紅ほっぺ(べにほっぺ) < イチゴ

紅ほっぺ(べにほっぺ) < イチゴ

●紅ほっぺとは

◆紅ほっぺの来歴

 「紅ほっぺ」は静岡県農業試験場(現農林技術研究所)が「章姫(「久能早生」×「女峰」)」に「さちのか(「とよのか」×「アイベリー」)」を交配し選抜育成した、輸送性に優れ果肉が赤く食味もコクがあって美味しいいちごです。

 育成の過程は下記のとおりです。

1994(平成6)年2月 静岡県農業試験場(現農林技術研究所)において果実が大きく多収性で果形揃いのいい「章姫」に、果実が硬く果肉がち密で食味が濃厚な「さちのか」の花粉を交配。

1994(平成6)年5月 得られた種を撒き、9月に発芽した実生苗の中から生育旺盛なもの308個体を定植。

1995(平成7)年4月 草勢、大果性、形状、硬 さ、食味、色沢などの主形質について良否を考慮し、11 個体を選抜。

1996(平成8)年4月 収量性、食味、果実の硬さ、大果性等に優れた1系統「94-9-2」を選抜。

1996(平成8)年度 選抜した「94-9-2」について、農業試験場本場、東部園芸分場、海岸砂地分場において、特性検定、地域適応性検定を実施。

1997(平成9)年7月 系統名「静岡 11 号」を付与。

1997(平成9)年度 試験場内での特性検定のほか、韮山町、藤枝市、浜岡町、袋井市において現地適応性試験を実施。

1998(平成10)年度 試験場内での試験及び現地試験を実施。

1999(平成11)年3月 「紅ほっぺ」という名称で種苗法に基づく品種登録を出願。

2002(平成14)年7月 品種登録された。

紅ほっぺ いちご

 名称の「紅 ほっぺ」は、『果皮色が鮮紅色で美しいことはもちろん、果心部まで赤いことと、ほっぺ が落ちるほどのコクのある食味であることを表しており、親しみを持たれることを願って命名された。』とあります。

※ 「イチゴ新品種‘紅ほっぺ(仮称)’の育成経過と主特性」静岡県農業試験場研究報告44号, p.13-24(1999-12)より

◆紅ほっぺの特徴

 「紅ほっぺ」はやや縦長の円錐形で果皮色は「さちのか」に似た艶のある鮮赤色です。果肉はやや硬めで「女峰」程度とされ、中も鮮紅色で果心まで淡赤色を帯びるのが特徴です。

 食味は「さちのか」よりも甘く「章姫」よりも酸味があってコクのある味わいとなっており、香りも「アイベリー」の特性を受け継いだ「さちのか」に由来すると思われる華やかな香りをもっています。

紅ほっぺ いちご

 静岡県農林技術研究所の「「紅ほっぺ」の特性と栽培技術」という資料には「紅ほっぺ」の果実特性が下記の通り紹介されています。

1.「さちのか」や「章姫」よりも大果であるが、 大果と小果の果重の差が大きく、果重の均一性に 欠ける。

2.果実の長さは「章姫」より短く「女峰」よりやや長い長円錐形である。乱形果の形は塊状(ゴツゴツ果)であり、果房の第1果は縦溝が入り易い。

3.果皮色は鮮赤色で、「さちのか」に似ている。果 肉色は鮮紅色で、果心まで淡赤色を帯びる。

4.果実の光沢は良好で、果実の空洞は、大果であ ってもほとんどみられない特長がある。

5.適熟果の香りは優れ、これは、花粉親の「さ ちのか」(「さちのか」の香りは花粉親のアイベ リ-の由来とみられる)由来と考えられる。

6.食味は適度な酸度を有しているため、コクが あり、極めて良好である。

7.春先の糖度の低下は少なくどの時期でも 比較的安定している。糖度は「さちのか」並に 高く、酸度は「章姫」よりかなり高い。

8.果実の硬さは「さちのか」より軟らかいが、 「章姫」より硬く、「女峰」程度の硬さである。

9.「紅ほっぺ」の糖含量は高く、そのうちスクロース(蔗糖)含量が他品種と同様に最も高い。スクロース含量は「章姫」より高く、「とちおとめ」より低く、「さちのか」並であり、組成比率も「さちのか」に類似する。

