11月10日、近江八幡の伝統野菜、北之庄菜(きたのしょうな)の圃場を後にし、次に大中(だいなか)で20年にわたり農薬や化学肥料を使わずに野菜を作り続けておられる小林ファームに向かった。

実は私自身小林ファームさんを訪問するのは初めてだった。今回産地取材をさせていただくにあたり、 「くさつFarmers’ Market」 を立ち上げた内田修次氏に紹介していただいた。 「くさつFarmers’ Market」 とは 内田修次氏を筆頭に大学生が中心になって、オーガニックの作物を作っている農家さんやオーガニック素材を使った加工品を作っている方達と消費者をつなぐ場を設けようと始められた もので、小林ファームさんも出店されている。

小林ファームの主、小林めぐみさんの家はもともと肉牛を飼育する牧場を経営されていたそうだが、子供のころに読んだ『複合汚染』(著者: 有吉佐和子)という本に 強く影響を受け、農薬や化学肥料を使わず自然を活かした野菜作りを20年も前から続けている。
——————- 小林ファームのこだわり ——————-
化学農薬・化学肥料に頼らず、良質な有機肥料と微生物(EM菌)で土づくり。
何年もの間、圃場周りでさえ除草剤を使用せず、雑草は益虫の棲家。
カエル・カマキリ・てんとう虫たちが大活躍。
元気な土で育った野菜たちはパワーが違う。なにより美味しい。
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案内していただいた圃場をみて衝撃を受けた。これは・・・。キャベツが並ぶ畝にはびっしりと草、ホトケノザで埋め尽くされ、隣の大根の畝はこれまたほとんど草、ハコベが隙間を埋め尽くしている。
これが逆光の中キャベツや大根の葉が草の緑と共にキラキラ輝いて見えた。

こちらはレッドオークリーフというサニーレタスに似た野菜と、同じ畝に赤い葉のハクサイが植えられているのだが、横から見るとホトケノザに埋もれているようにさえ見える。真上から見るとこの通り。

ハクサイは葉が虫に食われているがレタスの方は虫もついておらずとても生き生きとして見えた。小林さんによると、白菜は今のうちは虫に食われたりもするが、巻き始めるころには虫もいなくなり問題はなくなるそうだ。こんな風に周りに草があることで農薬を使わずとも害虫を食べる虫も集まってくるので虫だらけの野菜にはならないのだそうだ。
母良田氏がアブラムシの害について尋ねると、小林さんは「アブラムシを食べるテントウムシも沢山いるから」と答えていた。実際、いたるところにテントウムシがいた。
そして、化学肥料や農薬を使わないことで、土の中に野菜にとって有益な微生物が活性化している状態になり野菜が元気に育ち、病害虫に対しての抵抗力も強くなるのだそうだ。
立命館大学 生命科学部 の久保 幹教授によると 化学肥料と化学農薬を使った農業が慣行化したこの50年の間にニンジンのビタミンA含有量はおよそ3分の1、ホウレンソウのビタミンC含有量は4分の1以下に減っているという。 これはそうした化学物質により土中の微生物のほとんどが死滅してしまっているのが原因と考えられている。

こちらはニンジンの畝。
この広い畑を小林さん一人でされているという事もあり、畝ごとに収穫時期をずらしながら色々な野菜を作られている。これは無農薬だからこそ出来ることなのだ。農薬というものは作物ごとに使う農薬の種類や量、時期などが決まっており、畝ごとに別の農薬をというのは本来考えられない。

ここで疑問に思ったのは、大根の畝にはほぼハコベだけが生え、キャベツやレタスの畝にはホトケノザだけが生えていたこと。ひょっとしてこれってそれぞれの草の種も小林さんが撒いているのだろうか・・・?
尋ねたところ、自然にこうなっている、その季節、時期に応じて同じ草が茂ってくるとのことだった。 それぞれにとってのコンパニオンプランツとなっているようだ。 「自然」って凄いと改めて思った。そしてここまでの土壌に育てた小林さんも凄いと思った。

