イガグリガニ:生態や特徴と産地や旬

イガグリガニ/毬栗蟹/いがぐりがに

●イガグリガニの生態や特徴

◆イガグリガニとは

分類:ホンエビ上目 > 十脚目 > 抱卵亜目 > 異尾下目 > Lithodoidea > タラバガニ科 > エゾイバラガニ属(日本海洋データセンターより)

学名:Paralomis hystrix (De Haan, 1846)

和名:いがぐりがに/毬栗蟹

英名:Deepsea Spiny King Crab

 イガグリガニはタラバガニ科エゾイバラガニ属の一種で、カニとはいっても「タラバガニ」と同じくヤドカリの仲間である。

 その名の通り全身鋭く硬い棘に覆われ、毒こそ持っていないが触るのをためらわせる姿をしている。この独特の姿から、各地の水族館で展示飼育されていることが多い。

 深海にすむカニであまりまとまって獲れないことや、大きくはなく脚の身が少ない上に、上記の通り扱いにくさもあって産地以外の市場に出荷されることはほとんどなく、価格も安い。

イガグリガニ/毬栗蟹/いがぐりがに

 写真のものは三河一色さかな村のとある店で見つけたものだが、店主曰く「食べる部分が少なく、ほぼディスプレー用だな(笑)」と。また、書籍の中には『食用としての価値はない。』(小学館 日本大百科全書)などと書かれているものもあるが決してそんなことは無い。確かに身をほじるのは面倒ではあるが味はそこそこ美味しく、もし内子が詰まっていたなら内子は独特の濃厚さが楽しめる。

◆イガグリガニの生態

 水深180~400mの深海泥底に生息し主に底生の小動物を食べていると考えられている。

 「原色日本大型甲殻類図鑑(三宅貞祥著)」によると分布は東京湾、相模湾、遠州灘、南紀、薩南海域、天草灘沿岸に分布し、抱卵期は11~12月となっている。

 以前は日本固有種とされてきたが、近年、ニュージーランド近海でも採取されている(食材魚貝大百科‐平凡社)そうだ。

◆イガグリガニの特徴

 イガグリガニは甲長、甲幅ともに13~15cmほどになり、真上から見た甲羅の形はずんぐりとした洋ナシ形。歩脚は一対のハサミ脚を含め5対あるのだが第5歩脚はとても細くて内側に隠れており4対しか見えない。これはタラバガニをはじめとするヤドカリの仲間の特徴である。

イガグリガニ/毬栗蟹/いがぐりがに

 歩脚も含め全身が鋭く硬い棘で覆われているのも大きな特徴の一つで名称の由来となっている。この棘は若い個体ほど長い。

 甲の背から腹部にかけても丸みがあり、ボールのような形になっている。

イガグリガニ/毬栗蟹/いがぐりがに

 イガグリガニの体色は生時から全体に淡紅色で腹側はやや色が薄く、歩脚の爪先は黒い。

イガグリガニ/毬栗蟹/いがぐりがに

 写真は雌の腹部で、腹節が大きく全面を覆う丸い形をしており、膨らみもある。タラバガニなどと同じように左右はどちらかに偏った非対称になっている。

 また、一般にタラバガニ科は雄雌にかかわらず右のハサミの方が大きいとされるが、写真のものは左のハサミの方が明らかに大きい。

●イガグリガニの主な産地と旬

◆主な産地と漁獲量

 イガグリガニは東京湾以南の太平洋側各地で漁獲はされるが、底曳き網で時折混獲される程度で一度にまとまった数は獲れない。

 そのためほぼ産地で消費されるにすぎず、大都市のスーパーなどに並ぶことは無い。

◆イガグリガニの漁獲時期と旬

 特に決まった漁期があるわけではなく、各地の底引き網の漁期に漁獲される。

 旬の時期は不明だが、抱卵期は11~12月とされているのでこの時期は避けた方が良いだろう。また、今回入手した写真のものは3月20日に愛知県の三河一色さかな村で仕入れた活け物で、3匹1500円だった。3匹ともメスで内子がたっぷり詰まっていた。

旬のカレンダー
旬のカレンダー 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
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