ミノカサゴ:生態や特徴と産地や旬
●ミノカサゴの生態や特徴
◆ミノカサゴとは
分類:魚類 > 条鰭綱 > カサゴ目 > カサゴ亜目 > フサカサゴ科 > フサカサゴ亜科 > ミノカサゴ属(日本海洋データセンターより)
学名:Pterois lunulata Temminck & Schlegel, 1843
和名:みのかさご/蓑笠子
英名:Luna lion fish(FishBase)、Dragon's beard fish(EOL)
別名:ナヌカバシリ(広島県)、キヨモリ(山口県)、マテシバシ(三重県)
ミノカサゴはフサカサゴ科ミノカサゴ属の一種で、縞縞の体に大きな胸ビレと長い背ビレで優雅に泳ぐ姿はとても印象的で、水族館で見たことがある方も多いのでは?
「ミノカサゴ」という名称はこの長く大きなヒレを蓑(みの)や笠にみたててつけられたとされる。また、近縁種のハナミノカサゴやネッタイミノカサゴなどの総称としても使われている。
この魚、実はとても危険な魚なのだ。華やかな長いヒレには毒針が隠されており、身の危険をこの毒針によって回避しているのだ。刺されると激しい痛みに襲われるという。この毒針に因んで地方によって「ナヌカバシリ(七日走り)」、「マテシバシ(待て暫し)」、「キヨモリ(清盛)」などとも呼ばれている。
ミノカサゴはオニオコゼのように毒を持つ魚で扱いには注意が必要だ。カサゴの一種で食用になり、クセのない白身で料理次第で美味しく食べられる。ただ、市場に並ぶ一般的なカサゴ類に比べると味は劣り、同じように毒を持つオニカサゴがとても美味しく高級魚として扱われているのに対し、価格はとても安い。
ミノカサゴ類は英語では”lion fish”(ライオンフィッシュ)と呼ばれている。これは大きなヒレを広げた様子がライオンのたてがみを思わせるからだろうか。なお、種名「ミノカサゴ」の英語名は”Luna lion fish”(ルナ・ライオンフィッシュ)という。このルナは学名の種小名に由来する。
学名の属名”Pterois”は『翼のある』という意味のギリシャ語”pteroeis”に由来し、種小名”lunulata”は『新月の』あるいは『半月の』を意味するラテン語”lunulatus”からつけられたとされている。(「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著)
◆ミノカサゴの生態
ミノカサゴは西太平洋からインド洋にかけての温帯域から熱帯域にかけて広く分布し、水深10~60mの岩礁域やその周辺の砂底・砂泥底に生息し小さな甲殻類や小魚などを捕食する。
「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は北海道〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、青森県牛滝(津軽海峡)〜屋久島の太平洋沿岸、瀬戸内海、八丈島となっている。また、海外においては朝鮮半島南岸・東岸、済州島、台湾、広東省、海南島、ジャワ島、スラウェシ島、オーストラリア北岸、サモア諸島で確認されている。
◆ミノカサゴの特徴
ミノカサゴは標準体長20cmほどで大きい物では30cmほどになる。
背ビレ棘条は13本でそのヒレ膜は棘条に沿うように幅が狭くついているだけで、一本一本のヒレ条がばらばらになっている。この背ビレ棘条と腹ビレの棘条、それに臀(しり)ビレの棘条には毒を持つ。
胸ビレ軟条は全て先端まで分岐せず、上部軟条のヒレ膜はヒレ条の先端に達する。このヒレ膜の切れ込みは個体差があり、上部軟条部が深く切れ込み背ビレと同じような感じになっているものから、下の写真のように結構膜がしっかりと付いてるものまで見られる。
よく似た近縁種のハナミノカサゴとは頭部腹面及び胸部に茶褐色の縞模様があるハナミノカサゴに対し、ミノカサゴにはなく白いので見分けられる。また、ミノカサゴの背ビレ軟条部と尾ビレはオレンジ色の無地かわずかに薄い小暗色点がある程度なのに対し、ハナミノカサゴには明確な黒褐色斑点がある。
●ミノカサゴの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
日本各地の沿岸で底引き網をはじめ定置網、刺し網などで混獲されるほか、遊漁船からの釣りでも漁獲されている。
ただ、本種を目的とした漁はなく、あくまでも混獲されるにすぎず、その数はとても少ない。それもあって産地以外で流通することはほぼないだろう。
◆ミノカサゴの漁獲時期と旬
ミノカサゴの産卵期は8月頃で、写真のものも8月上旬に愛知県で獲れたものだが、卵巣が発達していた。そのせいか、身は一見しっかりとした感じだったが食味は水分が多く旨味が少なかった。
旬は不明だが、産卵期の前後は避けた方が良いのかもしれない。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ミノカサゴ |