畑の奥の方に行くと背の高い植物が連なる一角があった。よく見るとオクラだ。しかもこれは「ダビデの星」と呼ばれる海外の固定品種。

他にもシマオクラなど一般的ではない固定種が数種。どれももう収穫時期を終え、種採りできるほどの状態になっていた。

足元には小葱のように見える草が。これはノビルだ。しかも随分と葉が太くしっかりとしている。

竿を組んであったであろう所に蔓を伸ばしていたのはオカワカメだった。この時期でも食べてみると葉はぬめりがありほんのり甘い。今年の台風でネットがずり落ちてしまったのだそうだ。

さらに奥へと回ると、そこにはタイナスが実をつけていた。

タイナスは以前作ってほしいと依頼され作ったのだが、結局依頼主は買いに来ず、愛彩館に出しても売れずという苦い経験があるそうだ。タイナスは日本のナスよりも実が硬く、グリーンカレーなどココナツミルクを使った煮込み料理などに使われるタイ料理には欠かせない野菜だ。

奥の柵には今ではすっかり見かけなくなったヘチマの大きな実がいくつかぶら下がっていた。


畑の土は意外に硬く感じた。小林さん曰く、ここは干拓される前は琵琶湖の底だったので粘土質なのだそうだ。少し離れた辺りは砂地のところもあるとのこと。

小林さんが食べてみてとスイスチャードの葉をちぎってきた。その葉はベビーリーフほどの大きさだったが甘味がありコクのあるしっかりとした味わいだった。なぜか宮崎さんはスイバをしがんでいる(笑)。


野菜の目利きの達人、母良田さんが目を付けたのは赤軸のツルムラサキとオカワカメ。オカワカメの葉はよく目にするが、伸びた蔓の先の部分と、花が使えそうだとのこと。

オカワカメのこの花の部分も食べることができる。とても可愛い花で、あしらいなどに使えるかもしれないということのこと。ただ、採ってからどれだけ良い状態で持つのかが問題だ。


掘り出したばかりのニンジンと赤い大根、紅くるりを切って持ってきた。
紅くるりはまだ小さいが味はもう十分に甘く美味しかった。色もとてもいい。ニンジンはニンジン本来の香りがありどちらも歯触りがとても良かった。

畑を一通り見た後、愛菜館の前でお決まりの集合写真をパチリ。小林めぐみさんありがとうございました。

そして、今日の待ち合わせ場所である愛菜館に着く前に小林さんから届いたメッセージに、
「 愛菜館 のピザ釜の近くにいます。 長岡ご夫婦のとこです 」
長岡ご夫妻のとこって?? ひょっとしてあのながおか農園さんの??
という事で、着いてびっくり!聞くと週末に長岡さんはご夫婦でここでピザを焼いてらっしゃるそうだ。

美味しそうなピザ・・・と思っていると、母良田さんが注文していた。

長岡さん、農園でもこのピザ屋さんでも一緒で、本当に仲が良く素敵なご夫婦です。ピザもとても美味しかったです。

そしてこのピザ窯も長岡さんの手作りだそうだ。
さて帰ろうかと駐車場に向かうと、壁のように一面に干されている大根が目に入った。
たくあん用に干されているのだろう。こういう風景もあまり見かけなくなってきたな・・・。

小林ファームさんのお野菜はびわこだいなか愛菜館で購入することができます。是非一度手に取ってお買い求めください。どの野菜もとても美味しく、おそらく栄養価も高いと思います。そして何より安心安全で、大地とびわ湖にも優しい作り方をされています。
この日私が買って帰ったのはこちら

コメント
「愛菜館」の文字が、変換違ってるところがありますよ。
ヤマニシ様
当記事を読んでいただきありがとうございます。
ご指摘いただきました「愛菜館」の文字、ただいま修正いたしました。ありがとうございます。
こんごともよろしくお願いいたします。