ※「Argis toyamaensis (Yokoya, 1933)」 WoRMS


 
 

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