ヒイラギ:生態や特徴と産地や旬

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

●ヒイラギの生態や特徴

◆ヒイラギとは

分類:魚類 > 条鰭綱 > スズキ目 > スズキ亜目 > ヒイラギ科 > ヒイラギ属(日本海洋データセンターより)

学名:Nuchequula nuchalis (Temminck & Schlegel, 1845)

和名:ひいらぎ/ 柊、柊魚

英名:Spotnape ponyfish

別名:ギンタ(和歌山)、ゼンメ(豊橋)他多数

 ヒイラギはスズキ目の中でヒイラギ科ヒイラギ属に分類される小魚で、沿岸各地では、アジのサビキ釣りやキス目的の投げ釣りなどで釣れるなど身近に獲れる雑魚として知られ、食用としての出荷はされず、地元での消費にとどまります。

 小魚でありながら骨が硬く、体表にぬめりもあるため扱うのが面倒ということから雑魚扱いされてはいますが、身肉自体は美味しい魚です。

 ヒイラギという和名は、薄い木の葉型の体形に強い棘のある背ビレと尻ビレがある姿が柊(ひいらぎ)の葉に似ている事に因むようです。

 学名の属称”Nuchequula”はラテン語で『うなじ』を意味する”mucha”と『雌の子馬』を意味する”equula”を合わせたもので、種小名”nuchalis”は『うなじの』を表すラテン語に因みます。

 英名の”Spotnape ponyfish”も”Spot+nape” =『斑点のあるうなじ』と、ヒイラギ科の魚を指す”ponyfish(ポニーフィッシュ)”からなっています。

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

●ネコマタギ?様々な地方名

 ヒイラギは本州中部以南の西日本沿岸地では身近な魚であることから、各沿岸地独特の地方名が沢山つけられています。

 ギチ(東京)、ギラ(千葉)、ジンダベラ、ジンダ、ネコゴロシ、ネコマタギ(静岡)、ゼンメ、ネコナカセ(愛知)、ギンタ(和歌山)、ネラギ(大阪)、ダイチョオ、ネコクワズ(兵庫)、シノハ(石川)、エノハ(鳥取)、ギギ、ゲッケ(岡山)、ギンギン(広島)、ニイラギ(愛媛)、トンバ、トンボ(福岡)、シイノフ(熊本)など

◆ヒイラギの生態

 ヒイラギは本州中部以南の西日本をはじめ、東アジア温帯域の沿岸の浅い所や内湾、汽水域に多い小魚です。

 吻の先が斜め前下方に突き出すように伸ばすことができ、それによって海底の小動物を吸い込むように食べる。また、前上顎骨と額骨を擦り合わせギィギイィと鳴きます。

 食道に発光バクテリアを共生させる事によって発光器の働きをさせ、暗所で腹部を発光させます。

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

 「日本産魚類検索全種の同定第三版」によると日本近海での分布は、青森県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、宮城県〜九州南岸の太平洋沿岸、瀬戸内海、沖縄島とされ、海外においては朝鮮半島西岸・南岸、済州島、台湾、浙江省〜広東省の中国沿岸に分布する。

◆ヒイラギの特徴

ヒイラギの標準体長は9cmほどで、大きい物でも全長15cm足らずです。体表は分泌される多量の粘液でヌルヌルしている。

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

 鱗は尾の近くに剥がれ易く小さい物があるが、背ビレ第6または第7棘下より前の方には鱗が無い。口は前下方に筒のように伸ばすことができるのも特徴。

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

 体色は全体に銀白色で、体側には黄色い線や斑がみられ、頭部の背に鞍掛状の黒斑があり、背ビレ棘条の前部にも顕著な黒斑がある。背ビレ及び臀ビレの外縁は帯状に黄色い。

●ヒイラギの主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

 ヒイラギは本州・四国・九州の沿岸各地でみられ、防波堤などでも釣れる雑魚です。この魚を目的とした漁は行われておらず、あくまでも他の魚に混じって混獲されるにすぎません。

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

◆ヒイラギの漁獲時期と旬

 産卵期は6月頃から夏にかけてで、その時期に岸近くで産卵します。もともと、この魚を求めて漁をされる事は無く、他の魚に混じって漁獲されるので通年水揚げはあるようですが、卵を持つ春から初夏あたりが美味しそうです。

 釣りでは初夏から夏にかけて漁港などの波止で小アジ狙いのサビキでよく釣れます。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ヒイラギ                        

●ヒイラギの目利きと調理のポイント

◆鮮度が良い状態のものを

 ヒイラギをお店で買うことはほとんどないかもしれませんが、もし買う場合は、体表に透明なぬめりがしっかりとある物を選ぶと良いです。鮮度と共に、このぬめりが無くなるようです

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

 また、眼が澄んでいること、エラが綺麗な赤い色をしていることなども確認しましょう。

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

 自身で釣った物は、釣れたらすぐに氷水に入れて絞め、持ち帰るときはヒイラギを保存袋などにいれ、氷を敷いたクーラーボックスなどに入れて運びます。

◆調理のポイント

 ヒイラギは体表にぬめりがあるので、これを落とすには、粗塩をまぶしてボールなどに入れ、ガサガサと横に揺すり、魚同士がこすれるようにします。それから流水ですすぐと結構落ちます。棘があるので手で混ぜない方が良いですよ。また、体側の後方に少し鱗があります。簡単にとれるので忘れないようにしましょう。

 体の割に骨はしっかりとしています。内臓は少なく、頭部から肛門近くまで斜めに切り落としても良いでしょう。

 身は透明感のある白身で、味や食感は結構いい魚です。

●ヒイラギの美味しい食べ方と料理

◆ヒイラギの刺身

 大きい物を選んで、三枚におろし、皮をはいで刺身にすると、甘みがあって以外に美味しいです。

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

 食感もしっかりとしています。

◆ヒイラギの煮付け

 漁師さんたちは煮付けにすることが多いようです。内臓も小さく、鱗とエラだけ掃除して煮付けると良いです。これがもっと大きい魚だったら、この美味しさなら、もっと人気のある魚になったと思います。

ヒイラギ, Nuchequula nuchalis

 写真は、酒と醤油、砂糖、みりん、生姜で煮付けたもの。身離れも良く美味しい。

◆ヒイラギの唐揚げ

 小さいので、鱗と頭を落としてから揚げに。二度揚げすることで少し硬いですが骨も食べられます。南蛮漬けにしても良いでしょう

< 出 典 >

 ※「日本産魚類全種の学名」中坊徹次・平嶋義宏著 東海大出版部 

 ※「日本産魚類検索全種の同定第三版」中坊徹次編 東海大出版会

 ※「食材魚貝大百科」平凡社

 ※「旬の食材- 秋の食材」 -講談社

 ※ Nuchequula nuchalis FishBase


 
 

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