ツノナガチヒロエビ:生態や特徴と産地や旬
●ツノナガチヒロエビの生態や特徴
◆ツノナガチヒロエビとは
分類:甲殻亜門 > 軟甲綱 > 真軟甲亜綱 > ホンエビ上目 > 十脚目 > 根鰓亜目 > クルマエビ上科 > チヒロエビ科 > ツノナガチヒロエビ属(日本海洋データセンターより)
学名:Aristaeomorpha foliacea(Risso, 1827)
和名:つのながちひろえび/角長千尋蝦
英名:giant red shrimp、giant gamba prawn
別名:単にチヒロエビ、赤エビ
ツノナガチヒロエビはチヒロエビ科の一種で、チヒロとは両腕を広げた幅が千あるという「千尋」からつけられており、それくらい深いところにいるエビであるという意味である。
チヒロエビにはいくつかの種属が含まれているが、本種はその中でも代表的なエビで、国内では最も多く漁獲されていると思われる。
見た目は全体に濃い赤色で食材としては歩留まりがあまり良くないことと、独特の脂を持つことから市場価値は高くない。
◆ツノナガチヒロエビの生態
ツノナガチヒロエビは世界中の温帯から熱帯にかけての水深200~400mの沿岸に生息する深海性のエビである。
日本近海では相模湾以南から九州にかけての太平洋に分布する。
泥底に多いが、腹肢が長いことから、海底を這うのではなく低層から中層を遊泳していると考えられている。
◆ツノナガチヒロエビの特徴
ツノナガチヒロエビは全長15cmほどで大きいものだと20cmを超える。名前の通り額角が長く途中で上に反りあがっている。
頭胸部を上から見るとこうなる。額角は付け根から細い三角になっており、その先端から先が上に向けて曲がっている。
胸脚はかなり細長く、腹肢も長い。頭胸甲、腹節ともに甲羅は比較的薄く柔らかい。
体色は全体に赤く眼は黒い。
●ツノナガチヒロエビの主な産地と旬
◆主な産地と漁獲量
国内での主な産地は静岡県や愛知県、三重県、高知県など伊豆半島から九州にかけての太平洋沿岸でトロール漁など底引き網漁によって他の魚種に交じって混獲されている。
本種を目的とした漁が行われているわけではなく、水揚げは安定的でなく、漁獲されたほとんどが産地で消費されている。
◆ツノナガチヒロエビの漁獲時期と旬
ツノナガチヒロエビは各地のトロール漁が行われる時期に獲れる。また、本種は鮮度落ちしやすいということもあり、旬は晩秋から春先辺りと考えられる。
旬のカレンダー | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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ツノナガチヒロエビ |
●ツノナガチヒロエビの目利きと調理のポイント
◆色が鮮やかなものが新鮮
ツノナガチヒロエビは水揚げされた時点では全体に鮮やかな赤い色をしていますが、鮮度落ちが早く、時間の経過とともに頭の部分が黒ずんできて、黒っぽい汁が出てきます。
◆目玉に張りと艶があるもの
新鮮なうちは眼玉が丸く艶がありますが、鮮度が落ちてくるとしぼむように凹んできます。
◆調理のポイント
ツノナガチヒロエビは深海性なので殻が柔らかくむきやすいが、身も柔らかめで、独特の脂質を含んでいる。背ワタが赤く目立つので面倒がらずに抜き取ろう。
身はエビの大きさからすると小さく、歩留まりは良くない。頭の部分は取れたての新鮮なものは美味しいが、鮮度が落ちているものは臭みが出やすく出汁にも使えなくなる。
写真は軽く塩ゆでした物で、左2尾が腹節の甲羅をむいたもの、右2尾は殻つきのままのもの。
◆冷凍保存
鮮度のいい状態なら冷凍保存も可能。冷凍するときは水気をしっかりと切ってステンレスのバットなどに広げ、出来るだけ短時間に芯まで凍らせるのがポイント。
解凍する時は冷蔵庫に移してじっくり解凍するのではなく、流水にあてて一気に解凍した方が食感がいい。半解凍くらいの方が甲羅はむきやすく、刺身でも食べられる。
●美味しい食べ方と料理
◆ツノナガチヒロエビの刺身
鮮度が良いものは刺身で食べられる。身は甘エビよりはしっかりしているが、甘エビ程甘味は強くない。頭のミソもそこそこ美味しい。
◆白身魚のムニエル、ツノナガチヒロエビのバターソテー添え
ツノナガチヒロエビの殻をむき、塩コショウを振りバターを使ってフライパンでさっとソテーしたもの。今回はイトヒキアジのムニエルと合わせてみた。
バターとの相性は良く、普通にエビの味わいで美味しい。
◆ツノナガチヒロエビのトマトソーススパゲッティ
ツノナガチヒロエビを使いパスタソースを作ってみた。このエビだけではやや旨味が足りなそうだったので少しベーコンも加えている。
想像したよりもしっかりとエビの味が出ていて、コストパフォーマンスとしてはいい感じだった。
◆ツノナガチヒロエビの天ぷら
ツノナガチヒロエビをカラッと天ぷらにしたもの。クルマエビのような歯ごたえはないが、まあまあ美味しい。小ぶりなのでかき揚げにしてもいいだろう。