10.酸含量は「さちのか」、「とちおとめ」並であり、組成比率は「さちのか」に類似する。

11.これらのことから、果実の内容成分は父親である「さちのか」に近似する。

 ※ 「「紅ほっぺ」の特性と栽培技術」静岡県農林技術研究所(旧静岡県農業試験場)2005年5月改訂版より

紅ほっぺ(べにほっぺ):いちご

農林水産省の品種登録データベースには以下の通り記載されています。

『—–

 果皮の色は鮮赤、果形は長円錘、果実の大きさは大、

 果肉色は鮮紅、果心の色は淡赤、果実の光沢は良である。

 果実の硬さはやや硬、無種子帯はかなり少、そう果の落ち込みは落ち込み中、そう果数及び果実の香りは中である。

 季性は一季成、開花始期及び成熟期は中、

 可溶性固形物含量は高、酸度は中、日持ちはやや長である。

 「章姫」と比較して、果心の色が淡赤であること、花房当たりの花数が少ないこと等で、「さちのか」と比較して、小葉が大きいこと、果実が大きいこと、花柄長が長いこと等で区別性が認められる。

—–』以上、抜粋。

◆実際に食べてみた紅ほっぺの食味

 2021年2月中旬に撮影試食した滋賀県産「紅ほっぺ」は一粒60g前後もある大きなものでした。とても華やかな甘い香りを発し、果形は比較的均整のとれた縦長の円錐形で、半分に切った断面は中がほんのり赤く、このサイズにもかかわらず果芯に空洞はありませんでした。

紅ほっぺ いちご

 食べてみると強い甘味と共に程よく酸味もあり、イチゴらしい風味が強く感じられる美味しさでした。試しに糖度を計ってみたところ13度前後ありました。

紅ほっぺ いちご

 2012年12月に撮影試食した熊本県産の「紅ほっぺ」はどれもやや縦長の綺麗な円錐形で、果実の中まで赤く、果心部分も赤い色をしていました。

紅ほっぺ

 果肉は章姫よりもやや固くしっかりとした食感があります。甘みだけでなく酸味とのバランスも良くコクがあってとても美味しいイチゴです。

●紅ほっぺの主な産地と旬

紅ほっぺ いちご

◆主な産地と生産量

 「紅ほっぺ」は静岡県が育成した品種ですが、県オリジナル品種として県内限定とはせず、許諾制で他府県でも栽培が可能となっています。

 非常に人気が出てきた品種で、最近では各地で栽培されるようになり生産量が増えてきています。

 主な産地という点ではやはり静岡県が最も多く、JA伊豆では「伊豆紅ほっぺ」という名前で独自の地域ブランド化を目指しています。

◆紅ほっぺの収穫時期と旬

 「紅ほっぺ」の収穫は12月中旬頃から始まり4月いっぱいまで続きます。栽培環境によっても多少違いはあるかもしれませんが、あ最も味が濃くなる時期というのがあり、1月下旬ごろから3月初旬にかけてが最も糖度酸度とも高くなる傾向があるようです。また、それを過ぎると気温が上がってきて、果実が柔らかくなりやすいため、完熟一歩手前で収穫されたものが出回りやすくなります。

品種 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
紅ほっぺ                        

< 出 典 >

 ※ 「イチゴ新品種‘紅ほっぺ(仮称)’の育成経過と主特性」静岡県農業試験場研究報告44号, p.13-24(1999-12)

 ※ 「「紅ほっぺ」の特性と栽培技術」静岡県農林技術研究所(旧静岡県農業試験場)2005年5月改訂版

 ※ 品種登録データベース 農林水産省ホームページ